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2.
初めての「ゲーム」体験から三日。
由佳は、また「ゲーム」が設置されている建物にやって来ていた。
しかし、今度は由佳一人でやってきた。
この前「ゲーム」内で巨人となってありとあらゆる建物を
握り潰し踏み潰し破壊しつくした快感が、忘れられないものになっていた。

由佳の現実世界での身長は148cmだった。
幼い頃から「チビ」「チビ」と言われ続け、
由佳が、人と話すときはほとんど見上げなければならなかった。
これまでの人生で溜まったストレスは相当なものだった。

そして、先日ついにそのストレスを解消出来た。
仮想空間での事であっても、身長150mの大女となって
街に出現し、人々が逃げ惑う姿を見て強い快感を感じた。
このおもちゃの街の中では全てが、由佳の思い通りになった。



由佳は、続いて隠しもってきた前回使用した「メモリーカード」を挿入口に入れ
「ディスク」も同じように挿入し、シートに座って「ヘルメット」を被った。





由佳の視界の前に広がった光景は、
建物の多くは破壊され、高架橋は倒壊し、あちこちから火の手があがっている
悲惨な白川市中心部の惨状であった。
この惨状を、引き起こしたのが自分だと思うと、何とも言えない気分になった。


おそらく、今は「巨大メイド」が突然消え去って数分後の世界だろう
何せ、前回の「メモリーカード」を彼女は使ってるわけで、
RPGのようにセーブデータをロードした状態に近い。
RPGと違っているのは、「ヒロイン?」の服装がかなり異なっていることか。
前回は「巨大メイド」。
今回は「巨大女子高生」っと言ったところか。
ブレザーにブラウス、リボンにチェック柄のスカート。
足元は、白のハイソックスに黒のローファー。
どこにでも居そうなかわいらしい女子高生スタイルである。
しかし、サイズは全て通常の約100倍。
既に車数台を踏み潰している靴のサイズは、22.5m。
小学校のプールとほぼ同じ。
ブレザーのボタンの直径は2m。
もはやこんなにもでかいとこちらの矮小さばかりが際立つ。


由佳の方はと言うと、
「これは空想上の出来事なんだから」と、気をとりなおした。
せっかくのストレス解消のチャンスなんだから
小人の街の惨状なんかを気にしてる余裕はない。

由佳が起こした「地震」で大抵のビルは崩れている。
そうでなくても大半のビルは、スカートの裾にも届かず、
由佳の膝程度の高さしかなかったのに
今では、膝程度の高さのビルは数棟しかない。

だが、破壊しつくされたこの街に特に用はない。

由佳はもっと破壊しがいのあるところに行こうと考えた。
結論からしてそこは東京都心である。

白川市から都心部までは、小人視点の直線距離で40kmもある。
ただ、由佳はやや方向音痴気味だったので、はじめはどっちの方角に
歩いていっていいのか分からなかったが、
白川市を通っているJR線に沿っていけばいいことを思いついた。
このJR線は太平洋側の町から、白川市を通り臨海部を経て、東京都心に通じる路線だ。
都心まで線路沿いに行けば60km。
由佳の大きさからしてみればたったの600mにしかならない。
歩いて10分も掛からないだろう。

由佳は線路に沿って歩き出した。
歩くと言っても、その歩行速度は凄まじく
足が動かされるたびに猛烈な突風が巻き起こり、
自動車や人、家屋の屋根が吹き飛ばされていった。
そして由佳が歩くからには、突風が吹くだけでは収まらず
彼女の巨大なローファーが着地するたびに、建物が数軒単位で消えていき
由佳が歩いた場所には70mくらいの間隔で、25mプールほどの大きさの足跡が残されていった。

途中、川に掛かる鉄橋や駅ビルを踏み潰し、破壊してまわった後
某ネズミーランドの傍を通って、由佳は臨海部の埋め立て地域に達した。
由佳が歩いた跡は、ここが埋立地であるせいか、
普通の地面よりも深く陥没し、水が染みだしている陥没穴もあった。
道には巨大女子高生が出現したとの一報を聞いてパニックになり
あわてて避難しようとしていた人や車で溢れかえっていた。
だが、道がどんなに混んでいても彼女には何の関係もなかった。
運の良い者は、彼女に踏み潰されずに済み急死に一生を得て、
運の悪い者は、彼女の巨大な靴に潰されてあっけなく死んでいくだけであった。


由佳は、埋立地の岸壁沿いで立ち止まり、靴と靴下を脱ぎ始めた。
脱いだ物を手に持ったまま彼女は、海の中に入っていった。
海に入ると言ってもこの東京湾の水深はたかが知れており
水に浸かっているのは、由佳の足首より少し高い部分まででしかなかった。
彼女が引き起こす波は、津波のように沿岸部に押し寄せ、
中型船以上の大きさの船は波を受けて左右に揺れる程度だったが、
漁船やヨットなどの小型の船を転覆させていく。

その頃、臨海部と都心部を繋ぐ巨大な吊り橋は渋滞に巻き込まれて
ノロノロ状態の車でいっぱいだった。
車に乗っていた人々は巨人がこっちにやってきているのがわかるやいなや、
各自の車をその場に置き去りにして橋からなんとかして逃げようとした。
巨大女は、自らの肉体だけで一つの街を壊滅させた。
小人達からすれば怪獣のような存在だ。
ここまで来たらこの橋が破壊の対象になっていることぐらい目に見えている。
案の定、由佳は橋のそばまで、やってくるとその場でしゃがんで、
顔の位置を橋の高さに持ってきて、バースデーケーキの蝋燭を吹き消す要領で、
顔を動かして橋全体に軽く息を吹き掛けたのだ。
由佳にとってみれば軽く息を吹き掛けたつもりにちがいない。
が、小人たちにとってみれば吹き掛けられた息も台風並みの暴風と化す。
この「暴風」は橋の上に放置された車を横転させ、それによって一部は海に転落していった。

由佳は、左足を高く持ち上げて、橋を跨いだ反対側に左足を移動させた。
彼女が、足を移動させたとき、大量の水が橋の上に滝のように降り注いでいった。
今、由佳は橋を両足の間に挟みこむ形で、仁王立ちしていた。
橋の高さは、由佳の履いているスカートの一番下の部分よりも低く
丁度、膝の高さぐらいだろうか。
逆に言えば、それくらい由佳が巨大だということである。
そして、由佳が橋を跨ぎ越えようとした際に、右足が橋の右側の主脚部を直撃した。
主脚部が破壊されたことで吊り橋全体のバランスが崩れ、
海に掛かっていた橋の中央部が自重で折れ始め、橋は次第に海面に叩きつけられていった。
逃げ遅れた人々や橋の上に乗り捨てられた車は、橋とともに海に転落していった。

由佳の生身の足は、強固なコンクリートに激突したにも関わらず、
海水が滲みて痛くなるような傷すら負っていない。
「本当に、この世界は壊れやすいわね。
 私の足がぶつかっちゃっただけで橋が崩壊しちゃうなんて。
 それなのにわたしの足には傷一つない。
 まるで砂細工のような橋だわ。」
こう小人達に言い捨てると再び海水を押しのけて歩き始めた。
由佳が歩くことによって、引き起こされた津波は橋の残骸を揺れ動かし
橋から海に投げ出された人々をあっさりと飲み込んでいった。


その後、由佳は都心部に上陸し、新宿方面へと向かっていった。

新宿まで来て、初めて由佳の身長よりも高い建物に出会った。
だが、由佳の身長を超えるようなビルはそう簡単には壊せない。
そこで、超高層ビルの破壊はあきらめ、別のビルを破壊することにした。
彼女が好きになったのは膝から太股ぐらいの高さで
てっぺんに足を乗せて体重を少し掛けただけであっけなく
壊れてしまう類の中層ビルだった。
あっけなく壊れてしまうビルを見て何とも言えない高揚感を味わった。
と同時に足だけで破壊していくのもつまらなくなってきていた。
体全体を使って破壊したいという衝動に駆られていた。


線路を一跨ぎして、由佳は駅西口に移動し、デパートに背を向けた位置に立ち止まった。
そしてそのままお尻をデパートの真上に持ってきたところで動作をやめた。

「あ〜あ〜疲れちゃった。おもちゃの街を壊すのも
 ずっと立ちっぱなしだから足にきちゃうのよね〜。
 こんなところに丁度よさそうな椅子があるし座ってみよ〜っと」
と、彼女の巨体がデパートビルにゆっくりと降ろされ
鉄筋コンクリートの建物はバキバキっと轟音を立て、潰れていった。
崩壊による土煙が、途切れた頃にはもはや建物の面影はなく
ただ瓦礫の山の上に、制服姿の大女が尻餅をついていた。
「んもうっ、おもちゃのビルは私が座ろうとしただけで
 崩れちゃうなんて脆すぎるわ。所詮は小人の街ね。」
と文句を言いつつ由佳は立ち上がった。

由佳が立ち上がる際に、スカートに付着していたデパートビルの
残骸の破片がバラバラと地面に落下してきた。
破片と言っても数十cmから1mはあるようなサイズの物体が
かなりの高度から落下していた。
建物を破壊するたびに、由佳の中ではサディスティックな欲望が
何度となく増幅されていき、ついには小人の男達に
由佳自身の裸の肉体を、見せつけてやりたいという願望を持つまでになっていた。

「ゲーム」という仮想空間にいるのと150mの大女になっているという自信からか
その由佳の願望は実際の行動となって小人達に示された。

まず、ブレザーを上着を脱いで駅のプラットホームの上に置いた。
続いて、スカート、ブラウスと脱いでいき、
それらは、すべて綺麗に折りたたまれて駅の上に置かれた。
足元と下着を着けている部分以外の素肌を由佳はさらけ出した。


下着だけを身に着けた裸の巨大な女の子が、都会のビル街に
そびえ立ってる光景は圧倒される光景だ。
下着を着けているとはいえ、ほぼ全裸の由佳は小人達に
自分の裸を見られて恥ずかしいと感じてはいた。
が、それでも破壊衝動は羞恥心を上回っていた。
小人達に対する優越感を再び由佳は感じ始めていた。



ゆっくりと姿勢を膝立ちの状態に変えてから
ガスタンクほどの大きさはあろうかと言うおっぱいをビルの上に乗せた。
一つ450t、両方で900tにもなるおっぱいの重量で
ビル全体が軋みだしたのだ。
外壁の一部が剥がれて地表に落下していった。
この時は、まだなんとかビルは、崩れずに耐えていたのだが
由佳がそのままおっぱいに自分の体重を加えたところあっけなく、ビルは崩れ去った。
ビルの中は、パニックに陥った人々が我先にと出口に殺到し
この混乱から逃れられた人々も結局、ビルの崩壊に巻き込まれていった。

「あ〜あ〜わたしのおっぱいの重さだけでビルが崩れちゃった。
 もうちょっと耐えてくれるかなと思ってたのに〜〜」
由佳はつまらなさそうにつぶやいた。
他におもちゃになりそうなものはないかと
由佳は四つん這いでビル街を突き進んで行った。
前回の「ゲーム」で四つん這いになっていたときは
一戸建てが立ち並ぶ住宅街を押しつぶしていったが、
今回は都心のビル群が相手だった。
それでも、彼女の侵攻を止めるに結果には至らず、
そこそこの高さのビルは由佳のおっぱいが上部に激突して
上部だけが崩れ落ちるまもなく、由佳の膝によって完全に押し潰されていった。
巨人襲来を知った人々がビルから脱出して道を走って逃げようとしたものの
乗り捨てられた自動車やトラックが人々の行く手を阻み
由佳の膝元で磨り潰されていった。
前回と同じように、彼女が通った後には、瓦礫の山しか残っておらず
付近の一部から、煙が立ち昇っているのを生き残った人々は見上げることしか出来なかった。

四つん這いで新宿駅周辺のビル街を磨り潰した由佳は、
制服を取りに新宿駅へと戻ってきた。
由佳は裸の大女になって小人達に自らの肉体の巨大さを見せ付けたことに、中々満足していた。
由佳のする何気ない行動の一つ一つがいとも簡単に多く小人達の命を奪っていく。
この世界で由佳の思い通りに壊れてくれないものはなかった。
前回は、智行のシナリオという足枷があったが、
今回は、由佳の個人プレイだ。
前回の「ゲーム」で由佳の中に芽生えはじめた欲望は
このおもちゃの世界で、破壊の限りを尽くし、小人の命を弄ぶ、
冷酷非常な女王として君臨してやろうという段階にまで達していた。

そして残酷な破壊活動のフィナーレとして、また「アレ」をすることを決めていた。
そう、前回の「ゲーム」で白川市を完全崩壊させたあの「地震」である。

あの時と同じくらい、いや、それ以上の威力のある「地震」を引き起こせば
都心部を中心に広範囲にわたって甚大な被害を与えることができる。
ましてや、世界有数の過密都市であるここ-東京都心部-で起こせば、
その被害は、文字通り計り知れない。

前回よりも、格段に強い地震を起こすにはどうすればよいのか?
その答えは、単純である。
今よりもさらに巨大になってしまえばいい。
由佳は、まぶたを閉じ、想像しはじめた。
すると、由佳の身体は徐々に大きくなり始め、
さっきの2倍ほどの大きさ-身長300m-になったところで巨大化は止まった。


由佳は、足に力を込め、地面を押し出すようにして真上に向かって高くジャンプした。
高く跳ぶことが目当てではない。どれだけ高いところから落下してくるかが重要だ。
が、出来る限り高く跳んだ方が由佳にとっては都合よく、小人達にとっては不都合だ。
全長300m 重量32万トンの人型の物体が、高さ数十メートルから落下してくることによって
引き起こされる「地震」なんて今まで誰も考えたことがなかった。
この「地震」の威力の数字など「地震」を起こそうとしている由佳も書き手地震も分からない。
そんなもんを出そうとするのは柳田理○雄ぐらいだ。

由佳がジャンプして数秒後、その巨体が地上に着地し、
着地時の衝撃による凄まじい地震が、轟音と伴に都内一円を襲った。
超高層ビルの窓ガラスが割れて、スコールのように地上に降り注ぎ
高速道路や鉄道の高架橋は次々に落下し
蟻の巣のように広がっている地下街はいたるところで陥没し、
道路にもあちこち地割れが起きていった。


そして、由佳は再び地震を起こすべく、高くジャンプした。
由佳は何度もジャンプして、その度に地震をおこした。
全長300m 重量32万トンの巨大少女が、ただ垂直にジャンプするだけで
おもしろいようにこのおもちゃの世界は壊れていく。
二度目の巨大化をするまで由佳の身長よりも高かった超高層ビルも今は由佳の身長よりも低い。
そんな超高層ビルも、幾度となく繰り返される地震を受けて倒壊していった。
もはや、コンクリートジャングルとまで言われたビル群の面影はなくなっていた。
倒壊したビルの土煙とあちこちで発生した煙が都心を覆う中、
巨大な由佳だけが、まっすぐ天に向かってそびえ立っていた。


だが、この巨人が自らの破壊欲を満たし、悦に入った表情を
浮かべている姿を見た小人達はほとんどいなかった。




「ゲームは終了しました。ヘルメットを外して下さい。
 録画ディスクとメモリーカードを忘れずにお取り下さい。」
女性のアナウンスがこう告げても由佳の興奮は収まっていなかった。



プレイ中に、随分恥ずかしいことをやってしまったという気恥ずかしさと
再び巨人になっておもちゃの街を蹂躙した興奮が彼女の中で絡み合っていた。
しばらくすると由佳の興奮は収まり、落ち着きを取り戻した。
当初、由佳は今回のプレイ記録した「ディスク」を智行にも見せてあげようかと思っていた。
が、今回は取り止めることにした。
今回の「ゲーム」の中での自分のやった行為を思い出したからだ。
「あんなことしてるの見られたら恥ずかしすぎるよ」と由佳は思った。
それにお調子者の智行のことだ。
今回の分を見たら、また今度、もっと恥ずかしいことをさせられるに違いない。
なんとしても今回の録画ディスクは智行に見られないようにしようと由佳は決意した。




<つづく>

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