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2.


 「さてと、じゃ出掛けるまで、一緒にビデオでも見よっか?」
「ま、まさかえっちなビデオじゃないよね?」
「もしかして由佳は、そういうのが見たいの?」
「そ、そんなの見たくなんてない!」
「まぁ、実はAVじゃないんだけどね」
「じゃ、なによ?」
「へへ〜ん、それは見てからのお楽しみ〜っと」
「智之のケチ!」
「メイド」さんがブーブー文句を言ってるのも気にせずに智之は、手際よくディスクを再生機にセットする。
部屋の明かりを消し、カーテンを閉めて準備は完了だ。





「ち、ちょっとこれってまさか…この前の『ゲーム』の録画なの?」
「ぴんぽ〜ん、そうだよ。こっちは由佳がちゃんと終わった後にくれた方のディスク。
 要するに『ゲーム』初体験時の由佳が映ってる奴だな。
 これから、メイド服を着た巨大な由佳が、あんなことやこんなことをして街を破壊しつくすという実にすばら…」
「いやー、止めて止めて!」
由佳が悲鳴を上げて、リモコンを智之から奪おうとするが、リーチの差で軽くかわされる。
「一緒に見よーぜ♪」
「嫌!智之が見るのは勝手だけど、見るなら一人で見てよ!」
由佳の拒絶反応を見て、智之は再生を一時ストップさせた。
「見るのが嫌なくらい恥ずかしいのか?」
「…うん」
由佳は落ち着きを取り戻し、頷いた。
「じゃ、『ゲーム』の中で巨人になるのも本当は恥ずかしくて、嫌なのか?」
「少し恥ずかしいとは思うけど、そんなに嫌じゃない。
『ゲーム』で巨人になって街を破壊するとなんだか気持ちいいから。
そ、それに私がおっきくなってあげると、智之がすごくよろこんでくれるし…」
「なら、録画された映像で巨大な自分の姿を見るのが、ものすごく恥ずかしくて嫌なの?」
「…うん」
「なんでそこまで恥ずかしく感じるのか説明できる?」
「うまくは説明できないけど、自分の姿をテレビの画面を通して見ること自体が
すごく恥ずかしく感じるし、ましてや自分が『巨人』になっている姿なんて…」
「だからこそ、俺と一緒に見た方がいいって。
なにもそんなに恥ずかしがる必要なんてないんだから。
これを見る人間なんて俺と由佳しかいないんだし。なっ?一緒に見よ」
「…わかったわよ。がんばって見てみるわよ…もう」
「由佳はいい子いい子」
こうやって頭をナデナデしてやると由佳の機嫌もすぐに戻る。
智之はもう一度、再生ボタンを押した。


  智之が由佳の背中越しに手を廻して抱きしめる形になって、
二人は一緒に「ゲーム」をプレイした際に記録された映像を見ていた。
メイド服姿の巨大な由佳が徹底的に街を破壊していく様子を
逃げ惑う小人の視点から…
ビルの屋上と思われる場所から…
或は、上空を旋回しているヘリコプターの中から…
様々な視点から記録された映像が編集されて、
さながら一本の特撮怪獣映画のように仕上がっていた。
ただ普通の怪獣映画と違うのは、怪獣役がメイド服を着たかわいらしいけど、すごくおっきな女の子なこと。
それと、小人たちがミサイルや砲弾なんかで攻撃を仕掛けても、
由佳が着ているフリフリのメイド服や由佳の白くきめ細やかな肌には傷一つつけることはなくて、
小人たちはもはやなす術がなく、街は由佳の思うがままに破壊しつくされていった。




 10階建てのビルを一瞬で踏み潰して瓦礫の山に変え、
大通りに展開していた戦車部隊も同様に踏み潰されてただの鉄の塊と化していた。
もっとも、由佳からすれば意図してこれらのビルなり戦車部隊を踏み潰したわけではなく、
たまたま運悪く23メートルもある靴の下敷きになっただけのことである。
いつのまにか由佳もおとなしくなって、自分が主演したこの「怪獣映画」に見入っていた。
すると智之の中にちょっとした悪戯心が湧いてきた。
由佳を抱き抱えている腕組みを解いて、するすると両手を由佳の胸の前に持ってきて、
そのまま、メイド服越しに由佳のDカップのおっぱいを揉み始めた。
突然、智之に胸を揉まれて由佳は小さな悲鳴を上げた。
「きゃっ。と、智之…や、やめて」
由佳がすぐさま抗議するも
「由佳がメイド服着ている間は俺のことは『ご主人様』って呼ぶのが決まりだったよね?
言い付けを守らなかった罰としてもっとしてやるからな」
智之は由佳の抗議を一蹴して、さらに激しく由佳のおっぱいを揉み続ける。
揉まれているうちに感じ始めたのか、次第に由佳の呼吸が甘いものに変わってきた。
その間にも、画面の中の「巨大メイド:由佳」は、圧倒的な力で小人の街を破壊し続けていた。



 一方、現実世界の由佳は画面の中の巨大な自分が一方的に街を尽く、
踏み潰し蹂躙していく光景に、知らず知らずのうちに酔いしれていた。
そして、「ゲーム」の時に感じたあのサディスティックな快感が脳内に甦ってきた。
そんな時に、突然、智之に胸を揉まれだしたので、マゾヒスティックな快感も同時に脳内に広がっていた。
圧倒的な力を持つ「ゲーム」の中の自分の姿と、
智之にメイド服を着させられ胸を揉まれている自分の姿が由佳の頭の中で交錯した。
征服感と被征服感という相反する二つの快感が由佳に融合して襲い掛かっていたのだ。



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 不意に胸を揉む智之の手の動きが一転して、ゆっくりとしたものに変化した。
それと同時に、さっきからずっと押し寄せていた快感の波が急に引いていった。
「はぁ〜、由佳のおっぱいはおっきくてやわらかいな〜。
こんなおっぱいに押し潰された小人さんがうらやましいな〜」
気の抜けた声で、智之は由佳の胸を賞賛していた。
ついでに、ビデオの再生も終了していたことに気がつく。
「いい加減に手を胸からど・け・て!もう十分触ったでしょ!
私がメイドさん役だからって、拒否できないのをいいことに…」
「いいじゃん、俺にはご主人様&恋人特権があるから由佳のおっぱい触り放題だし。
それに、ほんっとうに触られるのがイヤならもっといやがるはずなんだけどな〜?
結局、オレにされるがままだったし」
「じ、十分イヤよ。それに、そんな特権も認めてないもん!!」
「ちなみに由佳は俺の息子触り放題の特権が(ry」
そう冗談交じりに話す智之のズボンにはしっかりと「テント」が張られていた。
「い・り・ま・せ・ん!!」 
「まぁまぁ、そう怒らなくてもいいじゃないか」
「怒ってるんじゃなくて、呆れてるの!!
こんな真っ昼間からおっぱい触っちゃダメ!!
わかりましたか、ご主人様?」
語気を強めた口調で、わざと智之のことを「ご主人様」と呼んでいるあたり、少し頭に来ているのだろう。
「……は〜い」
智之は素直に負けを認めて引き下がった。
「そんなに私のおっぱいが好きなら…
その…触ってもいい時はいっぱい触ってもいいけど…
こんな昼間からお触りするのはだーめ」
「んじゃ、触ってもいい時って一体いつになるのか教えて欲しいな〜?」
「そ、それは、私が触っても…いいよって言ったときだけだから…もうっ!!離れてちょーだいっ!!!」
と、こんな感じでイチャイチャしているうちに、ディスクの再生が終了した。
「さてと、再生も終わったことだし、時間もいい頃合いだしそろそろ出掛けようか。
 由佳も着替えないとね。オレはあっちの方で着替えてくるから、由佳は、ここの部屋使っていいからな」
それだけ言い残して智之は別の部屋に歩いていった。
(もう、中途半端におっぱい触わっておいて、途中でやめるなんてヒドいじゃない…
 ヤるならちゃんと最後までしてくれないと、ずっとヘンな感じのままじゃない!!!)


 
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 今日のお昼ご飯は、智之がおごると言い出した。
メイドの食費はご主人様が払うのが筋だというのだ。
おそらくこの後の「ゲーム」に、由佳が渋々ではあるが付き合ってくれることの感謝の現れだろう。
食べ物に釣られるわけではないが、ここは素直に智之の申し出を受け入れることにした。
二人は駅ビルに入っているイタリアンレストランに入った。
智之のおごりだということなので、
由佳は普段あまり食べる機会がない少し値が張るコースランチメニューを注文した。
店員が注文を聞き終え、その場から離れたところで、テーブル越しに智之が由佳の二の腕をつっついた。
そして潜めた声で「普通、メイドさんはご主人様より値段の高い物は食べないもんなんですけど。
んでもって、もっと言うなら、俺のおごりなんですけど。
それとも、これは『ゲーム』の時に、お返しがあると考えていいのかな、由佳?期待してるよ」



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 そういうわけで智之の計画通りに由佳はまた「ゲーム」の中で、巨大な女の子を演じさせられることになった。
今日中は、智之の言い付けは必ず守らないといけない「メイド」の身ではあるが、
だからといって嫌々、巨大な女の子を演じるわけではない。
自分が「ゲーム」の中で巨大な女の子に成り切ってあげることで、
智之を喜ばすことになりそれが楽しくなってきたのだ。自分が尽くすタイプだと今更気付いた。



 由佳が智之に手コキやフェラチオをしてあげた時に見せる気持ちよさそうな智之の表情を見ると、
由佳もなんだか満足感を感じることが、前からよくあった。
実際、さっきだって、ビデオの中の巨大な由佳の姿を見て智之の「息子」は熱を帯びて、大きくなっていた。
由佳には、性的な刺激を受けて発生する男の根本的な生理現象について詳しくは分からない。
一応、巷に溢れているAVや成人向け雑誌が男の人が、一人で「そういうこと」をする時に使うものだとは知っていた。
ただどういうわけか、どう考えても性的な刺激にはなりそうもない「巨大な女性」の姿に智之の場合は性的興奮を覚えるのだという。
これは、自分が特別だから他の男にはわからないと智之が語っていた。
だた自分の彼女に、こういう性癖をひた隠しておくのはよくないと考えたから打ち明けたと…


 「それでは、今回のテーマを発表させていただきます。
今回のテーマは、じゃじゃ〜ん巨大スク水娘!!」
智之が一人ノリノリのハイテンションで話を進めていた。
「きょ、巨大スク水娘!?な、何なのよそれはっ!!!またヘンタイチックなことをやらせようとして…もうっ」
別に、由佳は「巨大」という言葉に驚いているわけではない。
「ビルよりも大きな女の子が好き」という智之のこの変態性癖は、今までにイヤというほど思い知らされている。
頭の中に整理しておいた智之の性癖に関する情報を再確認する。
むしろ、気になるのはその後に続く「スク水」という言葉の方だった。
「『スク水』って、お風呂場で前にエッチした時に使ったああいう水着のこと!?」
「うん、デザインとかは少し違うけど基本的にはあの時と同じものだと考えていいよ。
 それで今回も前と同じように、由佳には巨大な女の子になってもらって、ついでにスクール水着も着て、
軍艦やら海峡に掛かる大きな橋やら沿岸の工場を思う存分に壊して欲しいんだ。
と言っても、やって欲しいことはいつもと同じだけなんだけど…
由佳がやってくれるなら、全然見飽きないんだよ」
智之は嬉しそうな声でこうリクエストした。

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 「じゃ、さっき言ったシナリオ通りに頼むよ」
「うん、大丈夫」と私は軽く言葉を返した。
智之は、鼻歌を歌いながら自分の場所に戻っていった。
いつもいつも、「ゲーム」が始まる直前のこの時、智之はものすごく上機嫌なそぶりを見せる。
私が毎回この瞬間、恥ずかしさで頭が一杯なことも知らずに。
いや、智之は知ってるかもしれないけどあえて無神経な振りをして私をいじめてるのかも。
あの変態サディストならこういうこともやりかねない。
それに、何回か「ゲーム」はプレイしてるのにいまだに恥ずかしくてドキドキする。
本当は、智之を口で言い返したいけれど、
「俺がSなら由佳は基本的にはMなわけだから都合がいいじゃん」と言うに違いない。
よーするに、私と智之は「都合がいい」組み合わせだ。
智之が自称Sが7割のMが3割で、逆に私はS3割のM7割だから、ある意味相性はぴったり。
このSとMという要素が二人の間で上手く噛み合えば磁石のようにくっつきあって離すことは難しい。
逆に上手く噛み合わなければ、これまた磁石のように反発しあって離れ離れになってしまう。
付き合いだしたのはたまたまだけど、二人はうまく噛み合う相性だった。
だから、今まで恋人同士仲良くなってこれたのだ。



 (智之の命令で、また巨大化させられちゃうんだ…あれだけやって欲しい目をされると断る訳にはいかないけど…
やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいんだけど、本当はそれに私もね…)
由佳は、外見とは違って攻められると割りと弱いタイプの人間なので、今みたいに智之の言うことに乗せられてしまうことがよくある。
実際、由佳は友人からその点がいろんな意味で危ないと忠告を受けたことがある。

 

「ゲーム」を開始する準備を完了し、それぞれの座席に着いて、ヘッドレストを装着する。
今回も智之が設定をするので、暗闇の中、由佳は「ゲーム」が始まるのをじっと待っていた。
ようやく真っ暗だった視界に光が戻り、今、自分が置かれてる状況が把握できた。



<つづく>

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