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4-9-2.


 とりあえずこれで、智之の予定通りに準備は整った。
由佳は100倍にまた戻って、再び、空港島から海の中に入っていった。
橋の中央部付近では、少々、水深が深い箇所もあるかもしれないが、
空港島周辺の海域は、元々、陸地に近いこともあり、平均して水深がおおよそ10メートル前後、多少、深いところでも20メートル程度だ。
由佳からすれば、大体、水深10センチ前後となり、足首の少し上までが海水に浸る感じだ。
橋と並行するようにして、由佳はゆっくりと海の中を歩いていく。
由佳の巨大な足で大量の海水が掻き分けられて、海水面には大きな波が生じていた。
その波の高さは漁船のような小型船なら、簡単に波に飲まれて転覆してしまいそうな程である。
空港島から対岸に向かって少し歩いた所で由佳は立ち止まった。
まずはこのあたりから手始めに橋を壊していってもらうのだ。



 「どう?この橋、簡単に壊せそうかな?」
「踏み潰して壊すのなら、多分、簡単に壊せると思う……」
由佳は橋を見下ろしながらそう言った。
今の彼女の大きさと比較してみれば、それは火を見るよりも明らかだった。
「なるほど、踏み潰しならできると……ふむふむ」
「ん、何か問題でも?」
「いやいや。もちろん、踏み潰しも由佳にやって欲しいんだけどさ、
 この橋はこんなにも大きいから踏み潰しで壊していくだけじゃなくて、色々なやり方で壊して欲しいなーって思ってる」
そう言って智之は希望を述べた。
身も蓋もなく言ってしまえば、破壊のヴァリエーションを増やして、「抜き所」を少しでも多く設けようとしているのだ。
「一応、先に言っておくけど、えっちなのはダメだからね……」
「ギクッ……そ、それは困る……」
智之の考えは由佳に当たり前のように筒抜けであった。
心のなかに秘めていた考えがこうもあっさりと見抜かれてしまい、智之は焦りを隠せない。



 「だって、こうでも言っておかないと何を要求されるか分からないもん……」
「由佳、ご主人様の言うことは聞かないとダメだよ……?」
「今、智之が考えていそうなこと当ててあげよっか?」
由佳は、再び橋を見下ろすように一瞥してから、自信ありげにこう言った。
「私のおっぱいをこの橋の上に載せて欲しいんでしょ?」
「ギクッ……」
またしても心の中を見透かされて、智之はさっきと同じような表情になって驚いた。
「ほ〜ら、やっぱり。私にかかれば、智之が考えてることはぜ〜んぶお見通しなんだから」
「…………やっぱり、だめ?」
「だーめ。だーめったらだーめ」
「どうしてもって言っても?」
「『どうしても』も禁止よ」
「そ、それじゃ、『ご主人様の命令』ってことで……ダメ?」
「…………」
不意に由佳が押し黙ってしまった。
またしても由佳を怒らせてしまったのではないかと心配する智之。
「……由佳?」
「はぁ…………それ、ずるい。私が逆らえないの知ってて、そうやって言いつけるんだもん……
 なんでそんなに毎回毎回えっちなことばっかり思いつくのよ……」
「いやでもほらさ、おっぱい載せて押し潰すだけなんて、全然、エッチじゃないよ」
「何が『だけ』なのよ……十分、えっちだもん……智之がハァハァできるのは全部、えっちなの!」
なるほど。シンプルで短い簡潔な言葉に凝縮されているが、実にとても分かりやすい基準である。




 でも、今はそんなのは関係ない。
今はなんとしても、由佳の巨大なおっぱいが橋の上に載せられて、いとも簡単にいくつもの自動車がおっぱいで押し潰されていく光景を見てみたいのだ。
サイズフェチシストとして、自らのリビドーに従うまま、由佳に頼み込む智之。
「メイド服越しに橋の上におっぱい載せてくれるだけでいいから…………ほら、これだとそんなにエッチじゃないよ!」
「うぅ……わかったわよ、やってあげるから…………」
ということで、いつも通りに押し切って、実行の約束を取り付けた。
(こんな程度のことで恥ずかしがってたら、後々、大変なことになるんだけどなー
 でも、恥じらいがあるのは可愛らしくてすごくいいんだけど……)
智之は胸に秘めている最後のプランを思い浮かべていた。
(そういえば、由佳は「えっちなのは禁止!!」とは言ったけど、「嫌っ!」とは一言も言わなかったなー、なるほどね……)
由佳の言葉にはならない本音に気が付き、智之は軽い笑みを浮かべていた。







 (さてと、せっかくだし由佳のおっぱい押し潰しを近くで見るか……)
智之は由佳が立っている近くの橋の上に瞬間移動した。
(おお、今にも橋を破壊しようとする感じで由佳が見える!)
智之は近くにそびえ立つ由佳を見上げつつ、彼女に呼びかけた。
「由佳ー、オレがどこにいるか分かる?今、橋の上にいるんだけど」
「えーっと、あっ、見つけた……」
由佳は橋を見下ろし、智之の居場所を探した。
自分の方に向かって手を振ってるのが見えた。
「そんなとこにいると危ないってば……これから智之の言いつけ通り、この橋を壊すんだから……」
「大丈夫だって。せっかく由佳がやってくれるんだから間近で見ないことには意味がないし。
 それにいざという時、危なくなったらテキトーに逃げるからさ」
逃げると言っても、このまま橋の上を走って逃げたりするのではなく、「瞬間移動」でもしてどこか安全なところに移動するのだろう。
そもそも多少、危険な目にあったとしてもそれなりの恐怖感は感じるだろうが、仮想現実故に、
ケガしたり、命を失うことなんてのは絶対にありえないので、智之の好きな通りにさせておくことにした。
ただ、さすがに智之も由佳のおっぱいを載せるだけでは、橋自体が崩壊してしまうような事態に発展するとは考えてなかった。
期待しているのは、巨大なおっぱいの自重で乗用車やバスがペチャンコに押し潰されるシーンだった。
それをできる限り至近距離で眺めて、大迫力の破壊シーンを楽しみたいのだ。



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 橋の上部を走る空港連絡道路には、元々、由佳の出現で人々が逃げ出して、乗り捨てられた車がいくつも放置されてままになっていた。
ここが空港連絡橋という場所だけあって、大型トラックやダンプカーといった類の車は少なく、
そのほとんどが大型バスを含め、空港を利用する人が乗っていたと思われる車で、後は空港に物資を運ぶための車両が少々あった。
とりあえず、まず由佳は手の届く範囲内にあった車やバスを指先で摘み、次から次へと自分の手元の方に持ち寄せていった。
初めから近くにあった分と合わせると合計20台ほどが集まった。
持ってきた車は、そのまま上り下りの両方の走行車線上に適当な間隔をおいて並べていく。
ちょうど、高速道路のパーキングエリアのように、由佳の目の前の一角だけ乗用車や大型バスが密集して駐車しているような状態になった。
生贄となる自動車を並べ終えて、ようやくこれで準備は整った。
「それじゃ、由佳、車の上におっぱいがくるように位置を調整して」
「うん……」



 由佳が橋のそばで膝立ちになってみると、ちょうど胸より少し低い位置に橋梁があった。
これからおっぱいを橋梁上部の道路の上に載せるには、まさにうってつけの位置関係だった。
遠目からのメイド服越しでも柔らかな膨らみが明らかに分かるほど、その存在を主張しているモノ。
それは自称:C、推定:Dを誇るという立派なものだ。
その圧倒的な巨大さと存在感に見上げていた智之は思わず息を飲んだ。
(これが由佳のおっぱい……)
いくら普段から見慣れているとは言え、巨大化した上でこれだけ大きいとまた格別素晴らしいものになる。
それに加えて、おっぱいで車を押し潰して見せてくれるというのだから、格別最高という他ない。




 今、由佳が手で支えてるその「やわらかい肉のかたまり」の質量はそれぞれ片方だけでも500トン、両方合わせると1000トンは下らないだろう。
由佳は上手く体の位置を調整し、胸を自動車が密集している上空に寄せてきた。
その圧倒的な大きさから放たれる威圧感に思わず、智之は息を飲む。
この位置から真下にゆっくりと降ろしていくのだ。
「それじゃ、由佳、始めて……」
「うん……」
由佳の返事に続いて、ゆっくりと巨大なおっぱいが降りてきた。
まずは寄せ集めた車の中で一番背の高い大型バスの上部に触れる。
おっぱいと接したバスはすぐさま、その重みに耐え切れずに不快な金属音を奏でながら、バキバキと車体構造ごといびつな形に変形していく。
そして次第にバスだけではなく、近くにあった他の自動車も同じように次から次へと巨大な由佳のおっぱいの下敷きになっていった。
こうしてあっという間に道路上に並べられていた自動車はすべて由佳のおっぱいに包み込まれて、智之の視界から見えなくなった。
途方も無い質量が橋の上に載せられたことで橋全体が大きく揺さぶられる。
そんなことになっているとは由佳は気付いておらずに、相変わらず恥ずかしげな表情を浮かべていた。
(はぅ……智之にいっぱい見られてる……)
智之の耳にも届く由佳の吐息がどこか妙に悩ましげだった。



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 その後、しばらくおっぱいを橋の上に載せ掛けてままにして、それを智之がじっと眺めていた。
「それじゃ、おっぱい持ち上げてみて」
智之の言葉に従い、ゆっくりと由佳のおっぱいが上空へと持ち上がっていく。
それに伴って、由佳の服に付着してたアスファルトの欠片や車の残骸などが次第に剥がれ落ち、バラバラと橋の上に降り注ぐ。
かなりの高さから落下してくることに加え、落下物自体の大きさ・重さも相当あって、アレが直撃したらまず命はないように思える。
「由佳のおっぱいでみんな潰れちゃったよ……すごいよね」
「はぅ……あんまりおっぱい、おっぱい言わないでよ……恥ずかしいってば……」
「恥ずかしがらなくてもいいのに。由佳は堂々としてればいいんだよ」
「うぅ……他人事のように言うんだから……」
実際、智之からすれば他人事である。
おっぱいプレスの大破壊と恥ずかしがる由佳の姿を見ることができ、智之は悦に浸っていた。





 由佳の巨大なおっぱいに押し潰されてしまった車は、いずれも元の車としての形を留めてはいなかった。
高さだけが異常なほど圧縮された無数の板状の金属の塊……
まるでスクラップ工場に放置されたくず鉄の塊のようなものに慣れ果ててしまっていた。
もちろん由佳のおっぱいの下敷きになって破壊されたのは自動車だけではなかった。
同じく下敷きにされた道路自体も大きく変容していた。
アスファルトは大地震が発生したような亀裂陥没が生じた酷い有様になっていた。
もはやこれではとてもじゃないけれども自動車が走行できるような状態ではない。
ここからではあまり見えないため把握しにくいが、橋梁自体にも大きなダメージが加わっているだろう。
何も特別なことはやっていない。
ただ真上からおっぱいを載せてもらっただけである。
文字通りそれだけ。
何とも恐ろしいことである。




 「まだ潰されずに残ってる車もあるから、そっちも同じようにしてもう一回押し潰して欲しいな」
「うん……」
由佳は少しだけ体をスライドさせて、一度目の「おっぱいプレス」の範囲外であった箇所に移動した。
二回目のプレスで初撃で押し潰せなかった分まで破壊するのだ。
先ほどと同じようにして由佳は巨大なおっぱいをゆっくりと降ろしていく。
そして再び橋の上におっぱいが載せられ、橋全体が大きく揺さぶられる。
これだけの質量があれば、橋も微動だにせずに受け止めるというのは無理がある。
由佳の「おっぱいプレス」は橋そのものすら破壊しかねないほどの威力があったのだ。
こうして結果的に、掻き集められた車は一台も残すことなく、巨大なおっぱいによって、無用の鉄屑にされてしまったのだ。




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 「由佳の力もっともっと見せつけて欲しいな」
「今度は何をさせる気なのよ……」
「圧し潰したヤツをふぅーって息吹きかけて吹き飛ばしてみせてよ」
「……それだけ?他に何か変なこと考えてない?」
由佳はやたらと警戒しているが、今は特に他のことは考えてないので隠し事をする必要はない。
「ほら、前にやってくれたことあったじゃん。だから、それ、もう一度見てみたいな」
由佳ほど巨大であれば、ただ息を吸い、吐き出すという行為ですら、とてつもない脅威となりうるのだ。
それを今一度、実践してみようとするのが次の計画なのだ。
「さっき、おっぱいで押し潰した車の残骸に向けて、ふぅーって息を吹きかけるだけでいいよん」
「む〜おっぱい、おっぱい強調しないでよ……」




 由佳は大きく深呼吸し、斜め下に向けて一気に溜めていた息を吐き出した。
斜め上から吹き付けられた竜巻のような猛烈な風。
その威力は元々、自動車であった重い「金属の塊」すらいとも簡単に宙に舞い、反対車線側へとゴロゴロと吹き飛ばしてしまうほどだった。
そのまま吹き飛ばされた金属の塊は、橋のガードレールを突き破り、
破砕されたアスファルトの瓦礫やら破片やらと一緒になって、海面へと落下し、ドボンドボンと鈍い大きな音を立てて海中へと沈んでいった。
こうして、由佳がおっぱいで押し潰した車は綺麗サッパリ、橋の上から一掃された。
後に残ったのは、申し訳程度の道路の残骸と思しきものだけだった。
これだけのことを由佳はいとも簡単にやってのけてしまったのだ。
「どうかな……こんなのでよかった?」
「さすが由佳。完璧だったよ」
巨大メイドはご主人様のいいつけ通りに忠実に仕事をこなしていった。
「それじゃ次は……」




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 そして、今。
由佳はこの橋のほぼ中央部付近で橋を跨ぐようにしてそびえ立っていた。
ちょうど海上から数十メートルの高さに位置する橋の真横に由佳のいわゆる「絶対領域」が位置している。
そして、橋の上下をメイド服のスカート部分と脚に纏っている白ストッキングで挟む形になっていた。
こうしているのも無論、智之の指示である。
「由佳の柔らかそうなふとももで橋を挟み潰して欲しいな……」
それが今度の智之からの言いつけであった。
由佳の太ももは思わず顔を埋めたくなるほどにむちむちとしている。
膝枕をしてもらっても白くすべすべとした肌は柔らかくて眠ってしまいそうなほど非常に心地よい。
そんな魅力的な太ももを以てして、この大きな橋の破壊活動を行なってもらおうというのが智之の魂胆だった。




 ただ単に橋と並び立っただけでも由佳の大きさは圧倒的だった。
橋を挟むようにして、海中からそびえ立つツインタワーのような脚とさらに上空に位置する由佳の巨体。
本来なら巨大構造物と言ってもいいほどのスケールを持つこの空港連絡橋。
そして、長大な橋をどっしりと支えているトラス構造の堅牢な太い鋼鉄でさえも、由佳の巨大な肉体と比較すれば、
まるでかわいそうなくらい貧相に見えてくる。
こうして見てみるとやはり100倍サイズでも人間が作った人工物なんて取るに足りないものだと分かる。
(案外、100倍でも大きすぎたかもな……)
ついさっきまで1000倍サイズだったので、大きさの感覚が完全に狂ってしまっているのだが……



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 「後はこのまま、両足を閉じていって……できれば、こうゆっくりと力を込めていって……あ、でもまだ橋を壊しちゃダメだよ」
智之はまるで厳しい映画監督のように、一つ一つの細かい動作を由佳にリクエストしていた。
最初、由佳は橋と両脚の間を少し隙間を空けるようにして立っていた。
そこから智之の指示通りにジリジリと開いた脚の間隔を狭め始めた。



 「これで……いいの?」
「そうそう、すごくいい感じだよ」
さっきまで、あんなにつんつんしてどこか不満げだった由佳も今は、素直に大人しく智之の指示に従っていた。
(こんな立派な橋でも脚に当たったらすぐに壊れちゃいそう……)
由佳は自らが持つ力の大きさを充分に理解していた。
ゆっくりと太ももを橋に近付けていき、ついに由佳の肌と橋が触れた。
柔らかく極め細やかで雪のように白い肌に橋の一番外側の部分が食い込んでいく。
橋梁全体に由佳の太ももから掛けられた力が加わり、そして軋ませ不気味な不協和音を奏でさせていた。
「おっと、ちょっとそこでストップ」
「はぅ……」
また由佳は悩ましげに息を吐いていた。




 どこから眺めているのかは定かではないのだが、今、確実に智之の視線は由佳にのみ注がれている。
それが由佳の羞恥心をさらに増幅させていた。
「もう少しだけ両太ももを寄せて」
智之の指示通りに、由佳がごくわずかに脚を閉じた。
さらに今まで以上の強大な力が橋全体に加えられる。
その瞬間、橋の上部を走る自動車道のアスファルトの表面に亀裂が走った。
所によっては、亀裂同士が組み合わさって路面のアスファルト自体がバキバキっとめくれ上がっていた。
橋梁全体にとてつもない力が加えられたことにより、下部を走る鉄道の線路も路盤ごと大きな歪みが生じていた。
橋が奏でる音は加えられる力が増すと共にさらに不気味さと大きさを増していた。
もはや崩壊寸前のギリギリの限界点に達し掛けているようだ。
これ以上の力が加えられると、両横から押し潰されるような形で、橋は一瞬の内に崩れ落ちてしまうだろう。





 先程から由佳はずっと橋が壊れそうで壊れないギリギリの体勢を維持している。
このまま、脚を少しでも内側に寄せてしまえば、橋は白く柔らかで巨大な太ももの肉に押し潰されてしまうだろう。
だが、橋が壊れてしまたっとしても、巨大メイドにとっては何ら関係ない。
「……智之、壊しちゃいそう……」
「だめ、もう少しガマン。まだその状態眺めていたいから」
「……智之のいじわる……」
由佳は少し辛そうな表情になっていた。
ちょっとこの姿勢を維持し続けるのは難しそうだ。
(あぁ……こんな表情されたらもっともっと苛めたくなっちゃうじゃないか……)
恋人を自分好みに巨大化させて、メイド服を着させて、言いなりにさせた上、街を破壊させていく。
自分の思い通りにならないものはほとんどなかった。
そんなサディスティックさを伴った征服感に智之は浸っていた。



 「もしかして……由佳は早く壊してみたいのかな?」
「べ、別にそうじゃないもん……でも、そろそろ……ガマン出来ない……」
由佳は今にも泣き出しそうな表情になっていた。
そろそろ限界のようだ。
これ以上、由佳をイジメ続けて、無理をさせる訳にはいかない。
「うん、よし。それじゃ由佳、橋全部好きなように壊しちゃっていいよ」
智之からの「お許し」が出た瞬間に由佳は耐え切れずに開いていた両脚を閉じた。
次の瞬間、一気に莫大な力が左右両側から加わり、橋は由佳の太ももに押し潰されてしまった。
橋脚間のデッキトラス部が互いを支え合う力を失い、橋脚部からだらしなく垂れ下がりだした。
そして、しばらくすると垂れ下がった部分の自重に耐えきれ無くなったのか、
橋脚部から剥がれ落ちるかのごとく、そのまま、数十メートル下の海中へと真っ逆さまに落下していった。




 「はぅ……ほんとに潰れちゃった……」
橋を圧倒的な力を持ってして破壊せしめた張本人が驚いて眺めていた。
「……ねぇ、私の太ももで押し潰されちゃうなんて、いくら何でもこの橋脆すぎじゃないの?」
「いやいや、そんなことないよ。由佳があまりにも大きくてすっごい力を持ってるからだよ」
先程まで、由佳は今とは比較にならないほど大きかったことを考えるとスケールが小さくなったと言えるが、
それでも、この長大な橋を太ももで挟み潰して、いとも簡単に破壊してしまえそうな程、圧倒的にまだ由佳は巨大なのだ。
もちろんただ巨大なだけでは済まされない。
おそらく由佳からすれば、この堅牢強固な橋も飴細工のような強度しかないだろう。
ちょっと触っただけでも壊れてしまい、指先に力を込めてしまえば簡単に崩れ落ちてしまうに違いない。



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 しかし。
橋が簡単に崩れ落ち、もはや橋としての本来の役割を失ったとは言え、実はそれはまだこの長大な橋の一部分でしかない。
九割以上の部分はいつもと変わらぬ佇まいで海上に佇んでいる。
(ただ単に橋を壊してもらって、「はい、終わり」なんていうのはつまらないしな……)
智之の趣向を凝らした破壊方法の指示はまだ終わらない……



<つづく>

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