腹黒百合姉妹

 

「見てください、奏お姉さま。小人さんの街ですわ」
「あら、本当ね。ちょっと見学させてもらおうかしら」

突如として街の郊外に現れた、二人の美少女。
姉妹なのだろうか、身体と身体が触れ合う距離で仲の良さそうに談笑を交えつつ、街へと向かってくる。
その光景自体は微笑ましいものだったが、一つだけおかしな点があった。
彼女たちは周囲の景色とあまりに調和していなかったのだ。
別に奇抜な服装や髪型というわけではない。むしろ、それらはのどかな田園風景に合っていた。
どちらも清楚なセーラー服を着ており、背の高い方の少女は黒髪ロングヘアをお姫様カットにして、
もう一人の少女は同じく長い黒髪を白のリボンで一本結びにしている。
だが、人々はそんな彼女たちの姿を遥か仰ぎ見なければならなかった。
そう、二人の大きさは人々の100倍もあったのだ……。

 

田畑やあぜ道を踏みしめながら、彼女たちにとっては小さな、街の人々にとっては大きな足幅で近くの住宅地に歩み寄る二人。
数キロの距離をあっという間に踏破して、あと一歩になったところで彼女たちはピタリと止まり、足元の様子を窺う。

「ふふ、ちっちゃくて可愛いですわ。建物も、小人さんも」
「そうね。お持ち帰りしたいくらい」
「いっそ連れ帰ってしまって、飼ってあげるのはどうでしょう」
「ダメよ、琴音。彼らも小さな身体で必死に生き、暮らしているのだから。
……あら、そんなことを言うから、小人たちが琴音を見て怯えてしまったわよ」
「そ、それは奏お姉さまもですよ。私たちがこんなにも大きいから、驚いているのですわ」
「あら、そうかしら? まあいいわ。ひとまず観察はこの辺にして、小人たちに挨拶しましょう」
「はい、お姉さま」

そして、姿勢を正し街の方に向き直る二人。
その一人、琴音と呼ばれた一本結びの少女が口を開く。

「小人のみなさん。こんにちは。今日、私たちは偶然この街の近くを通りがかったのですが、これも何かのご縁。
ちょっと見学させてくださいね。多少、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、どうかよろしくお願いします」

そしてペコリとあいさつ。結んだ髪が前に垂れるのはご愛嬌。

何だ、身長こそ信じられない大きさだが、良さそうな子たちじゃないか……。
突然の来訪に戸惑いながらも、そんな風に受け止める街の人々。
だが、彼らの思いは一瞬にして打ち砕かれた。

「それでは、さっそく街の中に入らせてもらいますね」

そう言って、琴音は無造作に住宅地へと足を踏み入れたのだ。
たちまち巨大なローファーがグシャ、グシャ、と住宅や自動車、電柱、街路樹、果ては人間まで次々踏み潰していくが、
彼女は前だけを見据え、惨劇が繰り広げられている足元には全く気も留めずにまっすぐ進んでいく。
その後を追いかけるように、奏と呼ばれたお姫様カットの少女も同じようにして踏み進む。
平和な街に突如降り掛かってきた大破壊、大虐殺を目の当たりにして、人々は慌てて逃げようとしたが、
彼女たちの進路上にいた者は建物の中にいようが、車に乗っていようが、踏み潰され、蹴散らされて絶命していった。

こうして十歩ほど進んだところで、ふと琴音は歩みを止める。

「……どうして小人さんは私から逃げてしまうのでしょう。別に危害を加えるつもりはありませんのに」
「それは、琴音が彼らを踏み潰しているからよ」

奏に指摘され、はっと気がついたように今更ながら足元を見る琴音。
すると、彼女の目に映ったのは、踏み抜いてしまって崩れかけた住宅の幾つかと、
車体の半分ほどが靴の下に隠れた路線バス、そして靴の周りで腰を抜かしている人々であった。
もちろん、足の下では何人もの小人さんたちがぺちゃんこになってしまっているのは想像に難くない。

「……あぁ、本当ですわ。ごめんなさい、小人さん。あまりにも小さくて、感触もなくて気づきませんでした」
「これからは気をつけることね、琴音。かく言う私もだけど」
「はい、お姉さま。……とはいえ、この街は狭すぎて足の踏み場もありませんわ。どうしましょう」
「そうね。仕方ないけど、多少の被害は目をつぶってもらいましょ」

そして、またしても住宅地を踏み歩いていく二人。
一応、先程よりは足元に注意が払われるようになったとはいえ、
たくさんの建物や車が壊され、逃げ遅れた人々が潰れていくのに変わりはない。
何しろ、彼女たちのローファーの大きさは全長24m、全幅8m前後もあるのだ。
住宅地を網目状に走る道路では到底収まりきらず、付近の幹線道路であっても片足分がせいぜい。
それでも彼女たちが住宅を踏み潰すのを避けようとその幹線道路上を歩くことで、
電線が寸断されて信号灯が消えたりしたことにより交通麻痺に陥っていた車列が「不幸」にも踏み潰されていく。
また、二人が足をあまり上げずに歩くことで、踏み潰されずに済んだ車や人々も蹴り飛ばされ、吹き飛ばされ、
結局のところ、進路上にいた者は絶命まで至らなくても大怪我を負ってしまう。
この状況に、人々はまだ建物の中にいた方が安全だと判断して路上に出るのをやめるが、
その矢先に琴音は学校を跨ぎ越そうとして校舎の一部を「うっかり」蹴り崩してしまった。

「あぅ、やってしまいました……」

足を戻して校庭を踏みしめながら、べそをかく琴音。すかさず奏がフォローに入る。

「壊してしまったものは仕方ないわ。それより、次はもっと慎重になりなさい。
それと、学校を再建しやすいように、後片付けしてあげなさいね」
「はい、お姉さま。……ということなので、中にいる小人さんたちは早く避難してくださいね」

彼女たちが路上を踏み荒らすのを見て、外に出るに出られず校内に残っていた教員や生徒たちであったが、そう言われては逃げる他ない。
慌てて避難を開始するが、彼らに与えられた時間はあまりにも短かった。

「それではいきますよー」

琴音はわずか10秒ばかり待ってから、校舎の残った部分を踏み潰し始めたのだ。
当然、その程度の時間ではほとんどの者は逃げることも出来ずに建物ごとぺちゃんこにされてしまう。
あるクラスでは生徒の半分以上が廊下にすら辿りつけずに教室ごと犠牲となり、
また多くのクラスでは何人もが窓から飛び降りようとして、
1、2階ならともかく3階以上となると骨折したり、場合によっては絶命していく。
さらに、何とか着地したところを、校舎からはみ出たローファーによって踏み潰される者も少なくなかった。
こうして一部が崩れた校舎を「後片付け」したところで、
彼女はあろうことか続けて無傷の隣の校舎や体育館にも襲いかかり、
やはりそこにいた教員や生徒たちごとそれらを瞬く間に跡形もなく踏み固めてしまう。
その光景を、傍らで苦笑いしながら眺める奏。

「あら、何も全部壊さなくてもよかったのでは?」
「あ、そうでした……」
「本当、琴音ったらおっちょこちょいなんだから。ふふ、まあそこが可愛いのだけど」

こうして、二人はわずかばかりの生徒たちを残して何もなくなった学校を後にし、
また歩みを踏み進めて「小さな」被害をどんどん積み重ねていく。
路上に放置された車、道路に面した住宅やアパート、コンビニ、足が駐車場に収まりきらずに巻き添えとなったスーパー……。
これでも彼女たちにしてみれば、なるべく被害の少なそうな場所を選んだ結果であったが。

やがて街の中心部までだいぶ距離を縮めたところで、奏はふと近くに電車が走っているのを見つけた。
目的地を同じくしていた4両編成の電車。多くの乗客を乗せながら制限速度いっぱいに走っていたが、
奏は線路脇の住宅を踏み潰しながら楽々追いつくと、先頭車両を掴んでそのまま持ち上げていく。
その際、架線が切れてスパークし、さらに後ろ3両もつられて車輪を空転させながら宙に浮くが、
程なくして荷重に耐え切れずに1、2両目間の連結器が切れ、それらは折り重なるようにして地面に激突してしまった。

「おっと、ごめんなさい。でも、しっかりつながっていないとダメよ」

何十メートルかの高さから落下し、住宅を幾つも押し潰しながら転倒している車両を見て奏は苦笑いし、
それから残った先頭車両を顔の前に持ってきて中を覗きこんでみる。

「あらあら、ちっちゃな小人たちがたくさん。百人くらい乗っているのかしら。
でも、みんなひどく怯えて小さく丸くなってしまっているわ。ふふ、可笑しい。琴音も見てみる?」
「お姉さま、ぜひ見せてください」

奏に呼びかけられて、興味津々な表情で歩み寄る琴音。
と、その際またしても足元の注意が疎かになっていたために、住宅はともかくとして、
地面に転がっていた3両まで一部分ずつを「うっかり」踏み潰してしまった。

「うぅ、またやってしまいました……」
「本当にこの子ったら、もう。でも、根はいい子なんです。だから、許してあげてくださいね」

涙目の琴音に代わって謝る奏。そして、手に持っていた先頭車両を琴音に差し出す。

「ほら、泣かないの。これで元気出しなさい」
「お、お姉さま……」

それを受け取った琴音は目をこすると、深呼吸して気持ちを落ち着けてから中を覗きこむ。

「……わぁ、本当に小人さんがいっぱい。それに、ボールみたいに丸くなってますます可愛いですわ。
なんだか、ちょっとイタズラしてあげたいかも……」

さっきまでの表情とは一転、怯えきった矮小な小人たちを見て笑顔を浮かべる琴音。
それから何か考える素振りをし、いいことが思いついたのか、意地の悪そうな顔をする。そして。

「がおー怪獣ですよ―。食べちゃいますよー」

楽しそうに言いながら、電車を甘噛み。
甘い吐息が窓を曇らせ、車内にもわずかに漂っていく。

「……って、冗談ですよ。ふふ」

もっとも、乗客にとっては先程の「うっかり」踏み潰しの件もあって冗談でなかったが。
ただ、そのおかげというか、彼女は少し慎重になったため、
多少車体が歪んでしまったものの噛み千切られるような事態は避けられた。
そして、もう十分楽しんだのか、琴音は先頭車両の両端をそっと摘むと、ゆっくりと元の線路へと戻していく。

やがて彼女たちが談笑しながら去った時、「運良く」一人も犠牲者を出さなかった先頭車両にいた人々の目の前にあったのは、
かすかにうめき声の聞こえる、それぞれ半分ほどがプレス機にかけたみたいに潰れきった後ろ3両だった……。

 * * * * *

一方その頃。
巨大な美少女二人が住宅地で暴れ回っているという街始まって以来の危機的状況に直面しながら、
そのあまりの進撃速度に満足な対応を取れずにいた武装警察であったが、
苦肉の策として中心部の入り口に厳重なバリケードを設け、これ以上の侵入を防ごうと試みる。
そして間もなく彼女たちは姿を現した。いや、その巨大すぎる姿はずっと見えていたため、
そう言うよりは、目と鼻の先の距離になったといった方が正しかったが。

「そこの巨人たち! これ以上の破壊行為はやめて引き返しなさい」

後方に位置する装甲車の上から、拡声器を手に叫ぶ隊長。
その前に詰める警官たちも皆、銃を構え、寄らば撃つ姿勢を見せる。
本来なら、これまでの被害の大きさから有無も言わせず発砲しても良かったが、
彼女たちは巨大とはいえ高校生くらいの少女であり、直ちに撃つに忍びず勧告してみたのだ。
だが、その返事はそっけないものだった。

「あら、私たちはただ街を歩いていただけよ」
「そうですわ。それなのに武器を突きつけて……お姉さま、怖いです」
「し、しかし、こうしてかなりの数の建物が壊されているではないか。振り返ってよく見てみろ!
その上、多くの市民が犠牲となっているというのに、言い逃れは出来んぞ!」
「それは、この街が脆すぎて、小人さんたちも弱すぎるのがいけないのですわ。
被害に遭われたくなければ、もう少し建物を頑丈に作って、その中にでも避難してくださいまし」
「……ええい、下手に出ればいい気になりおって!
言っても分からんのなら身体に叩き込むまで。撃ち方はじめ!」

巨人たちの小馬鹿にしたような態度に、たちまち隊長はいきり立ち、
もはや穏便に済ませることなど到底出来ずに実力行使に打って出る。
即ち、一個中隊150人の武装警官による機関銃や自動小銃の掃射。
一秒間に数千発もの銃弾が巨大すぎる奏と琴音にほぼ全弾命中し、
普通の生身の人間ならとっくに木っ端微塵になっているところであったが、
どれだけ銃撃を重ねようとも、彼女たちの華奢な身体はおろか、
セーラー服やソックス、ローファーでさえも全く傷つけることは出来なかった。
そんな弱々しい攻撃を初めはきょとんとして見ていた二人であったが、
やがて自分たちが標的とされていることを理解して険しい顔になる。

「……これは攻撃と受け取ってよろしいのかしら。
全然痛くも痒くもなかったけれど、振りかかる火の粉は払わないと。そうよね、琴音」
「はい、お姉さま。か弱い女の子を一方的に攻撃するなんて、許せません」
「なので、私たちも反撃させてもらうわ。いくわよ」

そして、奏の掛け声とともに二人は一気に前へと進み出て、バリケードを踏み潰して難なく突破し、
その先で未だ無意味な銃撃を続けていたり、慌てて退避しようとした警官たちを一度に何人もまとめて踏み躙り、
装甲車も卵か何かで出来ているように容易く握り潰したり、蹴飛ばしてどこかのビルにめり込ませたり、
隊長ごとゆっくり圧縮してぺちゃんこにしていったりして、瞬く間に武装警察を一人残らず殲滅する。

こうして街の中心部へと侵入を果たした二人。
これでもうこの街とは完全に敵対してしまったので、一応、宣戦布告をしておく。

「この街に住む小人のみなさん、聞いてください。
つい先程、不幸にも貴方たちは私たちと相容れない存在となってしまいました。
ですので、これからこの街ごと殲滅させてもらいますわ。
でも、先に攻撃した貴方たちが悪いんですよ。ふふ、それでは覚悟してくださいね」

礼儀正しく、しかしあまりに恐ろしい内容を琴音は笑顔で言ってのけ、
それから彼女たちは早速近くの高層ビルから踏み潰し、蹴り倒し、薙ぎ払っていく。
一つの建物を何度も踏みしめたり、足を突き刺して掻き回したりと、じっくりと調理することもままあったが、
大抵はたった今壊した建物が完全に崩れ去るよりも早く次の建物に襲いかかって、
中にいた小人たちなど訳も分からないうちにビルごと、住居ごと犠牲にしていく。
これまでも少なからず街に被害をもたらしてきた二人であったが、もはや遠慮など無く好きなように遊び、暴れて、
建物という建物を次々と倒壊させて瓦礫の山と変え、あるいは完全に踏み固めて跡形もなくしてしまう。

「ふふ、ちっちゃな建物を壊していくのは楽しいですわ」
「あらあら、いけない子ね。これはあくまで小人たちに罰を与えるためなのだから、勘違いしてはダメよ」
「はい、お姉さま」

そんなやり取りをしながらも、二人はさらに建物を破壊し、小人を踏み潰し、街を血塗れの廃墟へと変えていく。
大通りに面した数十棟のオフィスビルも、奏がそれらを薙ぎ払いながら進むことで一分と持たず全滅し、
十数階建ての高層マンション群も、琴音に楽々踏み潰されたり両足で締め付けられて粉砕されたりして、次々姿を消してしまう。
さらに、建物の中は危険だと悟り、わあっと路上に出た小人たちを二人は待ち構えていたかのように笑顔で踏み躙っていく。
全力で走っているのにもかかわらず後ろからたった一歩で追いつかれ、
または通りに面した建物を粉砕しながら出現した巨大なローファーに襲われ、
あるいは大通りだったり橋の上だったりを二人に挟み込まれて、たちまち数千人が血の海に沈み込まされていった。

すると、今更ながら街に駐屯していた戦車数両や装甲車十数両など小規模な軍隊が散発的に攻撃してきたが――。

「私たちに勝てると思っているのかしら」

奏は戦車砲や機関砲など物ともせずズカズカ歩み寄って軍隊の真ん中に割って入ると、
強固な装甲を持つはずの戦車を一踏みで薄っぺらなスクラップに変え、
僚車がやられて慌てて後退した別な戦車は爪先で動きを止めたところでそのまま抉り潰し、
数両の装甲車も屈みながら両手で掻き集めてまとめて握り潰し、あるいは捻り潰していく。

「ああ、お姉さま。凛々しいですわ」
「ふふ、琴音。後はお願いね。私は元を断ちに行くわ」

そうして琴音に残党狩りを任せて、奏は彼らの出撃してきたと思しき近くの駐屯地へと向かうと、
榴弾砲や迫撃砲などによる迎撃をセーラー服で軽く受け止めながら苦もなく突破して、
兵士に車両、火砲を蹴散らし踏み潰し、施設も隅々まで踏み固めてしまった。

「私たちに逆らって、生きていられると思わないことね」

駐屯地の跡地で兵士たちの亡骸をさらにグリグリ踏み躙りながら言い放つ奏。
それから彼女は残党を一人残らず追いつめ殲滅し終えた琴音と合流して、
途中、デパートやホテルなどを粉砕しながら街の中心駅にたどり着くと、
そこで仲良く足踏みして駅舎を踏み抜き、ホームに停車していた何本かの電車も踏み潰し、
そこそこ立派だった中心駅を瞬く間に何十もの巨大な足跡へと変えてしまう。

「くすっ、脆すぎますわ」

続いて、二人は駅の近くにあった街一番の超高層ビルにも歩み寄り、その両脇に立つと、
お互いに抱え込むようにして二人の間で建物を圧縮し粉砕していく。

「ふふ。琴音、成長したわね」
「そういうお姉さまも……」

そうして彼女たちは身体を、胸を抱き合わせながら、残った瓦礫も粉々にすり潰していく。
超高層ビルの中にいた人間たちも挟み潰されるか、あるいは弾き飛ばされて地上に激突し、全滅してしまう。

もはやこの街のありとあらゆるものは彼女たちの「おもちゃ」でしかなかった……。

 * * * * *

多くの建物が形を失い、人々の姿も消え失せ、至るところで火の手が上がる崩壊都市の中で、
ただ二人、衣服も身体も傷一つなく、満足そうに微笑む美少女たち。

「ふふ、これで小人たちは十分思い知ったかしら」
「それはもう。……でも、これだけ暴れてもまだ生き残りがたくさんいるようですわ。
潰しても潰しても湧いて、本当にしぶとい小人さんたち」
「そうね。不届きな小人たちは全員始末してあげないと。最後に私たちの本当の力を見せてあげましょ」
「はい、お姉さま」

そして奏と琴音は向きあって手と手を合わせると、次の瞬間、強烈な光が彼女たちを包み込んだ。
いったい何が起こったのか。巨人たちの姿はどうなったのか。
傷つき、ほとんど生きる気力も失った人々が、閃光が収まるのを待って目を開いた時、
二人がさっきまでいた場所にはぽっかりと開けた空間だけが残されていた。
ようやく帰ったのか……? だが、何か嫌な予感がする。まさか……。
そう思って彼らは辺りを見回してみると、街は天にまっすぐ伸びる四本の超巨大な柱に囲まれていた。
どこか見覚えのある形、配色をしたそれ。それも、大きさこそ違えどつい先程まで嫌というほど見せつけられてきたもの。
また、ひっくり返るくらい顔を上に向ければ、遙か上空に見えたのは、こちらを楽しそうに覗き込んでいる二つの超巨大な顔だった。

そう、二人の大きさはこれまでのさらに100倍、小人たちの10000倍もの大きさとなっていたのだ。

「それでは、さっさと終わらせましょ。せめて最期は一思いに楽にさせてあげるわ」
「なかなか楽しませていただきましたが、これでおしまいです。さようなら」

手短に別れの挨拶を済ませると、彼女たちはもう一度手を取り合いながら街の上に両足を揃える。
この瞬間、街は完全に消滅した。

 

「……帰りましょうか、お姉さま」
「ええ。それにしても、私たちに逆らわなければこの街ももう少し長生き出来たでしょうに」
「でも、その時はもっと『うっかり』していたかもしれませんわ」
「ふふ、そうね。所詮、小人の街は私たちに壊される運命なのだから」

そして彼女たちは仲良く帰っていった。途中、幾つもの街を踏み潰しながら……。

 

おしまい

 

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