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4-8-1.
                                                            


 「で、この後はどうするの? もう、終わり?」
頭を撫でられたまま由佳が聞いてきた。
デレモードに入ったようだ。
上目遣いでこちらを見上げてくる由佳の表情。
それが智之の心に響いた。
(やっぱ……かわいいよな……なんでこんなにかわいいんだ……)
コロコロ変わる由佳の表情を見ていると飽きが来ない。
笑ってる顔もつーんとしてる顔も照れが入ってる顔も全部かわいい。
思い出すだけでにやけてしまう。



 「どうかした? ぼーっとしちゃって」
由佳が智之の方を覗き込んできた。
「あ、いや、何でもない」
「へんなのー。で、結局どうするのよ」
「またちょっとやってみたいことを考えておいたから、それをやろうかと……」
「はぁ、やっぱり……どうせそうだと思った。こんな程度で終わるわけないか」
「ってことで、またしばらくジッとしていて」
「はいはい、わかりましたよーだ」



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 すると智之はまたしても自身の体を縮小化させ始めた。
短時間の間に何度も体の大きさを変化させて、頭が混乱したりしないのかと由佳は思ったりしたが、
智之は随分と「DESIRE」に慣れているようなのでどうも混乱したりすることはないようである。
あっという間に小さくなった智之は由佳の10分の1、こちらの世界を基準として100倍の大きさになった。
智之は縮小化が止まるや否や空港の滑走路にそびえ立つ由佳の足元へと駆け寄っていった。
一応、これでも100倍サイズの巨人ではあるが、至近距離に1000倍サイズの由佳がいるせいで、智之がまるで小人にしか見えない。
「いやいや、こう巨大なメイドさんを下から間近で眺めてみたいなーって、思って……」
そして智之は由佳の足元に駆け寄った。
「うおー、でっけー」
先程、由佳にメイド服に着替えてもらう際に用意したのがこの靴だ。
もちろん脚周りの方もメイド服とセットで白いニーソックスも用意して、ちゃんと履いてもらっている。
メイドさんが履くに相応しく、華やかさはないもののメイド服と合わせることでその魅力を引き立てる魅惑の一品なのだ。
智之の視線は目の前の巨大な黒のストラップシューズに注がれていた。
智之から見て簡単にいえば、通常の10倍の大きさ。
2メートルを優に超える大きさのかわいらしい靴の生み出す存在感が智之の心をくすぐった。





 「と、智之。上を見上げたら蹴飛ばすからね……」
智之が上を見上げて、感慨に耽っていると空から由佳の警告が降ってきた。
智之は直立している由佳の足元にいるわけだから、当然、空を仰げばメイド服のスカート及びその内側が丸見えになっているのである。
これならスカートの中も覗き放題である。
大事なところもバッチリ見えた。
思わず智之の顔が綻んでいた。



 一方、由佳は真下に智之に侵入されているせいか随分と恥ずかしげな様子だ。
「って、ちょっと。何スカートの中見上げてニヤニヤしてるのよ、ヘンタイ」
「いや、これは男子の桃源郷なんだってば。
 上を仰げばスカートの中。そして奥に見えるぱんつ……くっーサイコー」
と熱く語る智之だった。
「早く下から出てってよ……恥ずかしいのに……」
「いいじゃんか、ぱんつ見られても減るわけじゃないんだしさ」
そう言い訳して智之は上を見上げ続けていた。
「とりあえずまた私が怒る前に出て行くほうが身のためだと思うんだけど……その気になれば、今の智之ぐらい軽く持ち上げられるんだから」
由佳から警告を受けて智之は名残惜しげにスカートの下から出てきた。
「あれ、スカートの中覗いたら、蹴っ飛ばすんじゃないの?」
「……そんなことできないもん……智之だって、わかってるくせに……」
足元にあるすべてを踏み潰せるほど巨大な由佳が小さくても自分だけは特別に見てくれているのが、智之にとってはうれしかった。
(オレからももっと可愛がってあげないとな……)
「足、触ってもいい?」
「好きにしたら?」
なんだかお怒りモードになられたようだが、本気で怒っているわけじゃなさそうなので、遠慮無く遂行することにした。
やはりつんデレ娘さんである。
ここで由佳が不用意に足を動かせば、智之に危険が及んでしまうので動かさないように頼むことが必須となる。
「しばらく足触るからじっとしててね……」
そう言うと智之は巨大なストラップシューズの方へと体を密着させた。





 智之がやろうとしていたことは、由佳が履いているストラップシューズのストラップ部分の着け外しであった。
まるで巨大な由佳の身の回りの世話をする小人になった気分だった。
由佳に対する忠誠と奉仕として、思わずこの巨大なストラップシューズの靴磨きをしたくなった。
そして、靴自体がこれだけ大きいと留め具を外すのにも思いっきり力を込めなければならなかった。
足と靴とを固定するバンドも両手で持たなければならないほど重かった。
とりあえず支えるだけで精いっぱい。
さらに持ち上げて、足の上から退けるようにバンドを反対側に回してみようと考えていたのだが、とてもじゃないができない。
バンドだけでこれほど重さがあるとは想像してなかった。
由佳なら親指と人差し指の二本で出来てしまうことが自分にとっては両腕を使って、力いっぱいやってもできない。
天に向かってそびえ立つほどの巨大な由佳と対照的なあまりにも小さな自分の無力さを感じる。
同時に興奮も覚える。
それがサイズフェチシストの性だった。
 


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 その時、由佳は小さくなった智之を見て、妙案を思いついた。
「ねぇ。ちょっとしゃがんでみるから、気をつけてね」
「ん?ああ、いいけど、何かするの?」
「いいからいいから、大人しく言うこと聞きなさい」
そう言うと由佳はその場にしゃがみこんだ。
智之との距離が一気に近くなった。
(こ、これは……)
由佳がしゃがんだことによって、真上に広がっていた夢の空間が智之の目の前に移動してきたのだ。
思わず視線がその一点に集中する。
「こ、こらっ!パンツばっかり見ないの」
「え?しゃがんでくれたのってオレにぱんつ見やすくしてくれるためじゃなかったの?」
「そんなわけないでしょ!」
「な〜んだ」




 さすがにそれはないとあらかじめ分かってはいたのだが、由佳のぱんつが見れないのはやはり残念であることには変わりはない。
「ほら、手に乗ってみてよ」
と、由佳が智之の目の前に手を差し出して乗るように促した。
そして、言われるまま智之はそのまま由佳の手のひらに登った。
「智之が手乗りサイズになってるんだね、かわいい〜」
「なるほど、オレを手に乗せておもちゃ代わりにしてみようというわけだな」
「智之が勝手に小さくなったわけだし。いいでしょ?」
「いいも何もこの状態だと由佳にされるがままだからな」
由佳のことだし、自分の身が危なくなるようなそんな無茶な行動には出ないと思い、智之は自分の体を由佳に委ねた。
そして何より。
智之はこういうシチュエーションに発展することも待ち望んでいたのだった。




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 そして由佳は鼻歌交じりに小さな智之の体を指先で弄り始めた。
ただの指の一本も大きな丸太ほどの大きさに感じられるこの状況。
全身を指でなぞられている間、智之は体を起こそうとしてもできなかった。
由佳は指で軽く押さえつけているだけだったのにも関わらずだ。
やはり絶望的な大きさの差、力の差が体全体を通じて身に染みる。
自分の持てる力を最大限振り絞ったとしても、由佳の指一本にさえ敵わない。
街中にそびえ立つ巨大な由佳の姿を遠く離れた安全な場所から眺めているだけでは決して感じることのできないこの感覚。
由佳が自分の優しい恋人でなければ、身の危険が間近に迫っていると考えて当然だ。
「でっかい由佳の顔がどーんと目の前にあるとこうなんだかものすごい迫力を感じるというかなんというか……」
「智之は大きな女の子が好きなんでしょ? だったら、よかったじゃない、こうして私に遊んでもらえて♪」
巨大な女の子の手のひらに乗せられてしまった小人の立場を身を持って知る。
(すべてを由佳に委ねてみるというのもなかなか……ちょっと怖いところもあるけど、由佳なら大丈夫だよな……)




 「ねぇ、もしかして怖いの?」
そんな智之の心情を見透かしたのか、由佳が問いを投げかけてきた。
「別にデカいって言っても、由佳だし……」
智之がそんな余裕綽々なことを言っている。すると。
「あらあら、そんなに余裕ぶっちゃって。
 もっと怖がらせてあげよっか?何せここは仮想現実だから、間違って潰しちゃっても別に死んじゃったりしないもんね」
由佳が智之の横でデコピンの空振りをした。
目にも留まらぬ超高速で巨大な指が智之のすぐ横を通過した。
思わず息を飲んだ。
これの直撃を受けたら智之の肉体は一溜まりもなく吹き飛ばされてしまっただろう。
「お願いですからやめてください。怖いの苦手です」
「ほら、やっぱり」
由佳が見下すような冷たい視線を投げかけてきた。
さっき、強がってみせただけに由佳の目には、よけい惨めに映っているだろう。





 「ふん、こんなに小さいと私に逆らうなんてことはできっこないもんね。なんか惨めね」
(すっごいひどいこと言われているけど、由佳に言われるとなんか嬉しいような……)
「チビのくせに、御主人様気取って、私に命令しようとするなんて、ホント生意気なんだから」
言葉だけを捕らえてみると刺々しいが、実際には由佳の口調はそんなにキツいものではなく、半分、お遊びめいたものだった。
それにしても、だんだんと小さくなっている智之をいじめるのが楽しくなってきたのだろうか、由佳の言動がまたサディスティックになってきた。
小人の街をめちゃくちゃに破壊している時もそうなのだが、相手に対して優位に、それも圧倒的優位な立場になっている状況になるとその傾向がよく見られる。
ただ無意識のうちにこうなっているので、由佳本人が気付いているかどうかは不明だ。
(今の状態ならまだしもこれ以上、エスカレートしていくとまずいことになるかもしれないし……)
「と、とりあえずその指を遠ざけて欲しいんだけど。ホントお願い」
由佳は智之の呼びかけに応じて、指を遠ざけてくれた。
「智之が小さくなってるの見るとな〜んかいじめたくなってくるのよね」
これで本当に楽しそうにしているのだから、なかなか恐ろしい。
伊達に「破壊の女神様」としていくつもの都市を破壊・蹂躙してきただけはある。
「ん〜、次はどうしようかな〜」
由佳が何か考え事をし始めた。



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 (えっ……ちょっ……何、この展開……いや、やばくなってきたような……)
智之は由佳に完全に主導権を握られたことで、大きな焦りを感じていた。
この仮想現実の世界で、智之の思い通りにならないものはない。
ただし、一緒にプレイしている由佳の行動を除いては……



 その気になれば、由佳の行動すらコントロールすることは可能だ。
しかし、それはあまりにも反則すぎる。
智之としても、由佳の意思を奪うようなことは絶対にしたくはなかった。
だから、すべてリクエストという形で自身の欲望を由佳に伝えて、実行してもらっていたのだ。
(そりゃ、由佳が彼女になってくれる前は、NPCのかわいい女の子キャラを巨大化させて、ある意味、無理矢理、やりたい放題してけどさ……
 リアル彼女相手にそれは反則過ぎるしな……)




 ついでに言えば、当然ながら由佳の許可がなくとも体のサイズを由佳よりも大きくすることはできる。
ただ、せっかくのこの状況。
「ここから逃げ出したら負けかな」という考えが智之の頭の中を占めていたのだった。
そういうこともあり、智之は由佳にされるがままになっていたのだ。




 由佳はしばらくの間、智之に冷たい視線を投げかけながら思考を巡らせていた。
で、その結果。
「んじゃ、そろそろかわいそうになってきたから解放してあげる」
それは智之にとっては想定外の言葉だった。
そう言うと由佳はその場にしゃがみこみ、手のひらと地面を近付け、早く智之に降りるように促した。
そして智之は言われるがままに手から降りた。



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 「さぁ、小人さん。踏み潰されないうちに早く逃げたほうがいいと思うけど?」
由佳はこっちを見下ろして、軽く微笑みながらそう宣告した。
(完全にスイッチ入っちゃたなーこれ……)
智之は先程の由佳の言葉に隠された真の意味を悟った。
どう考えても「逃げてもいい」というのは飾りにしか過ぎない。
あれだけ何かを考えて何もしないまま逃がすなんて、あれだけSっ気に目覚めた由佳には考えられない。
所詮、一旦解放するのは次なる行動への準備でしかない。
小人をわざと逃がしてイジメるというのは、巨大娘には実によくある話だ。




 そもそもここは周囲四方を海に囲まれた人工島であり、また智之が隠れる場所などないに等しい。
海の方へ逃げるにしても、大きさのことを考えると智之のほうがむしろ不利になってしまう。
智之がどこへ行こうと由佳の視界から見えない場所にはたどり着けない。
由佳の性格からして、本気で危害を加えようとしたり、踏み潰そうとはしてこないだろうが、本気で怖がらせようとはしてくるはずだ。
あまりにも大きな体格差という武器を使って、圧倒的に優位な立場からいじめてくる。
それが由佳のやり方だ。
いつもならいろんな方法で由佳を言いくるめたりして言いなりにして、手懐けることも簡単だが、今はそう簡単には行かない。
巨大娘の獲物として狩られるのはこっちだ。
ふと我に帰った智之はあわてて由佳の足元から駈け出した。



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 智之が空港の広大な滑走路をかけずり回っていた。
その背後から巨大な由佳がゆっくりとした足取りで追いかけてくる。
智之が焦って必死になって走っているのとは対照的に、由佳はいつもよりゆっくりと歩いている。
なのに、スピードは由佳の方が速いくらいだ。
しかも、圧倒的な差があった。
「ほらほら、もっと早く逃げないと踏み潰されちゃうゾ♪」
そう言っては見せしめのためか、はたまた智之に対するサービスなのか。
まだ壊れずに残っていた空港のターミナルビルを次々で踏み潰していく。
およそ一回の踏み潰しで一区画まるごとが無残な瓦礫の塊へと変貌していく。
しかも一歩一歩を足を高く上げ、地面を踏みつけるようにして歩いている。
そのせいか、由佳が歩いた後の滑走路とその周辺には200メートル以上の大穴がいくつも開いていた。
軽く歩いただけで由佳は滑走路を再起不能なまでに破壊していたのだった。
智之が空港島内のあっちこっちを逃げまわり、その後、由佳が智之を踏み潰さない程度に追いかけ続けた。
こうして二人の追いかけっこはしばらくの間、続いた。
島内にある構造物はほぼ全て踏み潰され、すべて瓦礫の山と化していた。
もはやここが海上に浮かぶ広大な国際空港だった頃の面影はなかった。
「そろそろ終わりにしよっか、小人さん?」
智之が息切れ仕掛けた頃になって、とてつもなく大きなメイドさんはにこやかにそう提案してきた。



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 小さくなってからというもの、完全に由佳に振り回されていた。
当初の予定では、由佳にメイド服を着させた後は、主導権を握り、あんなことやこんなことをして、
思う存分心ゆくまで由佳をいじめてあげようと思っていたのだが、ご覧の有様。
予想以上に、由佳にイジメられる展開になったといううれしい誤算もあったのだが、そろそろ軌道修正をしておかないと面倒なことになる。
とりあえずこの状況を打開するには、「御主人様」としての威厳を取り戻さなければならないのだが……
「そろそろ由佳と同じ大きさに戻っていい?」
「だーめ♪」
智之の希望はまたしても無残に握りつぶされてしまった。
「メイドさんに逆らえないご主人さまとは一体……」
「ちゃんと智之のリクエスト聞いてあげてるし、こうやってメイド服だって着てあげてるじゃない。何か文句ある?」
「大体、やりたいことはやったけど、まだ最後にやりたかったことが残ってる……」
「まだやりたかったことがあるの〜?多すぎ〜」
「いや次が正真正銘、今日の最後のリクエストだから……」
「『今日の』ってのが気になったけど、あえてそこは聞かないでおいてあげる」
今日だけじゃなく、これからしばらく、いやもしかしたら……
由佳自身、それは分かっていた。
「で、最後のリクエストの件なんだけど……」
「そうね……」
由佳は一呼吸置いてから、こう切り出した。
「最後くらいリクエストの内容聞く前に、智之が私のことをどれだけ好きか聞かせてもらおうかしら?」
由佳は智之の目の前にしゃがみ込んで智之をつまみ上げ、再び手のひらに上に落とした。
そうして智之は由佳の手のひらに乗せられたまま、尋問されることになった。

<つづく>