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7.


 由佳は数キロ離れたあの山の手前まで、一直線に向かって歩いていくことにした。
が、今の彼女の巨大さのために、多少遠い場所でも一分程度というほんのちょっとの時間で着いてしまう。
(邪魔な建物なんか踏み潰して、蹴散らしてしまえばいいのよ...)
由佳は、自分の進路上に何があろうと無視して歩いている。
田んぼも畑も古くて大きなお屋敷のような邸宅も関係なく、足元にあれば踏み潰す。
軟らかい田んぼには、深さ3メートル程の大穴が開き、その穴に田んぼの水が滝のように落ちていく。


 歩いていく途中で、ふと、視線を斜め下に向けると、青々とした水田が広がっている中に、
新しめのマンションが三棟並んで存在しているのを見つけた。
見た目がほぼ同じなのでこの三棟は同時期に建てられたマンションだろう。
由佳に一番近いところにあるのが、一号棟のようである。
マンションの側壁に「1」を象った金属板が設置されているのが分かる。


 最近は、このあたりまで川山市の市街地が広がってきているようである。
近くにあるああゆう踏み潰して遊ぶには、
もってこいという感じのマンションを壊して回ってみるのもおもしろそうだし、
それに加えて、どこかで見ているはずの智之のためにもなるだろうと由佳は考えた。
(小人さんの街を壊していくのって、「ゲーム」をプレイし始める前は、まだ少し気が引けちゃうけど...
いざ壊し始めると小人さんがかわいそうだなんて全然思わなくなっちゃうから怖いよね...
私が言うのも何だけど...
今の私は手足だけで、ほとんどの建物を壊すことが出来る力を持っているし...
小人さんが私にかすり傷一つ付けることもできないし、痛みすら感じない...
その気になればありとあらゆる物を壊して、街を完全な更地にすることだって可能だもんね。
鉄筋コンクリートだとか木造だとかそんなのは一切関係ないの。
みんな同じように私の足で潰されていくだけ...この世界じゃ私が一番強いんだから...)



 色々考えている間に、由佳の右足は自然と高く振り上がっていた。
慣れというのは、非常に恐ろしいものだ。
ごく普通の女の子をいつの間にか、圧倒的な力を行使することに快感を覚える残酷な破壊者へと変貌させるのだから...
ターゲットは由佳の膝の高さ程しかない12階建ての大きなマンション。
マンションの真ん中当たりを狙って、ためらうことなく、真上から勢いをつけて足を力いっぱい振り下ろす。



 「ドッカーン♪」
とてつもない轟音と土煙と共に巨大な黒のローファーを履いた足が、
マンションを12階から一気に下までぶち抜いて破壊していく。
白い土煙が晴れると、マンションの中央部に10メートル近い幅の深い渓谷のような「溝」が作り出されていた。
各階の配水管が分断され、そこから水がプシューと勢いよく拭き出し、
脆くなった「溝」の近くからパラパラと瓦礫が落ちていく。
由佳の足は12階まであったコンクリート製の構造物を2階の高さまでに圧縮していた。
そして、「溝」からはむき出しになった小さな部屋の内部の様子が見えた。


 無人のリビングにつけっぱなしの大型テレビ...
この部屋の主は由佳の足の直撃を受けてしまって、もうこの世にはいないだろう。
その一つ下の階の部屋には中年女性が、こっちの方を向いて床の上でへたりこんでいた。
彼女は目の前にいる高校の制服を着た巨大な女を信じられないといった面持ちで見つめていた。
由佳が「こんにちは、小人さん♪」と声を掛けると、彼女は目を開いたまま失神してしまった。


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 何の罪もないごく普通の人々の平和な日常を破壊するためにやってきた巨大な侵略者。
破壊行為自体に強烈な快感と優越感を感じているこの巨大女子高生を止めることなど、もはや小人たちには不可能だった。
川山市に住んでいる小人たちは知らなかったはずだが、彼女は海軍の大艦隊を無傷で葬った力の持ち主だ。
破壊の化身のようなこの巨大娘を自身の言いなりにさせることが、唯一、可能なこの世界の「創造主」こそが、
今回の厄災の首謀者だとは、小人たちは夢にも思わなかった。




 彼らが存在しているこの世界のあらゆるものは、無敵の巨大娘の由佳に蹂躙され、
そして、その光景を被害の及ばない高見から眺める「創造主」の智之の性欲を満たすためだけに生み出された「玩具」なのだ。
二人の欲望を満たすだけの「玩具」という存在...なんと虚しい存在なのか...



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 由佳は、マンションの一号棟の残りの部分も踏み潰していく...
まだマンションのどの部分に相当するか分かる瓦礫も多かったが、由佳の巨大なローファーで粉々にすり潰されて行く。
こうなるともはや元が何だったかなど判別できない。
現場には、崩壊で巻き起こった白い煙が濛々と立ち込めている。
もう一号棟が建っていた場所には、その面影は全くなく、ただ粉砕された鉄筋コンクリートの瓦礫が山のようになっていた。
当然、その瓦礫の下には多くの住人が埋もれてしまった。
もはや彼らを救い出すのは不可能だった...



 由佳は、一号棟を壊すとすぐに移動して、次なるターゲットの二号棟に背中(位置的にはふくらはぎ)の裏を見せていた。
また由佳は、智之のためだけに小人さんのマンションを破壊しようとしていた。
すぐに崩壊させることのできるマンションなぞ、由佳にしてみれば一種の消費財のようなものだった。
愛する恋人のために、心の中では恥ずかしいと感じつつも、足ではない部分を使うことで新鮮味を出そうとしていた。
(アイツは、私の足も好きって言ってたけど...)
由佳のお尻がマンション目掛けて落ちてきた。
そして、震度7の揺れにも耐えられるよう非常に堅固に作られたマンションを、
チェックのスカートに包まれた巨大なお尻が、そこに何もなかったかのように、何の抵抗もなく押し潰していった。
(お尻も好きだったはず...てゆっか、私の体は全部好き〜とか言ってたかな...そ〜いうところがカワイイのよね〜)



 お尻を左右に動かして、さらに破壊部分が拡大していく。
スカート越しにコンクリートが砕けていく感触が伝わる。
この感触をお尻を通じて感じたことはあまりなかった。
(なんだかこのままこうしてると気持ちよくなってきそうね...そろそろ切り上げないと...ヤバいかな..
 コレと同じことをしようと思えば、智之の見ていない、私一人で「ゲーム」をしている時だって出来るもんね...)
試しに、勢い良く右手をマンションに衝突させても、同じようにマンションは簡単に崩壊した。
砂で出来た小さな城を壊すのと何ら変わりはない。


由佳がマンション破壊にのめり込んでいると、
またいきなり智之がテレパシーで由佳に話しかけてきた。



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 「じゃ、最後の三号棟は由佳が自分なりに考えたえっちな壊し方をして」
「な、なによっ!そ、そのえっちな壊し方って!!?」
あまりにも唐突でとんでもないリクエストに由佳は慌てた。
「今日は、オレのためにいろいろとやってくれるんじゃなかったの?あっ、『今日も』だな」
「なんでわざわざえっちな壊し方をしてあげなきゃいけないのよ!?」
由佳は当然のごとく、猛反論する。


 「やって、由佳」
智之は由佳の反論をぴしゃりと断ち切り、強い口調で言い放った。
さっきまでの恋人同士の甘いやりとりではなかった。
いきなり語気を強めた智之に対して、彼女はうまく言葉を返すことが出来なかった。
もう「ご主人さま」と「メイド」の関係に戻っていた。
もはや、由佳には智之の命令に従うことしか出来なかった...



 それまで智之に具体的に命令されたわけではないが、由佳はマンション一棟ごとに、わざわざ破壊する時の体勢を変えていた。
なぜこんな風にしたのかの理由は彼女自身でもよく分からなかった。
それはともかくとして、最後に残った三号棟は「由佳が考えるえっちな壊し方」をすることが由佳に課せられている。
「ゲーム」において、基本的に智之は自身の作り上げたストーリーの上で由佳の好きなようにさせることが多いが、
ここぞとばかりに由佳に様々なリクエストをしてくる。
(えっちなのって何よー、もう〜。いっつもこんなんなんだから〜、グスン)
で、結局由佳はナンダカンダで智之のリクエストを受け入れて実行する。
これが智之と由佳のお決まりのパターンだ。
この一連の流れは、前以って、お互いの性格を踏まえて、合意しての行為であることを改めて言っておく。




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 一号棟は足。二号棟はお尻。
と、二つとも中々えっちぃ要素を持つ部分でマンションを弄んだ。
となると最後の締めくくりの三号棟を弄ぶ部位として由佳が選んだのは...そう、おっぱいである。
由佳も自分の身体の中で智之が、どの部分が好きかくらいは当然知っている。
智之が相当な、俗に言う「おっぱい星人」であることは身に染みてわかっている。
二人で一緒にいる日で、智之が胸に手を出さない日はなかった。
おっぱいなら服を着てても問題ないし、智之の言う「えっちな壊し方」にも十分当てはまる。



 (べ、別に智之のためにいろいろやってあげてるわけじゃないもんね...
 こんな小さくて脆いマンションは私の体で押し潰して遊んでやるんだから...)
由佳は、智之に直に命令された今でも、まだ素直に「智之のためにやってあげる」という理由を認めたくなかった。
ただ、由佳が認めたくないだけで、実際は、誰が見ても智之に対して尽くしてあげているとしか思えなかった。



 今、マンション三号棟は四つん這いになった由佳の二つの腕と太股、それから上半身で囲まれた空間に収まっている。
当然、この姿勢だと由佳の巨大なおっぱいは、今にも落ちてきそうになっている。
(この状態からマンションにのしかかると...私のおっぱいでマンション潰れちゃうね...
 なんでこう、智之が喜びそうなことばっかりしちゃうんだろう...
 このままやっちゃうと智之の完全な言いなりだし...
 でも、やってあげたらアイツはすごく喜んでくれるし... 
 智之の大好きな巨大女子高生になってこんなことして喜ばせるのができるのは私だけ...





 あーもう、智之のバカバカバカッ!!!もう知らない!!!)


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 思わず口から出た言葉とは裏腹に、体はマンションに向かって徐々に接近していった。
制服の真っ白なブラウスに包まれたおっぱいが屋上に達するとその重量だけでコンクリートの屋上を破壊する。
(うぅ〜、智之に直接命令されているわけじゃないのに、身体が勝手に動いちゃうよ...)
おっぱいで建物を破壊するのは前にもやったことはあるが、由佳は恥ずかしくないわけが無い。
由佳にも、簡単には智之の言いなりにはなりたくないというプライドがある。
しかし、同時に智之の言いなりにはなってしまうことで由佳のMっ気も膨らんできている。
脳内で自分のプライドと智之への思いと自身の破壊欲求が交錯する。
しかし、プライドというのは快感に非常に弱いものであり、由佳もその例外ではなかった。



 いつの間にか再び、由佳の巨体がマンションに向けて降下し始めていた。
由佳のプライドが、破壊の快感に負けたのだ。
巨大なおっぱいで押しつぶされていく部分が拡大していく。
マンションが潰れていく感触がおっぱいを通じて、由佳に伝わる。
「ひゃん」
思わず声を上げてしまった。
(もっと...もっと...小さなマンションを押しつぶしたい...)
邪魔なプライドはいつの間にか消え去り、由佳は破壊欲求に支配されつつあった。
次第に破壊スピードは速まっていき、そして、ついに由佳の上半身全体がマンションを押し潰し始めた。
由佳はマンションを押しつぶす感触を全身で楽しむために、支えていた両腕の力を抜いた。
次の瞬間、マンション全体が一瞬で由佳の上半身で押し潰されてしまった。
(うぅ〜、なんだか知らないけど、マンションをおっぱいで潰しちゃった...智之は、また喜んでるんだろうな...)
多数の小人ごと、三棟のマンションを崩壊させた由佳に罪悪感のかけらなどなく、
あるのは、少しばかりの恥ずかしさと、もっと小人の建物を破壊したいという欲望だけだった。


 由佳はその場で立ち上がって、スカートやブラウスに付いた瓦礫をパンパンと落とす。
やはりアレだけ大規模な破壊活動を行った後でも、体に傷など付くはずなく、由佳のスカートやブラウスに汚れや傷んだ箇所はない。
智之が作り上げた「ルール」通りだ。
(ちょっと道草しちゃったけど、別にいいよね...)
現在の目的地の山までは、もう少しだ。
今までと同じように足元にあるものはすべて蹴散らしてしまえばいい。
由佳の中にサディスティックな感情が再び芽生えた。
(ふふふ、まだまだたっくさん壊してあげるからね♪)




 そしてまた、この後由佳はまた道草をすることになってしまい、目的地に到着するのがさらに遅れてしまうのだった。


<つづく>

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