####################
3.




 大浜県の県庁所在地である大浜市。
政令指定都市でもあり、県内だけではなくこの地方の中心都市でもある大都市だ。
人口約330万人のこの大都市は南北を二つの大きな川に挟まれ、
西側は海と三方が自然の防御壁に囲まれるという恵まれた立地条件で古来より発展してきた。
街の名の由来となった大きな砂浜は街の西側の湾岸地域に今でも残っている。
現在では、その沖合に海を埋め立てた人工島に大規模な海上国際空港が建設され、
街の中心部のビジネス街にはいくつもの超高層ビルが立ち並び、
大浜市はこの国の首都に次ぐ都市として栄えている。




 そして、この大浜には他の街には見られない特徴的な構造物があった。
それがあの「城壁」である。


 かつてこの国を統一して治める者のなき時代、諸国が群雄割拠し天下統一を目指しその勢力争いを繰り広げていた時代。
この大浜を拠点に、この地方を統治したとある支配者がいた。
その支配者がこの大浜を狙う外敵から護るために築いた防壁が、現在の「城壁」の元となったのだ。
元々は土で固めただけの堤だったのが、「城壁」は時代と共により強固になり、防衛拠点としての能力が向上し、
現代では巨大なコンクリートの壁となって外敵の侵略を防いでいる。
今では大浜市内に陸路で入るには必ず車であれ鉄道であれ、この「城壁」の下のトンネルを潜らねばならない。
半世紀以上まえの軍事政権時には、不穏な反乱分子を摘発するためにそれぞれのトンネルに検問所が設けられていた
が、もうすでにその面影も全くと言っていいほどなくなっている。




 先述の通りに、「城壁」は西側を除く三方向に存在し、「城壁」も大まかに三分割されている。
その内、大浜市南端にある「城壁」がこの「大浜南壁」である。
そして、「大浜南壁」のすぐ南を流れているのがこの天戸川である。
川は大浜の東隣の天戸県から県内を横断し、大浜湾へと注いでいる。
川岸は公園として整備され自然の少ない都市の中で貴重な緑が広がっている...





 普段の日常と変わりない様を見せている川辺り、「城壁」、そして大都会大浜市...
その平穏の崩壊する時が刻一刻と近付きつつあることを誰も知る由もなかったのだ...






                                                            *





 (橋を壊すってなると...)
由佳は智之に言われた橋の破壊活動に取り掛かろうとしていた。
由佳の近くにあるのは3本だ。
(えーっと、線路があるのが一つだけ...後は車用の橋かしら...?)
由佳が橋梁なんかに詳しいはずもなく、何となくの違いでしか区別出来なかった。
ただ、どれも橋の形状は違えど由佳の片手で掴める程の小ささということは共通している。
これらを全て壊して小人たちを「城壁」の外へと逃げ出さないようにしろというのが、智之の言い付けだ。






 「ねぇねぇ、この橋どうやって壊したらいいの?」
「そうだな...それは自分で考えてほしいな。
頭の中で想像してどうゆうやり方が一番いいか、それを由佳が決めてほしい。
まぁ、オレに言われるがままやるのが好きなら、その通りにしてもいいけどな...」
「わ、私は智之みたいに四六時中、ずっとおっきな女の子のこと考えてるわけじゃないもん...」
「さぁ、どうするメイドさん?」
「わ、わかりました。私の好きなようにします...」
「うん、楽しみにしてるからさ。
メイドさんはご主人さまに積極的にご奉仕しないとね♪」
「ほんとにもう...あんまり調子乗ってたらダメだからね...」
「は〜い、わかってるって」
「でも...智之の命令通りに壊すのは嫌じゃないから...
 これで喜んでくれるなら、智之の言う通りにしてあげてもいっかってね♪」
「うぉ〜すごくうれしい発言だ!」
「だからさ〜、逆の立場になった時はちゃんと私の言うこと聞いてよ♪」
由佳は主導権のギブアンドテイクを持ち掛けてきた。
彼女のほうも智之にいろいろと命令してみたいところがあるのだろう。
「おっと...それはいつになることやら...」
智之は由佳をからかうためにあえてはぐらかす返事をした。




 「あ〜ずるい!自分だけずっと『ご主人さま』の立場を続けるなんて!」
「由佳も『ご主人さま』やってみたいんだ〜」
「まぁね、でもご主人さまじゃなくてやっぱりやってみたいのはお嬢さまとかかなー
 ねぇ、巨大化とかが楽に出来るんだから、私のしたいことも出来るよね?」
「しようと思えばできるけどな。由佳が自分でやるといいよ」
「私がそういうセッティング出来ないこと知ってるくせに...」
「嘘だって。オレがやってやるから拗ねるなよ。 
 でもさ、なんでそんなにやりたいんだ?なんか理由あんの?」
「だって〜、智之って結構Mっぽいところもあるから...
私にいじめられたいって思ってるはずだもん♪」
結局、由佳の思い込みが、その推測の元となっているようだ。
だが、しかし。確かに由佳の言葉通りに智之も、由佳の方が立場が上になっているシチュエーションを考えて妄想することがある。
頭の中で少々Sな由佳にあれこれいじめられる妄想に耽るが、
いざ、実行に移そうとして本物の由佳を目の前にしてみると逆にいじめてみたくなってしまって、
由佳も由佳でそれを受け入れてしまうが故に智之の妄想が実行されたことはない。
(でも、してみたいのは山々なんだよな〜...今度、何とかするか!)
「さぁてと、やっちゃお〜っと!」



                                                            *




 元々、智之が由佳を1000倍にしたのはどちらかというと興味本位の要素が強かった。
映像作品として巨大娘を取り扱ったものでも150倍程度が限度で、
それ以上巨大な設定の作品は見たことがなかった。
ならば、自分でやってみようと思い立ったのだ。
地上にある全てを圧倒するほどの巨大さを以てして、破壊しつくして欲しかった...
巨大さは即ち「力」だ。それも何物にも勝る圧倒的な強大なモノだ。
今の由佳がほんのちょっと歩くだけで大地震が起こり、街は壊滅していく。

 地上から見上げる1000倍の由佳は100倍サイズの10倍よりももっと巨大な感じがする。
空の一部を遮り、聳え立つ。
巨大な由佳の影が足元の街に伸びている....
皆既日食が起きているかのように影に覆われた部分は昼間なのに真っ暗闇だ。


 智之はまた様々な視点から由佳を見に戻った。



                                                            *



 由佳は一度立ち上がり、足元を見下ろした。
足を肩幅より少し多めに開いて、腰に手を当てる。
もうお馴染みの巨大娘が聳え立つポーズだ。
智之の大好きな黒と白のコントラストで形成された巨塔が聳え立っていた。




 「大浜の街の小人さん、こんにちは。
 私の大好きな人が巨大な私が都市で大暴れするところが見てみたいって言ったので、
 この街もオモチャにすることになりました♪
 なので、大人しくやられちゃってくださいね♪」
1500メートルから降り注ぐ、雷鳴のような由佳の声。
いつも聞きなれた女の子らしい、かわいらしい声とは1%も似ていない。
由佳が記録された映像を通じて聞いてしまったら、きっと落ち込んでしまうだろう。
由佳の巨大さと相俟って、その威圧感はすさまじいものだった。
それにしてもさらっと自分のことを大好きと言ってくれたのが、智之は何より恥ずかしかった。
「でも、その前に少しだけ時間あげるからがんばって逃げてね、小人さん♪」
口ではこう言っているものの、もちろん小人たちが由佳から逃げ切ることなど不可能だ。





 (智之ってこーゆーのが大好きだもんね〜どう?感激した?)
今度はテレパスで智之に話しかけてきた。
さっきの恐ろしいまでの大音量の声とは異なる、いつも聞きなれた声が脳内に直接響き渡る。
(うんうん、サイコーだよ。さすが由佳!オレの好みをばっちりわかってる!)
(智之のためだけに、大浜の街を破壊してあげるんだから♪
 これから小人さんが死んじゃってもぜ〜んぶ智之のせいだからねっ♪)
巨大な由佳の破壊活動が見られるなら、「ゲーム」の小人がどれだけ由佳に踏み潰されて死んでしまっても問題ない。
彼らは智之の欲望を満たすための生け贄だ。
(それと...今は小人さんが逃げるための時間だけど、智之がじっくりと私を眺める時間でもあるんだけどなぁ〜)
(マジかよ!)
(うん、マジだよ〜♪)
智之はあわてて今いる場所から由佳を見上げた。


 せっかく由佳が設けてくれたサービスタイムを一瞬でも無駄にはしたくない。
「ゲーム」の機能をフル活用して、智之は視点を次々と変えてあっちこっちから川の傍に聳え立つ由佳を眺めていた。
このプレイも当然、映像記録として撮影されているが、(それもマルチアングルで)やはり生で見るのが一番である。



 本当ならそのかわいさあまりに、由佳を抱きしめたいところなのだが残念ながらお互いの大きさが違いすぎるので、今は無理だ。
(同じ大きさになったら、ぎゅって抱っこしてやるからな...待ってろよ...同じ大きさになったらな...ニヤリ)
1000倍の超巨大女子高生として佇む由佳を十分堪能した。
マルチアングルで記録された映像も楽しみだ。



                                                            *



 「じゃ、そろそろ壊しはじめまーす♪」
サービスタイムの終わりを告げる宣言をして、いよいよ由佳が行動を開始した。



 (これくらい小さいと片手だけで壊せるかな...?)
由佳は試しに一番近くにあった橋をしゃがみこんで覗いて見た。
橋の上は巨大な由佳が出現したことで大混乱になっていた。
右往左往しながらも、由佳がいる方向とは反対側に皆逃げ出していく....
(でも、残念でした♪逃がさないんだから...)
由佳は橋の上に多くの小人や車があるにも拘らず、橋と川の間に指を差し込み、一気に上に持ち上げた。
数年前に架け替えられたばかりの、まだ新しい橋であったが、そんなことは由佳にはまったく関係ない。
由佳の指二本分ほどしかない橋の幅は巨大女子高生にとってあまりにも細すぎた。
橋全体を支える橋脚が圧倒的な指の力で破壊されていく。
由佳の巨大すぎる指先で、砂でできているかのように脆くも一瞬で崩壊してしまった。
橋の残骸はそのまま人や車を乗せたまま真下の川に落下していき、水面に大きな水柱を生み出した。
崩壊はホンの一瞬の出来事だった。







 「こういう感じがいいんでしょ?ご主人さま?」
智之が今まで「ゲーム」で散々色々と残酷なことをリクエストしてきたせいか定かではないが、
由佳も智之の望むカタチをなんとなく分かっていた。
かわいくて巨大な女の子が大きな構造物を一瞬で破壊していく光景は智之の大好物だ。



 天戸川に架かる長い橋の両端が破壊されて、中央部が岸から分断されて上空に連れ去られてしまった。
まだそこには取り残された人々が残っていた....
だが、彼らが助かることはなかった。




                                                            *




 結局、由佳が掬い上げた橋は手に載せられて、上昇していく途中で崩れ落ちてしまったのだ。
バラバラになった残骸がかなりの高所から地上に降り注いだ。
かなりの高度で崩壊したために落下地点は広く、まだ由佳の直接的な攻撃を被っていない地域にも大きな被害が出た。
(あっ、崩れちゃった...)
(由佳が手に力入れたからだよ...)
(そんなに入れてないもん。この橋が脆すぎただけだってばぁ〜)
由佳の方は脆すぎることが不満のようだ。
簡単に破壊できてしまうのにも限度があるだろう。




 (流石に1000倍だと強すぎるよな....
由佳に気づかれない程度にいろんなものの強度をアップさせておこうか...)
智之は由佳に知られることなく、秘密裏にこの世界の設定を書き換えた。
これで少しはマシになってくれるだろう。


 (でもまだ橋は2つ残っているから、それも壊してほしいなと...)
(それもそうね...)
由佳は今立っているすぐ近くにある次なる橋を見つけた。
二つ目の橋を破壊するべく由佳が歩き始めた...







 と思ったらすぐに由佳の歩みが止まった。
もう次の橋が架かっているところに着いてしまったのだ。
その距離、由佳の歩数にしてなんとたったの二歩。
由佳はたったの二歩で着いてしまったが、実のところ先ほどの橋があった場所からは1kmは距離が離れている。
由佳が小幅に歩いても、一歩一歩が500メートルもあるのでまたすぐに着いてしまったのだ。








                                                            *







 2つ目の橋。
どうやら今度は高速道路の橋のようである。
高速道路特有の緑色の外壁がそのことを証明している。
川山市で破壊してきたあの高速道路がここまで続いていたのだろう。
道路の方を覗き込むとドアが開けっぱなしの無人の車がたくさん捨てられていた。
さすがに小人たちは車を放置してすでに逃げ出してしまっていた。
(あー小人さんみんないなくなってる〜)
(そりゃ、これだけでかい由佳がどすーんどすーんって歩いてきたら逃げるでしょ〜)
(むぅ〜。デカいデカい言うな!)
(じゃ、ちっちゃい由佳♪)
(ちっちゃいって言うな〜...)
由佳がムキになって反論する。また智之はニヤニヤしてしまう。
由佳のこの反応がかわいくて仕方ないのだ。
付き合ってから発見した由佳の魅力。




 (あっ、由佳。いいこと思いついた!)
(んーな〜に?)
(んとだな...)
また良くあるように智之の困った思いつきが出てきた。
由佳がそれに文句を言いつつも付き合うのは現実世界でも「ゲーム」の中でも変わりはなかった。


 智之から「いいこと」の中身を聞かされた由佳は思わず困惑したのだった。








 (頼むからさ、やってくれって...)
(うぅ...)
(なっ、こんなこと由佳にしか頼めないんだから...)
またいつものように智之と由佳の間で押し問答になっていた。
でも、流れはいつもと同じで結果は自ずと決まってくる。
(もう...しょうがないんだから...)
(よっしゃー!)
由佳に「しょうがない」と言わせることが出来れば、ほぼ智之の勝ちである。
その言葉の後には、必ず由佳は智之の希望を実行してくれる。
由佳本人は自覚してるのかしていないのかは分からないが、
おそらく「尽くす」タイプなのだろう。





                                                            *





 早速、由佳は智之に言われたことを実行に移していた。
高速道路がちょうど真下にくるように、由佳は右足と左足の間に挟みこんでしゃがんだ。
由佳はさっき智之に言われたとおりにしていた。
体重の掛かり具合が悪かったので、ちょっとだけ体勢を立て直すために足を動かした。
今の小規模な足の動きで、地上にある数え切れないほどの建物が磨り潰される。
由佳の履いているローファーと地上の建物の大きさの違い...
1000倍サイズのローファーが街を押しつぶしている光景を智之は目に焼き付けていた。




 (ぱんつ...見たかったんでしょ...?)
智之の要求に応えるために、由佳は恥ずかしそうに膝のあたりのスカートの裾を少しだけ持ち上げた。
現実世界で二人でエッチするとき、特にスカートを履く制服プレイの場合、
智之はいつも由佳のぱんつが見たいと訴える。
それは、「ゲーム」の中で由佳が巨大化しても変わることはなかった。
見せるときはおおぴろっげに見せつけるのではなく、恥ずかしそうにこっそりと...
チラリズムの極意に則って、チェックのスカートの奥に見えるぱんつ...
しかし大きさは規格外の巨大さで、上から落とせばおそらく街の一区画を覆い隠せるほどだ。
由佳の真下だからあの甘い由佳の体の匂いが充満してることだろう。
裾を持ち上げてぱんつを見せようとしている由佳の恥ずかしげな表情....
それが智之自身を大きく興奮させるのだ。
(由佳かわいいよ由佳...)




 今の由佳の姿勢ではスカートの裾は必然的に太ももにひっかかり、膝より低い高度では前から中が丸見えとなる。
後ろの裾は、地上に達していてその巨大さ故に、そこにあった高速道路や建物を破壊していた。
このチェック柄のかわいらしいスカートもまた巨大さゆえに、圧倒的な破壊力を秘めた恐るべき兵器となっていた。


<つづく>