海だ!スク水だ!!巨大娘だ!!! 続編

 壊滅した街の中で気持ち良さそうに眠る、スク水姿の少女。
土煙でうっすらと汚れてはいるものの、美しい身体には傷一つ付いていない。
たとえ鋭く尖った瓦礫の上にいても、怪我をするどころか瓦礫の方が粉砕されていた。
それもそのはず、彼女は常人の1000倍もの大きさを誇る無敵の大巨人なのだ。
激しく燃え盛る石油タンクの上に立っていても火傷など一切負わず、
重武装した自衛隊の攻撃すら物ともせず、逆に返り討ちにしてしまうほどである。
今も、寝そべっているだけで数百棟の建物を背中やお尻、手足など全身で押し潰し、
時折寝返りを打っては周辺の街並みも次々と破砕し、跡形もなくすり潰していく。
この一帯は先程の大破壊自体は辛うじて免れていたものの、少女の無意識のうちに壊滅させられていた。
真新しい建物が整然と並んでいた新興住宅街は多くが平たくされて模様のように地面にへばり付き、
大きく立派な高層マンション群も手足に薙ぎ払われたり押し倒されたりして瓦礫の山と化していた。

 その超巨大な少女を上空から監視する偵察機。彼女の姿は逐一伝送されていた。
容姿、推定身長・体重。あらゆるデータが日米共同作戦本部に送られていく。
また、最初の出現場所である玉津島にも既に調査団が派遣されており、
彼女が玉津島出身の「榊 千華」という女子高生ということも判明していた。
これより少し前。初戦で準備不足とはいえ圧倒的な戦力差を見せつけられた自衛隊および政府は
総力を以ってしても勝利を得るのは困難と結論、単独での作戦を諦めて在日米軍に支援を要請していた。
世界の警察を自認し、また最強の軍事力を有する米国は同盟国の防衛及び在日米国人の保護を名目にこれを受託、
両国は協力して超巨大少女に対処すべく、すぐさま日米共同作戦本部を立ち上げ、
各方面から集積されたデータを基に着々と作戦計画を練り上げていった。
作戦概要としては、まず洋上の艦隊から数波に渡るミサイル攻撃を行い、
超巨大な少女――『千華』――を海に誘き出したところで、
炸薬の多い対艦ミサイル兵装の戦闘機による総攻撃を行うというものである。
仕留め損なった場合でも後方の水上艦から数千発のミサイルによる飽和攻撃を加え、撃滅する。
参加兵力は両軍合わせて空母1、巡洋艦2、駆逐艦6、護衛艦8の水上艦17隻、各種戦闘機150機以上。
また、万が一通常兵器の効果がなかった場合、秘密裏に核兵器の使用も許可されていた。

 そして、ついに作戦は開始された。既に母港から都市の沖合に向けて航行していた日米合同艦隊の巡洋艦から
まずは一発の巡航ミサイルが発射され、これを皮切りに各艦からも次々とミサイルが放たれていく。
亜音速で水平飛行するミサイル群。海を越え、壊滅した都市の上空を通過して千華に気付かれることなく接近する。
そのまま先頭の一発は千華の顔に命中、やや遅れて数発も着弾、文字通り炸裂した。
威力はやはり小さく、彼女の身体を傷つけるまでには至らなかったが、
立て続けに顔に当てることでひとまず起こすことには成功した。


「う、う~ん…」
騒音と閃光で安眠を妨げられ、むくりと上半身を起こす私。
何となしに寝ぼけ眼で周囲を見ると、海の方から幾つかの小さな物体が迫っていた。
しかし、起きたばかりで頭もうまく働かず、ぼうっと眺めているとそれらは私の身体に触れて小さな爆炎を上げた。
「………?」
今のは何だったのだろうか。とりあえず記憶を整理してみる。
「えっと、わたしって大きくなったんだっけ。それで、海を渡って都会に上陸して、
たくさん壊して、軍隊とも戦って、そのうち遊び疲れて寝たのかしら…」
確かに、周囲には1000分の1スケールの街並みが広がっており、至る所に破壊の爪痕が残されていた。
崩れ落ちた高層ビル、地面にめり込んだ住宅街、ズタズタに寸断された道路や鉄道…。
これらを全部私一人でやってしまったのだ。改めて自身の持つ力の凄さを思い知らされる。
それで今の爆発だが、これは恐らくミサイルによるものだったのだろう。
私を起こしたのもきっとそう。現にまた遠方からミサイルらしき物体が私に向かって飛んできていた。
「…まだ懲りないの? ほんと、小人って頭が悪いのね」
さっき軍隊を一方的に虐めてあげたのに、まだ圧倒的な力の差が分からないのだろうか。
私はどれだけ攻撃されても傷一つ付かず、翻って小人の軍隊は軽く触れただけでも壊れてしまう。
今だって、ミサイルが爆発しても痛くも熱くもなかった。目覚まし代わりにはなったけど。
「せっかく気持ちよく寝ていたのに、邪魔してくれちゃって。
ま、いいわ。目覚めの運動にちょうど良さそうね」
相手は何だろうか。戦闘機は見えないことから、たぶん洋上の軍艦が私を攻撃しているのだろう。
何隻いるかはわからないが、多いに越したことはない。その方がたくさん楽しめるから。
「ふふ、海でも小人の兵隊と遊べるなんて最高じゃない。
せっかく水着を着てることだし、思う存分楽しませてもらうわよ」
いつも愛用している、紺色のスクール水着。
陸に上がってしばらく経ったせいで乾いており、早く潤いを与えてあげたい。
早速私は立ち上がると、建物の残骸を踏みしめ、所々残っている無事な建物も破壊ながら海に向かって歩き出した。
原形を保ちながら横倒しになっていた高層マンションは足の親指だけで捻り潰し、
上半分が崩れ落ちていた高層ビルを周囲のビルごとクシャリと踏み潰し、
ほぼ無傷だった住宅街も足裏で撫でるようにしてすり潰していく。
消滅した駅と駅との間で停まっていた電車も先頭から最後尾まで一足で踏み躙れば跡形もなく消滅し、
バス営業所も勢いよく蹴りつければ、建物と数十台のバスが一瞬にして破裂し、
残りもくるくる回りながら宙を飛んでいって遠方で小さく爆ぜる。
もちろん小人たちも素足の餌食にしていった。私が寝ている間にさっさと遠くに逃げればいいものの、
呑気に近くの学校へ避難している小人たちを足指の間ですり潰したり、学校ごと足裏で叩き潰したり。
「ほらほら、早く逃げないと踏み潰しちゃうわよ」
そう言って素足をかざしてやれば、小人たちは必死で逃げようとするが、
一足で学校を大方覆えてしまうのでゆっくり足を下ろしても多くが素足の下敷きになり、
徐々に力を加えていけば爪先や踵、そして土踏まずでプチプチと弾けていくのが感じ取れる。
辛うじて難を逃れた小人たちは逃がしても良かったが、あまりにも鈍間なので罰として一人残らず踏みつけてあげた。
また、学校だけでなく公園にも小人たちは避難していたが、同じように踏み躙ったりしていく。
中には木々の間にたくさんの小人たちが隠れていそうな緑豊かな公園もあったが、
多くの建造物や車ごと地盤を掻き寄せて埋めてあげればすっかり木々は見えなくなってしまった。
そうこうしながらも私は一歩一歩着実に海へと近づいていく。
時折足元ではミサイルが飛来していたが、足で払ったり踏みつけたりして破壊する。
また、ぶつかる寸前にさっと避ければ、ミサイルは目標を失って高層ビルに突っ込み、
爆発を起こして建物に何フロアにも渡る大きな穴を穿ってしまった。
「あーあ、せっかく無事な建物だったのにね」
嘲笑う私。守るべき街に攻撃してしまうなんて、何やってるんだか。
弱い上に味方を傷つけるなんて役立たずにもほどがある。
かわいそうだから、ミサイルが命中した高層ビルを踏み潰して証拠隠滅してあげた。

 残りのミサイルも叩き落したりして全て壊し終えた頃には、私は浜まで到達していた。
ここから先は広大な海だけ。今までのように一歩一歩小人の街を破壊していくことはできない。
「でも、少し進めば小人の軍艦がいるはず。ふふ、首を洗って待っててね」

 そして私は海に足を踏み入れると、ザブザブと水を掻き分けながら歩いていった。

 * * * * *

 千華が海に入っていくのを確認した作戦本部はすぐさま第二段作戦を発令した。
と同時に、既に対艦ミサイルを搭載し終えていた各飛行隊は洋上の空母と各地の空軍基地から次々に発進していく。
陽を浴びて輝く機体は美しく、優雅に力強く飛行する様は見送る者に必勝の念を抱かせるのに十分であった。
その期待に添う様に各飛行隊は全機無事に集結地点へ到来し、陣形を構築していく。
エンジントラブルなど種々の問題で合流が遅れ、艦隊への千華の接近を許す事態も想定されていたが、
蓋を開けてみれば予定時刻よりも早く集結と編成が完了し、後は攻撃を残すのみとなっていた。
こうして、約五十機の艦載機と百機以上の戦闘機の計150機以上にもなる大編隊は千華を半包囲する形で接近していった。


 海に入ってしばらくすると、前方からたくさんの小さな物体が飛行してくるのが見えた。
またミサイルかと思ったが、お互い近づくにつれ、それが戦闘機であることがわかる。
数は百機以上だろうか、まるで前方の空を埋め尽くすような凄い大群だ。
でもそれだけ。どうせ攻撃など効きもしないのだから、怖くもなんともない。
構わず進んでいくと、ある程度接近したところで戦闘機から大量のミサイルが放たれた。
先程のミサイルよりは少し小さいものの、上下左右隙間なくこちらに向かってくる。
邪魔なので手で払ったり、海水を掛けたりして幾らかは撃墜するものの、
数の多さとばらけ具合に、どうしても命中するのは避けられない。
痛くはないものの、爆発するたびに身体が硝煙まみれになってしまい、鬱陶しくてしょうがない。
おまけに海にいるため思ったように動けないし、戦闘機は遠方から攻撃しているためほとんど手出しできないし。
「あ~もぅ」
それでも、何度も海水をすくい取って思いっきり遠くにかけることで運よく数機を撃墜できたが、
ますます距離を取られることで、もはや攻撃することもできず、やられっぱなしになってしまう。
次々に飛来しては顔、身体、手足と至る所で爆発していく多数のミサイル…。
「…もう無視よ、無視」
いくら我慢の限界とはいえ、反撃できなければどうしようもない。
恐らく、全力で追いかけても空高くに逃げてしまうだろう。
ならば、攻撃を気にしなければいい。きっと意識するから余計に鬱陶しいのだ。
というわけで、私は何も考えずにただ前へとずんずん進んでいくことにした。

 しばらくすると、戦闘機の方はようやくミサイルを撃ち尽くしたのか、大半が機首を反転していった。
散発的にはまだ攻撃が続くものの、硝煙で全身が覆われることもなく、だいぶ状況はましになる。
「ふぅ、ようやく終わりそうかしら…」
前方では相変わらず戦闘機がミサイルを発射していたが、私は特に意識もせず前に向かっていく。
そのミサイルは今までとは少し雰囲気が異なっていたが、構わず進んでいく。
だんだんと近づく両者の距離。次第に手の届く範囲にまで接近したが、
特に払おうともしなかったらそのままミサイルはお腹に命中、大爆発を起こした…


 想像以上に千華は強かった。通常兵器は全くといっていいほど効かず、
海で行動が縛られているのにもかかわらず戦闘機が何機も撃墜されてしまった。
だが、それもこれまで。超至近距離というよりもゼロ距離で核が爆発したのだ。
爆風、熱放射。数十万人を殺傷できる膨大なエネルギーが彼女に襲いかかったことだろう。
彼女のいた場所で巨大なキノコ雲が上がっているのが何よりの証拠だ。
これでほぼ確実に死んだだろうが、たとえ生きていたとしてもそう長くはないはず。
多量の放射線を浴びることでじわじわと苦しみながら悶え死んでいくのだ。
美少女が台無しになってしまうのは残念だが、今までの行いからすれば致し方あるまい…

 偵察機からの映像を見、もはや作戦本部の誰もが自分たちの勝利を信じていた。
正面特大モニターに映し出されたのは何十万人も殺戮した者に相応しい、地獄の業火ともいうべき光景だった。
遠方からの撮影でさえ、空は真っ赤に燃えあがりキノコ雲が天に昇っているのがはっきりと確認できる。
よもやこれを受けて生き残っている者など絶対に、間違いなく存在し得ないだろう、と。
彼らはそれほどまでに核兵器の力を、そして自分たちの力を過信していたのだ。

 だが、空が本来の青さを取り戻し、雲が晴れた時、千華は相変わらず無傷であった。
身体はおろか、核が直撃したはずのスクール水着でさえ傷一つない。
そんな馬鹿な。ありえない。誰もが自分の目を信じられず、何度もモニターを確認し、
また偵察機からの映像を疑い、近くを飛行中の戦闘機にも報告を求めたが、やはり結果は同じだった。
それでも、きっと放射線で倒れるとの儚い希望を何人かはまだ持っていたが、
この調子では恐らく放射線の影響もないことをほとんどの人間は悟っていた。

 人知を超えた存在。千華に対し、人類はあまりに無力であった。
通常兵器はおろか、核兵器さえ効かない超巨大少女に打つ手などない。
もはやこれまで。残された手段はただ当てもなく逃げ回ることだけ。
まもなく全軍に撤退命令が下された――


「へぇ、こんなことしちゃうんだ…」
冷めた目で、最後に攻撃してきた戦闘機がいた空間を眺める私。
既に戦闘機は全機撤退しており、遠くにうっすらとしか確認できない。
「絶対に許さない…」
誘われて海に入っていったら、一方的にやられっぱなし。挙句に核攻撃までされてしまった。
小人のくせに、女の子をこんなに酷い目に合わせてくれちゃって。
こうなったら一人残らず殺しつくしてしまわないと気が済まない。
何処までも追いかけて、追い詰めて、ギッタギタのメッタメタに…
「なんてね。あはっ、もっと私を楽しませて!」
確かに核攻撃は驚いたが、あまり痛くも熱くもなく、別に身体には何の異常もなさそうだ。
スク水の方も、どこにも穴など開いておらず、目立った傷も特には見受けられない。
もちろん、少しは腹立たしいが、それ以上に私は自分の力に酔いしれていた。
核兵器さえ効かない無敵の身体。これで私を倒せるものは何も存在しないことが証明された。
もはや何も怖いものなど存在しない。なんと強く、神々しい存在だろうか。
薄々感じてはいたが、どうやら私はただ大きくなっただけではなく、
何か不思議な力も一緒に備わったような、そんな気がする。
神様に守られているのだろうか。それとも、私が神様になったのだろうか。
「ま、どっちでもいいわ。わたしはこの力を楽しむだけ」
難しいことを考えてもしょうがない。それよりも、早く小人の兵隊と戯れたい。
さっきは散々攻撃されたから、今度は私の番。この力を存分に見せつけてあげる。
「きっちりと落とし前をつけてもらわないとね」
ちょうど今いる場所は何とか泳げるだけの深さがある。
あとどれだけの距離があるかわからないが、きっと泳げばすぐに辿りつけるだろう。
泳ぎ方は潜水がよさそうだ。波を立てて小人の軍艦が沈んでしまわないように。

 そして私は大きく息を吸い込むと、海の中に潜っていった。

 * * * * *

 凄まじい速さで潜水し、艦隊へとぐんぐん接近してくる千華。
戦闘機よりも早く接近する超巨大少女から逃れることなど、鈍足な軍艦には到底不可能だった。
とはいえ何もせずにやられるわけにもいかず、各艦は散開して退避しながら対潜ミサイルや魚雷を発射するが、
核も効かないのにそのような攻撃が効くはずもなく、あっという間にすぐ側まで接近されてしまう。
そして大きな水飛沫を立てながら海面に出た千華。波のうねりで艦隊は一時行動不能になってしまうほどであった。


「みーつけた。さっきはよくもやってくれたわね」
何度かの息継ぎの後、ようやく艦隊を見つけた私は笑みを浮かべながら彼らを見下ろした。
物々しい雰囲気のたくさんの軍艦。でも、全然攻撃してこないことから、
きっと、私が立ち上がる際に起こした波に耐えるだけで精一杯なのだろう。
沈んだら最後、荒れ狂う海の中に投げ出され、溺れて深海に沈んでいくのだ。
でも、彼らにとっての深海も私には太ももの中程まで浸かるくらいの深さ。
海底にどっしりと足を着きながら、軍艦が必死に時化を凌ごうとするのを悠々と眺めていく。
「…へぇ、こんなにいたのね」
どれだけいるか数えてみたら、全部で10隻…いや、17隻もいた。
さっきの戦闘機といい、凄い数だ。女の子一人相手に、ここまで熱烈に歓迎してくれるなんて。
これはもう丁重にお礼してあげなければ。最後の一隻まで、骨の髄まで。
…ともかく、大抵の軍艦は片手で簡単に掬えてしまえそうなサイズで、
私の尺度でちょうど15cm定規くらいの大きさだろうか。
もっとも、本当は超高層ビルと同じように100m以上の長さがあるのだろうが、
私にとってはおもちゃのように小さく、可愛らしいお船でしかない。
でも、一隻だけ数倍の大きさの軍艦もいる。あれはきっと空母なのだろう。
さすがに片手で持つのは厳しそうなサイズで、中々楽しませてくれそうだ。
でも、美味しいものは最後にということで、まずは手近なものから。
ザブザブと大股で歩み寄ると、波に翻弄されていた軍艦を股で捕らえる。
「ふふ、どこまで耐えられるかしら」
先程までとは一転、ピタリと動きを止めた艦を初めはスリスリと優しく愛撫してあげるが、
徐々に挟み込めば縮こまっていき、さらに締めつければ大部分が太ももの間にすっぽりと隠れてしまった。
そのまま脚をすり合わせれば、残りも太ももに飲み込まれてしまう。
「見えなくなっちゃったけど…どうなったのかしら」
手を入れて取り出してみたら、軍艦は薄っぺらで平べったい鉄板と化していた。
「あはっ、ぺらぺらになっちゃったわね」
あまりの情けない姿に、私は思わず吹いてしまう。
強力なはずの軍艦がぷにぷにの太ももでこうも無残になるなんて。
元々細かったのにさらに細くなった姿はまるで干物か何かのようだ。
「さて、次は誰がこうなりたい?」
にやにやしながら軍艦の干物をひらひら掲げ、挑発する私。
すると、ようやく態勢を立て直したのか、艦隊は一斉に反撃してきた。
そこら中の艦からミサイルが発射され、雨あられの如く降り注いでくる。
「そうこなくっちゃ。戦いはお互い死力を尽くさないとね」
さっきの軍艦は全然抵抗もなく潰れてしまい、少しつまらなかった。
やっぱり必死な相手をいたぶった方が断然面白いし、ゾクゾクしてくる。
もっとも、私が全力を出すことはないし、出したら一瞬で全滅させてしまうので、
必死に頑張ってもらうのは小人の艦隊だけになるけど。
そんなこんなで狙い通り彼らを焚きつけた私は軍艦の残骸をぽいっと捨てると、
ミサイルを払い、弾きながら前方の一隻に近づき、また太ももで挟み込んでいく。
すると、その艦は何とか逃れようとミサイルを乱射し、股間に攻撃を浴びせてきた。
「…もう、えっちなんだから。そんな悪いお船はこうしてあげる」
私は少し顔を紅潮させながら、ギュッと軍艦を挟み潰し、瞬時にスクラップにする。
さらに残骸を取りだすと丁寧に折り畳んで小さくまとめてからピンと弾き飛ばす。
艦隊のはるか前方に勢いよく飛んでいき、ややあって落下し小さな水柱を立てる軍艦の成れ果て。
この間にも小人の艦隊は相変わらず無駄な抵抗を続けていたが、私は構わず次の艦に近づくと、
今度は太ももで囲むだけに留め、代わりに膝を曲げて軍艦の上に座り込んでいく。
しかし、程なくして股間に何かが触れた感触のすぐ後には腰まで海に浸っていた。
要するに、沈没である。まるで抵抗もなく、あまりに呆気なかった。
「わたしってそんなに重たかったかしら。ごめんなさいね」
ちゃっかり水面下で軍艦を太ももで挟み潰しながら、笑顔で謝る私。


 一方、艦隊の方は笑い事では済まされない現実に恐慌していた。
千華が現れて早々に一隻の駆逐艦が大勢の乗組員ごと彼女の太ももに挟み潰された上に、
ひらひらとなったその残骸を見せつけられ、各艦は恐怖のあまり独自の判断で攻撃を開始したが、
核兵器さえ効かない千華は当然の如く傷一つ付かず、涼しい顔をしたままである。
総計数千発にも及ぶ対空、対潜、対艦ミサイルの飽和攻撃も虚しいものでしかなかった。
もちろん各艦は攻撃している間にも全速力で彼女から離れようとしていたが、
圧倒的な速さで詰め寄られてまた一隻の駆逐艦が太ももの餌食となり、
その近くにいた護衛艦も、のしかかられて瞬時に海中へと引きずり込まれてしまう。
そしてこの巡洋艦の命も風前の灯だった。真後ろから大波を立てて接近する千華、
というよりもその太ももは新たな獲物を求めて迫り来ているようであり、
乗組員は恐怖を掻き消すために全力で攻撃を加え、また内火艇に乗り込んで逃げようとしたが、
すぐさま艦も内火艇も超巨大な太ももがもたらす大波に浚われてしまう。
小船などひとたまりもなく海の藻屑となり、巡洋艦もすっかり波に洗われてしまう。
さすがに沈むことはなかったが、激しく揺さぶられて移動も攻撃もできない間に両隣りを太ももに囲まれていた。
上を見上げても、スク水に包まれた股間が天井のように空を遮っており、艦は完全に処刑台に収まってしまっている。
もはや絶体絶命である。まだ戦意の残る者は攻撃可能な全火器で最後の抵抗を行ったが、
それを嘲笑うかのように紺色の天井が迫り、上部構造から順々に押し潰していく。
先程に比べればゆっくりとした圧迫。しかし次の瞬間には巡洋艦は海没してしまっていた。
数千万トンという超質量のもたらす圧力に耐えきれなかったのだ。
もっともこの時点では、艦は多少原形を留めており、艦内にも少数の生存者がいたが、
千華がお尻をキュッと締めることで脆くも挟み潰されてしまった。
さらにもう一隻の巡洋艦もすぐに彼女のお尻の餌食となった。
同様にして近づいた千華は、今度は太ももで挟むことなく艦の横に立ち、
90度向きを変えて艦にお尻を向けると、勢いよく座り込んだのだ。
迸る水柱。海面、海底と二度に渡り押し潰されてぺしゃんこになる巡洋艦。
さらに千華がグリグリとお尻をすりつければ艦影は完全に海底の中に消えていった。
結局、他の艦に比べればやや大型の巡洋艦も彼女には大差なく弄ばれたのだった…


 少し大きめの軍艦を二隻立て続けに破壊した私はその後も破壊を続けていく。
これまでは太ももやお尻ばかりで壊していたので、今度は手で。
まずは一隻を両手で掬い取って顔の高さまで持ってくると、ゆっくりと指を折り曲げていく。
まるで粘土細工のように、指の動きに合わせて容易く変形し、拉げる軍艦。
それでも相変わらず無駄な抵抗を続いていたが、大砲を潰したりすれば徐々に攻撃は弱まり、
さらに握り締めていけばついに艦は丸々くしゃりと潰れた。
「くすっ、潰れちゃった」
数百の小人の兵士たちが軍艦ごと手の中で散っていくのを見て、また感じて、つい微笑んでしまう。
最後まで攻撃し続けていた小人もいたようだが、もしかして私を倒そうと思っていたのだろうか。
これだけ大きさも、力も違うのに。本当に頭が悪いというか、むしろ憐れみさえ覚える。
「もっとも、焚きつけたのはわたしだけどね」
その気になれば反撃する暇も与えずに艦隊を全滅させることだってできるが、
あえてゆっくりいたぶることで、こうして無駄な足掻きを楽しめるのだ。
中には私への攻撃が無駄だと悟ったのか何もしない軍艦もいるが、
そんな悪い子はちょいちょい突いて挑発すればいい。
「ほらほら、攻撃しないと潰しちゃうわよ」
棒切れと化した軍艦をポイッと捨て、攻撃してこないそれを指先で軽く押してやれば、
このままでは沈められると思ったのか、慌てて攻撃してくる。
私の指先一つで翻弄される姿は何とも滑稽で、可愛らしい。
「ふふ、素直でいい子ね」
でも、なでなでしてあげたら色々と歪んだようですぐに攻撃が止んでしまう。
仕方ないので、思いっきり拳を叩きつけて一思いに粉砕してあげた。
続いての軍艦は左手で艦首を、右手で艦尾を掴んで持ち上げてから
折り曲げるようにして軽く手を捻れば、いとも簡単にパキッと真っ二つに折れた。
そして片手に収まるサイズになったそれを両手のひらに乗せると、ぐっと手を閉じて握り潰し。
最後は残骸を他の軍艦の近くに放り投げて水浸しにしてあげた。
また、私は手だけでなくおっぱいで遊んでみたりもした。
慣れた足取りで飛来するミサイル払い、弾きながらまた一隻の軍艦に近づくと、
今度は膝立ちをしてスク水に包まれた胸をかざしてみる。
「まさか女の子のおっぱいに潰される、なんてことないわよね」
私は笑みを浮かべながら、片胸が艦に覆い被さるようにしてゆっくり身体を沈めていくと、
軍艦はおっぱいの形に合わせて歪み、潰れていき、そのまま胸に張り付くようにして一緒に海中へと沈んでいった。
「んもぅ、おっぱいに負けちゃうなんてだらしないわね」
柔らかな胸を愛撫しながら、嘲笑う私。


 目の前で繰り広げられる光景はまさに悪夢であった。
技術の粋が詰まった駆逐艦がこうも簡単に潰されていくとは。それも片方の胸だけで…。
もはや弾も尽きてきた僚艦の中で、乗組員たちは一方的な虐殺を茫然と眺めるしかなかった。
だがそれも束の間、すぐに彼らの番が来てしまう。千華が隣にまでやって来たのだ。
おっぱいに包み込まれる、というのは多くの兵士たちにとって本望だったが、
実際相手にしてみると、巨大さも相まって恐怖以外の何物でもなかった。
しかもスクール水着を着用していることで肌の温もりを感じることもできないだろう。
天から降りてくる超巨大な胸は彼らにとってただのプレス機にしか思えなかった。
もちろん彼らは何も手を拱いているわけではなく、仰角いっぱいに砲身を上げて必死に艦砲射撃を行ったが、
千華のおっぱいを揺らすことすらほとんどできないまま、ついに胸が船に接触してしまった。
押し潰され崩れ落ちるマスト、それよりも早く襲いかかる巨大な胸。
直後に煙突と艦橋が潰れ、乗組員たちが逃げる間もなく胸は甲板まで達する。
艦内にいた者は押し退けられた隔壁に挟まれて潰れていき、
甲板上にいた者も胸の重みに一瞬たりとも耐えられなかった。
さらに千華は手を下から添えるようにし艦を挟み込んだことで、
艦首と艦尾にいて運良く潰されずに済んでいた少数の乗組員たちも艦と運命を共にした…


 次第に数を減らし、弾幕も薄くなるにつれて、ますます強くなっていく小人たちの絶望感をひしひしと感じながら、
私は破壊を止めるどころか、さらに楽しみながらおっぱいでのお遊びを続けていく。
今度は艦首を摘まんで軍艦をひょいっと持ち上げると、胸の谷間に収めてみる。
「どう? 気持ちいい?」
くすくす笑いながら尋ねる私。軍艦は長細いのでさすがに全部は覆えなかったが、
胸に手を当てて揉むようにして挟んであげれば艦の中央部を埋めることができる。
初めは優しく包み込んであげるが、次第に締めつけていけば艦橋がぐにゃりと潰れ、
さらに揉みしだけば艦の中央部は潰れ果てて、残りは海面に落下していく。
「ほんと、どうしようもない脆さね」
いとも簡単に壊れ、潰れていく小人の軍艦。私は半ば呆れ、半ば笑ってしまう。
もう少し手応えがあってもいいのに、とは思いつつもこの圧倒的すぎる力に酔いしれる。

 こうして小人の軍艦をおっぱいで弄んでいったら、また太ももで挟み潰し…

 * * * * *

 気がつくと、あれだけいた艦隊はいつの間にかほぼ全滅していた。
手で、足で、胸で弄び、ほとんど破壊し尽くしてしまったのだ。
結構楽しむことができたが、あとは空母が一隻残るだけである。
最後まで残しておいた、とっておきが一隻。それを、今から壊す。
私は早速近づいて横に立つと、両手を下に入れて胸の高さまで持ち上げ、じっくりと吟味する。
「…へぇ、なかなか立派じゃない」
空母は今までの軍艦に比べて長さは二倍ほど、幅も三倍くらいあった。
さらに厚みもかなりあり、小人の軍艦といえど結構な大きさである。
のしかかることもできそうだが…たぶん私の重みで沈んじゃうのでやめておこう。
これだけの大物を簡単に壊してしまうのはつまらない。
「どうしてほしい? 最後だからじっくり遊んであげるわよ」
笑顔で問いかける私。もちろん答えは返ってこない。
いや、本当は何か言っているのかもしれないが、小さすぎて聞こえないのだ。
もっとも返ってきたところで、言う通りにするつもりもないが。
「ふーん。無視するのね。じゃあ、わたしが決めてあげる。
…そうねぇ、抱きしめてあげるのはどうかしら」
口元を緩めながらそう言うと、小人たちの絶望感が一段と増した気がしたが、
私は構わず空母を海面に垂直にすると、胸元にぐっと寄せていく。
いくら大きいとはいえ、所詮抱きかかえるようなサイズではないので、
両腕で包み込むような形になってしまったが、まあ仕方ない。
これでも小人が造ったものにしては頑張っている方なのだから。
「ふふ、いくわよー」
そして私は空母を徐々に抱きしめていった。


 誰がどう見ても明らかな敗戦だった。完敗だった。
たった一人の少女相手に、日米合同艦隊は壊滅させられたのだ。
もはや味方は一隻も存在していない。残るはこの空母一隻のみ。
それも、余命は幾ばくもないように思われた。艦は彼女の手の上に収まっているのだから。
握り潰すのか、叩き潰すのかわからないが、いずれにせよ破壊されるのは間違いなさそうだ。
あまりに信じがたい事実に多くの乗組員が打ちのめされているなか、艦隊司令官は冷静に状況分析していた。
撤退命令が下された時にヘリに乗って現場から逃れる選択肢もあったが、
それを良しとせず最後まで部下と共に残る決断をした彼は既に自らの運命を悟っていた。
願わくば一隻の艦だけでも逃したかったが、今となっては何もかもが虚しい。
艦載機だけでも空軍基地に退避できたのがせめてもの救いか。
そんなことを考えていると、突然艦が垂直に起き上がった。
艦外ではパラパラと甲板上の機体が海面に落下し、艦内でも多くの乗組員が壁に叩きつけられる。
司令官もまた、座席から振り落とされて数メートル下の壁に落下してしまう。
身体中から力が抜けていくなか、彼はまた瞑想した。
どうやら彼女はこの艦を抱きしめるようだ。もはやこれまでか。
だが、逃げ回っても何時かはこの少女――千華にやられてしまうのだろう。
ならば今ここで散って、灰塵に帰した世界を見なくて済むのは幸いなのかもしれない…。
そして司令官は天を仰ぐ。ちょうどその瞬間、壁が大きく歪み押し寄せたのを彼は見た。


 私の腕と胸に挟まれ、圧縮されていく空母。力を込めていくにつれ、形はさらに歪になる。
大勢の小人たちが胸元で潰れていくのを想像しながら、そのまま一気に力を込めると艦は大爆発を起こした。
核が誘爆したのだろうか。また爆風と爆炎が私を包み込み、巨大なキノコ雲が起こる。
しばらくして海と空が静まった時、残ったのは私だけだった。
もう艦隊は完全に跡形もない。文字通り全滅していた…

 * * * * *

 さて、今度は何をしてやろうか。
さっきのように好き勝手に暴れて何もかも壊してしまおうか。
それとも、世界征服をして小人たちをひれ伏せさせてしまおうか。
尊厳も何もかもを踏み躙り、私に奉仕させる、なんていいかもしれない。

 静寂な海原に一人佇む千華は次のお遊びをどうしようか、早くも余念がなかった…


おしまい

 

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