お嬢様の異世界統治記

2話 お嬢様は女王様!?


あれから数日後、再び異世界の地に降り立ったエリカ。
前回の学生らしい爽やかなセーラー服から一転、その服装は厳かな黒で統一されていた。
胸元の開けた膝上丈のワンピースにコルセット、オーガンジーのオーバースカート。
ワンポイントで真紅の薔薇が装飾されたチョーカーに、レースアームカバー。
脚にはダイヤ柄ニーソックスに、ハイヒールのレースアップロングブーツを履いている。
そして少女らしさを残しながらも美しい顔立ち、黒の衣装と対照的にきらびやかな長い金髪は気高き印象を覚え、
身長1600メートル前後という相変わらずの超巨大さも然ることながら、統治者としての風格がそこにはあった。

人々は再臨した『お嬢様』に恐怖し、畏敬し、今日はどんなことをされるのかある程度悲劇的な予測はつくものの、
臣民となってしまった以上、逆らうことも抗議することも出来ずにその挙動を固唾を飲んで見守るしかなかった。


その30分ほど前。優雅な休日の朝を迎えていた私はそんな憐れな小人たちの思いなど露知らず、たとえ知っていたとしても歯牙にも掛けず、
久々に異世界へ転移するに当たってどこかお遊びにでも行くような感覚でクローゼットを物色していた。

「制服はこの前着てたし、普段着じゃちょっと味気ないし。うーん、何かいい服は…」

すると、奥の方から出てきたのはゴスロリ服のような衣装セット。
黒を基調とした半袖ワンピースとコルセット、オーバースカートに、薔薇のあしらわれたチョーカーまで付いている。
そう言えばこんなものもあったような…。まだ一回も着たことがないけど。だって恥ずかしいもの。
なのに何故こうして他の服とは明らかに趣の異なる衣装が私のところにあるのかは、偏にお母様の趣味による。
確か私の16歳の誕生日プレゼントとして貰った覚えがあるけど、年頃の娘にこれを着させてどうしようというのかしら。
ほとんど黒ずくめで、あとはとんがり帽子でもあればいかにも悪の魔女みたいな感じだし。
異世界はともかく、この世界では品行方正に努めているつもりなのに。
それとも、お母様には私の心の奥に潜む闇まで全てお見通しなのかもしれない。
いや、ただ単に可愛い娘に自分好みの恰好をさせたいだけのような気もするけど。

「…でも、どうせ向こうは小人しかいないし、たまにはこんな服もいいかもしれないわね」

確かに魔女っぽくはあるものの、たくさんレースがあしらわれていてなかなか可愛らしいデザインだし、せっかくなので着てみることに。
どうせ今回はたっぷりといけないことをするつもりだし、案外この衣装も悪くないかもしれない。
いつの間に仕舞い込まれていたのか、本当はもっと過激な衣装もあったけど、
幾ら小人相手とは言えそれはさすがに恥ずかしすぎるし、今はこれで精一杯。
ともかく、鏡を見ながら身支度を整え、服装に合わせて編上げのブーツを履いたところで
こっそりと地下書庫に潜り、転移魔法を唱えて異世界に転移していった。

 * * * * *

「…ふう、到着っと」

ゆっくりと目を開けてみれば、着いた場所はとある小人の街の郊外。
その規模はこの前最初に訪れた街と同じか、少し大きいくらいの中都市といったところ。
ざっと十数万戸の住宅に一万棟前後のビルが立ち並び、高層建築も数百棟と伸びている。
この街の小人たちには悪いけど、今日は戯れにこれらをめちゃくちゃに壊すつもり。
そして二度と逆らえないくらい、私の強さをたっぷりと見せつけてあげるのよ。
そう考えると何だかゾクゾクしてきちゃう。なんていけない女の子かしらね。
本当はもっと大きな建物もたくさんある首都を破壊したかったけど、
さすがにそれは色々とまずそうだし、小人たちとの約束違反にもなっちゃうから、
先日この国を征服した時、去り際にたまたま目に入った大きすぎず小さすぎずなこの街を
「今度来る時好きなようにさせてもらうから、小人たちはさっさと逃げておくことね」と宣言していた。
だから、街をぱっと見渡しても人影も車の往来もほとんどなく、閑散としちゃっている。
まだ残っているのは、よっぽどの物好きか私の警告に従えないお馬鹿さんくらいかしら。
それだけじゃ少し寂しいけど、多すぎるのも街を破壊する上でちょっと面倒だから、まあちょうど良さそう。
幾ら相手がちっぽけな小人とは言え残虐なことはあまりしたくないので、何度も追い払ったりしないといけないもの。
もっとも、誰もいないのも味気ないので、せっかくだし彼らにはお遊びに付き合ってもらおう。

「さーて、早速だけど今日はこの街を滅ぼさせてもらうわよ。何か文句でもある?」

一応、事を始める前に破壊の宣言と、その是非をにこっと笑顔で尋ねてみるけど、
もちろん耳を澄ませてみても不満の声は街のどこからも聞こえてこない。
それどころか、小人たちは今更大慌てでみっともなく逃げ回ったりする始末。

「ま、当然よね。どうせみんな私のものだし♪」

だって私はこの国唯一絶対の統治者――『お嬢様』なのだから。
街を壊すのも、小人たちを虐めるのも、何をするのも自由勝手気まま。
とまあ、さらりと言い放ったところで、まずは街道沿いに郊外の集落を田園ごと踏み躙っていく。
ゆっくり足を下ろせば、ブーツの下で面白いようにパキパキ壊れ、潰れていく数十戸の家屋。
さらには庭や倉庫に小屋、ビニールハウス群、放置されたトラクター、道路や電柱電線までもがまとめてさっくり消え、
それから足を上げれば、幸運にも土踏まずの下に位置していて無事だった少数の民家を残し、
これらがあった場所にはソールの形に合わせて前半分と踵の部分で大きくへこんだ靴跡がくっきりと刻まれていた。
続いての一歩は整然と敷き詰められた水田地帯に下ろせば、青々とした稲穂が踏み潰れてこれまた茶けた陥没に早変わり。
ぽっかりと大きく深く抉れた二つの窪みには、周囲の田んぼや用水路から水が大量に流れ落ちちゃっている。
ただ、この程度ではちょっと面白みに欠けるし、もっとたくさん大きな物を壊したいので、
一々虱潰しにはせず大きな集落だけ踏み固めながら、数歩でさっさと住宅地に足を踏み入れていく。
そして今度は整然と敷き詰められた家並みを端から端まで丁寧に残らずぐりぐり踏み躙ってみたり。
軽くソールの前部を押し付けるだけで数十戸の家々が一緒くたにあっけなく潰れ、
そのまま左右に捻ってやればさらにもう数十戸も弾かれて瓦礫の山に。
また、ヒールで地面に線を描くように次々と家屋を粉砕していったり。

「あはは、小人の建物なんてゴミみたいなものね」

嘲笑いながらもさらに何百と建物を蹴散らし進んだところで、続いて足を勢いよく振り下ろしてみる。
たったそれだけで、ブーツの直撃を受けた住宅群はもちろんのこと、
近隣の家々も地割れや地面の隆起に巻き込まれ、衝撃に耐えきれずに次々倒壊しちゃう。
同心円状に家屋が粉砕されていく様子は見ていてなかなか面白かったものの、
気がつけば、あまりに威力が高すぎたみたいで三歩以内の範囲の住宅はほとんど全滅していた。
さすがにこのやり方では遊び道具が一気に減っちゃうので、とりあえずはこれぐらいにして、
瓦礫の山の上を踏み締めながら進み、また無事な住宅地の上をてくてく歩いていく。
何も特別なことをしなくても一歩歩くごとに爪先の下敷きになり、ヒールに地面ごと抉られていく数十から百余りの住宅。
あまりに小さすぎるため、生意気にも土踏まずの下で潰されずに助かっていた十数戸の家屋も、
足を踏み出す時にわざと後ろに少し引いてから前に持ち上げれば、残らずすり潰れていった。

そうこうして住宅地を歩き回っていると、近くにいた十人ほどの小人たちが小学校に逃げ込んでいくのがふと目に入る。
だいぶゆっくり進んでいるつもりだったけど、そうは言っても私の何気ない一歩は一生懸命走っている彼らの数百歩分。
もはや振り切れないと悟って、少しは頑丈そうな建物の中にでも隠れてやり過ごそうという魂胆かしら。
でも、私はそう甘くはない。せっかくの忠告を無視したお馬鹿さんにはちょっと痛い目に遭ってもらおう。

「あら、そんなところに逃げて大丈夫? ほらほらぁ、建物ごと踏み潰しちゃうわよ」

早速学校に歩み寄って楽しげに爪先で校舎を突き、外壁の一部を軽く崩してやれば、慌てて校庭に飛び出てくる小人たち。
それを見届けてから彼らのすぐ側で三棟の校舎をまとめて一踏みでグシャッと潰し、
ついでに爪先を地面に突き立てたまま足をすり動かして体育館とプールも倒壊させ、
とどめに、あまりの迫力だったのか腰を抜かしちゃった彼らの真上にもブーツをかざしていく。

「踏み潰そうかしら、どうしようかしら?」

にやにや笑いながらそう言い、人差し指を口元に当てちょっと考えたふりをしてみたり。
それから、ずん、とブーツを下ろして校庭に突き刺さしたところでゆっくりと上げてみれば、
土踏まずの下で辛うじて難を逃れた小人たちは半分ほどが泡を吹いて気絶してしまっていた。
もっとも、ちゃんと狙いをつけて踏み潰さないようにはしたので、動作の前後で無事人数に変わりはなかったけど。

「ふふん、これに懲りたら次からは私の言うことに素直に従いなさいね。
それと、無事に生き残りたいならしばらくここから動かないこと。いい?」

人差し指を立て、優しく諭してあげたらみんなぺこぺこしちゃって、ちょっと可愛い。
とまあ、そんなところでグラウンドだけが残った学校を後にすると、次第に密集してきた住宅地もサクサク踏み歩いていく。
団地のアパート群を一蹴りでまとめて粉砕し、大きな信用金庫を周辺の建物ごとヒールで踏み砕き潰し、
本屋やスーパー、ファミレスなどが立ち並ぶ通りもギュッと一踏みで土踏まずの部分まで押し潰し、
幼稚園や保育園、小中学校に高校も幾つと踏み潰し蹴り壊し…。

そして、広大な敷地に数十棟の施設が立ち並ぶ総合大学にも足を踏み入れると、
研究に没頭しすぎて逃げ遅れていた職員たちを校門付近で足踏みしたり建物を足で揺さぶったりして全員追い払ったところで
ブーツの側面を押しつけて何棟かの建物を一気に薙ぎ倒してから瓦礫さえ残さずゲシゲシ踏み砕いたり、
爪先を地面にすりつけながら動かして十数棟の建物を簡単に蹴散らしたり、細長い研究棟はヒールを叩きつけて爆砕したり。
最後は軽くジャンプして、残った建物も揃えた両足の下に踏み潰し、衝撃で粉砕したり倒壊させてやれば、
キャンパスは舞い上がった土砂や瓦礫で荒れ果て、無事な建物など一棟も残っていなかった。

「あははっ、見る影も無くなっちゃったわね」

少なくとも数千人がそこで学び、研究していたはずの立派な大学に侵攻してから、
小人たちが逃げる時間を含めてもわずか数分での惨状に、思わず爆心地で一人高笑いしてしまう。
これからは青空の下で講義でもやることね、なんて思いながらひとしきり笑ったところで、
さらに周辺の学生アパート群も、一部はさっき跳躍した衝撃で崩れ落ちていたものの構わず次々踏み潰して全滅させ、
それからまた住宅地を縦横無尽に進んで何百何千戸と踏み荒らし、何十何百棟と粉砕していく。

するとその途中、付近のとある一角で不審な動きをする二人組が目に留まった。
他の小人たちは一目散に逃げ回っているというのに、彼らだけはまだ逃げようとはせず、
しきりにこちらの様子を窺いながら何か住宅の周りでゴソゴソしている。

「…そこで何をしているのかしら?」

ちょっと怪訝に思い、二歩で歩み寄ってしゃがみ込みながら詰問してみると、
じりじり後退しつつ怪しさ全開に大慌てで否定する小人たち。

「い、いえ、何も! 何も悪い事なんかしてません!」
「へぇ、本当に? …ま、どうせ火事場泥棒でもしてたんでしょ」

家財道具を満載した軽トラックが近くにあること、また目的もはっきり答えられていないことから、
当て推量にそう言ってずいっと顔を近づければ、恐れをなしたのか彼らは正直に白状した。

「ひ…ひぃ、その通りでございます! 盗ったものはきちんと返しますから、どうかお見逃しを…」
「…別に返す返さないなんてことはどうでもいいのよね。どうせ住宅ごと踏み潰れるものだし。
でもね、小人のものは全部私のもの。だから、間接的にせよ私のものを盗んだことになるわよね?
ふふ、そんないけない小人がただで済むと思う? というわけで、たっぷりとお仕置きしてあげる」

ちょっと身勝手な理論だとは思いつつも、小人とはいえ犯罪を見逃すつもりはないので、
そう言い含めてくすくす笑い、ゆっくりと人差し指を泥棒たちに近づけていけば、
彼らは平伏するでもなく、そそくさと軽トラックに乗って逃げようとしたけど、そうはさせない。
まとめてちょいっと弾き飛ばして、まずは横転したトラックを散乱した荷物ごと指先ですり潰し、
続いて近くの路上に倒れ込んでいた一人も器用に押さえつけていく。

「た…たすけ…て…」
「大丈夫よ。死なない程度に虐めてあげるから」

もっとも、小人はあまりにちっちゃすぎて下手すれば潰れる恐れがあったので、
こっそりと魔法で身体を強化してあげつつ、爪で撫でたり突いたりして、
ついでに爪と指の間で器用にすくって持ち上げたところで吐息を吹きかけたり。
やがてぐんにゃりして悲鳴を上げられる気力も無くなったところでようやく開放し、
次に指数本分離れた路上に伸びていたもう一人にも指先を近づけようとしたところで、
ようやくふらふらと立ち上がってきたその小人は何を思ったか生意気にも口答えしてきた。

「な、なんで…こんな目に…。た、確かに俺達は悪事を働い…たが、あんたに比べ…うぼぁっ」

それをまた指先で地面に叩きつけてやる。小人の分際で何て言い草かしら。
自分の立場がよく分かってないみたい。気骨があるというか、頭が悪いというか。
ま、たまにはこんな小人がいてくれた方が遊び甲斐があって面白いけど。
そして、徹底的に弄んでそのプライドをズタズタにしてあげよう。

「言葉遣いは正しく。私のことはお嬢様と呼びなさい。
それと、私がこの街を壊すのは全然悪いことじゃないわ。だってこの国唯一絶対の統治者だもの。
だいたい、こんなに大きくて強い私がちっぽけで非力な小人の法律に縛られることの方がおかしいじゃない。
だから、私は何をしたって問題ないし、逆に小人たちは甘んじて受け止めるのが道理よ。
何なら今すぐにでもそういう法律を作ってあげようかしら?
一、私に絶対服従しなさい。一、私に逆らったら死刑。なんてね」

とりあえずは小人を指先で押さえつけながら言い聞かせ、ついでにぐりぐりと軽く捻ってやる。
さらに何度か爪でほんのちょっと弾き飛ばせば、まだ遊ぼうと思ったのに泡を吹いてぴくぴくしちゃっていたので、
最後に泥棒たちを一点に掻き集め、その周りの地面を指先で何重にも深く大きく削って逃げられないようにしてあげた。

「ふん、そこで死ぬまで反省してなさい」

動かない彼らに向かってそう言い捨て、それから立ち上がって一旦身体を伸ばしていく。
そしたまた住宅地を突き進んでさらに何千と建物を踏み潰し蹴り壊し、飛び跳ねて粉砕し、
大きな川沿いに立ち並んでいたマンション群も次々薙ぎ倒して川に落としちゃう。
後は川に架かっていた何本かの長い橋もブーツの爪先だけで踏み潰したり、撫でるように突き崩したり、
真ん中だけ突いて寸断したりしたところで川も楽々一跨ぎし、対岸に足を踏み入れれば、
高層ビルが数多く立ち並ぶオフィス街まではすぐだった。

 * * * * *

両手を腰に当て、左足で学校を、右足で放送局を周辺の建物ごと丸々踏み締めながら、
高層ビルが連なるオフィス街の前に仁王立ちしたところでちょっと考え事をする。
最近ひょんなことから知ったのだけど、いわゆる女王様、というのは確かこのようなものだったかしら。
本来の意味だと柄じゃないし、それらしいことをまだ一つもやってはいないけど、
こっちの女王様なら、さすがに鞭は持っていないものの服装と言いやり方と言い今の私に合致しているかも、
なんて思いながら高層ビル群の上にブーツをかざし、ゆっくりと下ろしていく。

「ほら、私に踏んでもらえるなんて、ありがたく思いなさいよ」

冷笑を浮かべながら言い放って、ブーツをほとんど体重もかけなけないで乗せれば、
高層ビル群は屋上設備が潰れながらも辛うじてブーツを支えているみたいだったけど、
擦りつけるみたいにゆっくりと足を動かせば高層階がボロボロ削れ落ちていき、
ぐりっと足を捻り動かせば何棟かのビルが容易く捻じ壊れちゃう。
さらに残りの建物もほんの少しずつ体重を加えていけば、
高いものから順に粉塵を撒き散らしながら圧縮されるように倒壊させていき、
やがてブーツは建物の瓦礫さえ残らず平たくしながら地面に沈み込んでしまった。

「あはは。高層ビルがたくさん集まってもこの程度なんて、脆すぎね」

足を軽く上げて、全てが潰れきった靴跡を眺めての率直な感想。
欲を言えば、幾ら踵程度の高さでブーツのヒール部分ほどの大きさもないとはいえ、
一応、小人たちが年単位でちまちま頑張って造り上げた高層建築で、しかもそれが幾つも集まっているのだから、
もうちょっと頑丈…というか踏み応えがあってもよかったのに。
まあ、この世界のあらゆるモノが柔なのは今に始まった話ではないし、
感触が少なくても立派な建物が私の一挙一動で跡形も無くなるというのは見ているだけでも楽しいので、
早速次の標的にする場所を定めると、高層ホテルを丸々押し潰しながらヒールを地面に着け、
それから下に傾けていった爪先で十数棟の高層ビルを押し倒した上に踏み砕いたり。
周囲の雑多な建物を踏み散らしながら両足の間に超高層ビルを挟んだところでギュッと一気に締めつけ、
地下階から小人感覚でだいたい地上百数十メートルの屋上までほぼ同時に木端微塵に粉砕したり。
別な超高層ビルも爪先を擦りつけてガラスの壁面をガリガリ削りながら
一階から三十階程度の最上階まで崩壊しない程度に『優しく』撫でたところで、
つんと蹴り倒して幾つかの建物の上に崩し落としちゃう。

「ふふ、小人の建物はみんな砂のお城みたいで、ほんといいおもちゃだわ」

それらをまとめてぐりぐり踏み潰したところで今度はしゃがみ込むと、
低層の雑居ビルを手指の間でくしゃっと挟み潰し、指先でつんつん突き潰してみる。
また、古びた住宅や商店の立ち並ぶ地区を指先でつぅっと撫でて一度に何十と建物をすり潰したり、
指先で弾いて十数棟の住宅やアパートを跡形もなくボシュッと粉砕したり。
さらには手のひらを押しつけて地面に手形を残しつつ百棟ほどをまとめて解体したりもした。

「これで再開発しやすくなったでしょ。もっとも、どうせこの街は滅びちゃうんだから、その必要はないかもしれないけどね」

くすくす笑いながらそう言い、とどめに五本の指を地面に立てて掻き回せば
ものの数秒で住宅地はズタズタに刻まれ完全に壊滅っと。

それからすぐ足元にあった二棟の高層マンションにも手を伸ばすと、
まとめて軽く握ったところで手首を軽く捻って根元から折りながら掴み上げていく。
そして顔の前まで持っていったところで口元に笑みを湛えながら一気に握り潰し、
ゆっくりと手を開けば、圧縮された細かな瓦礫が街並みの上にパラパラ舞い落ちていった。
続いて二十階ほどの高さの円形のオフィスビルも指先でつぅっと撫でてから、口をすぼめて吐息を吹きかけてみる。

「ふふ。まさかこの程度で倒れてしまわないでしょうね」

一応倒れない程度に加減してあげたものの、それでも周囲の小さな建物などは幾つも吹き飛んだりして、
オフィスビル自体も窓ガラスがみんな吹き散り、外壁も幾分剥げ落ちてしまう。
そんな建物に追い討ちをかけるようにギュッと握り締めようとしてよく見ると、
指で作った輪から上層階の一部がひょっこりと顔を覗かせていた。

「なんだか本で見たアレみたい…。確かこれを弄ると男性は興奮するのよね。
んー、そう考えるとちょっと恥ずかしいけど…こんなのはどう?」

不意に思いついたことをぽつりと言って少し顔を赤らめつつ、円形の建物を優しく扱いていき、
外壁のほとんど全てと内装の一部もぐりぐり削り落として丸裸にしたところで
中指に力を込めてパキッと真ん中から折って、上層と下層に分かれた建物を順々に握り潰せば、
オフィスビルは満足な残骸さえほとんど残らず消滅していった。

「あはは、ばっかみたい。本物もこれくらい脆かったら大変よね」

我ながら変な想像をしてしまったことを自嘲しつつ、
手についた瓦礫を払い落すようにパンパンと両手を叩き合わせ、
それからまた何か良さそうなものを求めて辺りを見回してみる。

「さてと、次は…っと、ちょっと面白そうなものがあるじゃない」

すると、目に留まったのはこの街で恐らく一番の高さがありそうな超高層ビル。
ちっちゃいながらも天に伸びるような立派な外観をしたその中には何十人かの小人の気配も感じられる。
きっと、展望室などから高みの見物をするつもりが、私がオフィス街を破壊していく光景を目の当たりにして
恐怖のあまり逃げるに逃げられなくなった、といったところかしら。ほんと、小人は頭が悪いんだから。
まあ、そうは言っても下手に逃げ回って足元をうろちょろされるよりはマシだし、
これだけまとまった数がいるのだから、ちょっとお遊びに付き合ってもらおう。
というわけで、ひとまずそれぞれ十数棟のビルを勢いよく粉砕しながら膝を突き、
ついでに低層の建物が立ち並んでいた一つの街区を丸々叩き潰しながら手のひらも突いて身体を前に倒すと、
少し離れていた超高層ビルに一歩も足を動かすことなく手を伸ばして地下部分を抉りながら丁寧に摘まみ取る。
そしてまた元のしゃがんだ体勢に戻ってから、建物をそっと手のひらの上に置き、中を覗き見。
すると、ガラスの向こうでは小人たちが震えながらすがるような眼で私を見ていた。

「ふふ、そんなに怯えなくても大丈夫よ。たっぷりと可愛がってあげるから。
…そうね、まずは手のひらに降りてきなさい。早くしないと建物ごとすり潰しちゃうわよ」

そんな彼らを安心させるように微笑みかけ、それから指先をかざしてそう言ってやれば、大慌てで走り回る小人たち。
当然ながらエレベーターは止まっているので、恐らく千段近くの階段を必死に駆け下りていくことになるけど、
途中で息をつかせないように、そのタイミングに合わせて建物を上からゆっくりと指の間にすり潰していけば、
転げ落ちるように小人たちが全員脱出し終わった時には超高層ビルはほとんど跡形もなくなっていた。

「はい、よくできましたー。ご褒美に私の指先に触れさせてあげるわ」

締めにエントランス付近も粉々に砕き、指に付いた瓦礫をふっと吐息で吹き散らしてから、
息も絶え絶えの小人たちの上に人差し指をかざしてちょこんと彼らの乗る手のひらの上に置けば、
何人かは指示通り指の周りに集まってきたものの、多くは疲れて動けないのか、あるいは警戒しているのか近づこうとしない。

「何よ、人の好意も素直に受け取れないの。そんないけない小人たちはこうしてあげようかしら」

でも、ちょっと不機嫌そうに言って手のひらをゆっくりと傾けていけば、
地面に落とされるかと思ったのか、小人たちはみんな慌てて指先に飛びついてきた。
そんな彼らをぶら下げながら人差し指を持ち上げてみたり、優しく撫でてあげたり。

「よしよし、いい子たちね。…さてと、次は忠誠のほどを見せてもらおうかしら。
んーと、もちろんこれくらいのことは胸を張って言えるわよね。
お嬢様は唯一絶対の統治者で、美しく偉大な方です。はい、復唱」
「…ボソボソ」
「ちょっと全然聞こえないんだけど。もっと大きな声で」
「お、お嬢様は唯一絶対の統治者で…美しく偉大な方ですっ!」
「よろしい♪ それじゃ、少しは楽しませてもらったし、そろそろ地上に戻してあげるわね」

こうして小人との戯れに満足したところで、彼らを乗せた手を住宅地の跡地に置き、
段差がないようやや地面に沈み込ませてやれば、小人たちは何度もお辞儀しながら恐る恐る地面に降りていった。

「ふふ、すっかり従順になっちゃって。ほんと可愛いんだから」

そんな彼らの動作を微笑ましく見届けながらぽつりと呟き、それからまたゆっくりと立ち上がると、
先程の超高層ビルが立っていた辺りの高層ビル群をグシャグシャに踏み砕き、蹴散らしていく…

 * * * * *

さらに幾つもの建物を破壊し弄んだところで、いい加減ブーツで歩きっぱなしなのも疲れたので、
まず左足のブーツから靴紐を解いて脱ぐと、近くにあったその四分の一ほどの高さの高層ビルに立てかけてみる。
でも、ガラス面が比較的少なく頑丈に見えた建物も、ほとんど重みに耐えられず瞬く間に崩れ落ち、
そのまま横倒しになったブーツの下敷きになってさらに数十棟の建物も押し潰れちゃった。

「たかがブーツ一つも支えられないなんて、だらしないわね」

くすくす笑いながら、ニーソックスに包まれた左足をゆっくりと街並みの上に置き、
続いて右足のブーツも脱ぐと今度はそれを陸上競技場の上にまっすぐ置いていく。
すると、観客席の一部などが下敷きになって潰れたものの、ブーツは倒れることなく直立した。
街の中心部に周囲と隔絶しながら黒々とそびえる、大抵の超高層ビルよりもずっと高く大きなロングブーツ。
なんて奇妙で滑稽な光景かしら。きっと小人から見ればとても恐ろしく見えるのかもしれない。
そんなものを私は今まで普通に履きながら歩き回ってきたわけだけど。

「ふふ、これをこのままずっと置いていけば、小人たちはいつでも私の偉大さを仰ぎ見ることが出来るわね。
ま、それはそれで面白そうだけど、もうすぐ滅ぶ街にあってもしょうがないし」

もちろんどこか別の街にブーツだけを置きに寄ろうかと一瞬考えなくもなかったものの、
何にせよ片足だけ履いて帰るのは不格好だし、風雨で中まで汚れちゃいそうだから止めておく。
とまあ、そんなこんなで両足ともブーツを脱いで解放感というか涼しさを感じながら、
ニーソックス越しに雑多な街並みをぺたぺた踏み締めたところで軽くしゃがみ、
そのまま一休みしようと高層マンションが立ち並ぶ辺りに体育座りしてみる。

「ん…ちょっとくすぐったい」

スカートを下に敷かないよう後ろに広げながら座り込んだので、
何十何百もの建物が直にくしゃくしゃ潰れていくのを感じ取りながら、
ぴったりと地面にお尻をつければ、いっぱいの日差しを浴びて程よく温まった大地が少し心地いい。
それからお尻をちょっと動かして僅かに残っていた残骸をすり潰しつつしっかり体重を預けたところで、
おもむろにニーソックスに包まれた脚をまだ無事だった高層ビル群に伸ばしていく。
そしてまずは何棟かの高層ビルをまとめて少し蒸れた足で撫でてみたり。

「ぐりぐり~♪」

楽しそうに言って足裏を擦りつければ、瞬く間にボロボロと崩落する建物たち。
そのまま足を倒してぺたんと地面に着けたら瓦礫も残らず潰れていった。
ついでにすぐ側のコンサートホールも周辺の駐車場や公園ごと爪先でぐりぐり捻り潰してから、
伸ばしていた脚を引く際に踵を地面に擦りつけていけば、その進路上にあった数百の建物も瞬く間に消滅。
代わりに小人感覚で片道四車線の道路よりもずっと幅広な溝が数百メートルに渡って抉られちゃう。
それから今度は反対の足を伸ばすと、洒落た高層ホテルに踵落としをして粉砕してみたり。
続いて両足を伸ばすと、まだ残っていた超高層ビルを両足裏の間でギュっと挟み込んで、
ニーソックス越しに足指で匂いを擦りつけるようにゆっくりと撫で回してから、揉みくしゃにしてみたり。

「どう、女の子の足に弄ばれるのは? 悔しい? それとも嬉しい?」

くすくす嘲笑いつつ、さらに足裏をよくすり合わせれば僅かな瓦礫さえ残らず粉微塵に。
何だか楽しかったので他にも何棟かの高層ビルを間に挟んでまとめて一気に圧縮したり、
数十棟と立ち並んでいた低層の雑居ビル群も地面ごと一気に両足で掻き寄せて粉砕したり。
そうこうしてすぐ前方のビルがほぼ全滅したところで、足や手で踏ん張りながらお尻をずりずり動かして
粉々になったそれらの残骸をさらに地面深くへと押し固めながら少し前に進むと、
街の中心駅近くの留置線に停まっていた何編成かの電車も爪先でちょいっと突いてまとめて横倒しにしてみる。
そして追い討ちをかけるように横転した電車をまずは一編成、線路下から足指で軽々持ち上げちゃう。

「ふふ、まるで細長い芋虫みたいね」

足の先にぶらぶら引っかかっている電車が何とも哀れで可笑しい。
これで小人がたくさん乗っていたらもっと悪戯し甲斐があって面白いのにと思うも、
まあ、この前に乗客が結構いた電車をたっぷりと遊んであげたことだし、それで我慢しておく。
さすがに今みたいに乱暴に扱ったら死傷者もいっぱい出てしまいそうだし。
とりあえず、いつまでも無人の車両を足指に乗せているのもあれなので、
そのまま足をくいっと動かせば電車はいとも簡単にやや離れた住宅街へと飛んでいって、
整然と立ち並んでいた何十戸かの住宅を巻き込みながら落下し、大破しちゃった。
さらに残った電車も爪先でぐりぐりすり潰したり、押し潰したりすれば、
留置線に停まっていた電車はあっという間にぺちゃんこになって全滅っと。

それから今度は足だけでなく手も使ってみようと、座りながら手近な建物に手指を伸ばすと、
コンビニのように小さな物は摘まみ上げるまでもなくその場でぷちっと指先で潰し、
高層建築は顔の前まで摘み取ったところで指をすり合わせて粉々に潰していく。
でも、次第に面倒になってビルをぽいぽい摘まんでは適当に投げ捨てたり、一つの街区を丸ごと鷲掴みして粉砕したり、
さらには街並みをなでなでして大小数百の建物を一気に倒壊させ押し潰していったり。

「あはは、ほんと小人の街はいい遊び道具だわ」

そうこうして近くの建物がほとんど全滅したところでまた少し前に這い寄って女の子座りすると、
今度は脚をゆっくりと閉じていって中心駅や駅前通りに連なる高層ビルを太ももの間に挟み込んでいく。
ここでもやはり逃げ遅れたのか、駅の中にはまだ十人ほどの小人の気配があったけど、構わず脚を閉じていけば、
両側から次々と建物が高さや大きさに関係なく太ももに押し倒され、すり潰されて消えていき、
次第に駅ビルやホームも両端からだんだんと抉れ始めちゃう。

「ほらほらぁ、早く逃げないと太ももに挟まれちゃうわよ?」

一応、ちゃんと逃げられるように凄くゆっくり締めつけていけば、
やや時間を置いて何人かは向こう側の出口から必死に駆け出していったものの、
残りは外の様子がよく分からなかったのか、あるいは頭が悪かったのか知らないけど、
立て続けに手前の出口へとやって来てしまった。

「ちょっと、こっちに来てどうするのよ…。はぁ、しょうがないわね」

こちら側は三方を完全に私の身体に囲まれているから逃げられるはずもなく。
ぺたりとお尻を地面に着けて座りこんでいても、太ももはこの辺りのどの建物より高くそびえちゃっているし。
とまあ少し呆れてしまうも、また反対側に追いやるのも余計な時間がかかって興醒めなので、
こうなったら慌てふためいている彼らを駅前広場ごと掬い取ってどこか別な場所に移そうとするも、
何を思ったか、その内の一人が突然私の方に向かって全速力で駆けてきた。
一見、爽やかそうな青年の小人。狙いは駅前通りのどこか…ではなく、スカートの中――?
…そう言えば、とても凄く今更だけど、これだけ大きければ特にスカートが短くなくても
普通に歩いているだけで今日はもちろんこの前も小人の街からショーツが丸見えだったわけで…。

「……! もう、えっちな小人はこうしてあげるんだからっ」

さっきまでは何ともなかったのに、意識し始めると急に気恥ずかしくなって、
どうせ見ているのは小人なんだからと平然を装うとしても、顔がみるみる紅潮していくのを感じちゃう。
とりあえず片手をそっと添えてスカートを股に挟み込むようにして隠しつつ、
走り寄ってきた小人も反対の手の指先で軽く突いて転倒させたところで、
カリッと削り取った地面ごと摘まみ上げて顔の前に持っていく。

「…さあて、どんなお仕置きをしてあげようかしら。そうね、食べちゃうのはどう?」

もちろんそのつもりは全然なかったけど、脅すつもりでそう言ってやると、
どういう訳かその小人は凄く嬉しそうな表情を浮かべてしまった。

「よ、喜んで! お嬢様の一部になれるなんて夢みたいだ…!」
「ちょ、ちょっと、そんなこと本当にするわけないでしょ! まったく、この小人ときたら…」

想定外の反応に慌てて否定するも、小人は目をきらきら輝かせて待ち望んでくる。
純真というか何というか…。心底呆れ果てながら、仕方なくあれこれ他のお仕置きも考えてみるも、
どれもこの変態な小人を喜ばせてしまいそうな予感がしたので、代わりに別な方法をとることにした。

「あーもー、しょうがないわね。これでしばらく眠ってなさい」

そう言ってピンと伸ばした人差し指を近づけ、睡眠魔法をかけて昏睡させてやる。
すると瞬く間に倒れ込む小人。これで半日はどんなに揺さぶられても目が覚めないはず。
どうせ何をしても喜ぶのだったら、黙って寝てもらうのが一番だもの。
もちろん処分する手もあったけど、変態とはいえそんなに悪い小人じゃなさそうだし、
何よりちっちゃいとはいえ人間を殺めることはあまりしたくないから。
ともかく、熟睡中の小人は先程更地にした場所に地面ごとそっと置いてやった。

そうこうしていたら、他の小人たちはいつの間にか駅の向こうに逃げだしていた。
ちょっかいを出せなくて少し残念に思うも、わざわざ移動させる手間が省けたというもの。
それに、またしても変態がいたらさすがに嫌になっちゃうところだったし。
ともかく、これで小人は全員いなくなったので、気を取り直してまた駅周辺を挟み込んでいく。
太ももに押し退けられ、地面ごと抉り取られて瓦礫の一片も残さずすり潰れていく数百の建物。
さらに脚を閉じていけば、やがて駅も停泊中の二編成の電車ごと構内のほとんどが姿を消し、
駅隣りの高層ホテルを含む百余りの建物だけが辛うじて一部の原型を留めながら両太ももに締めつけられちゃった。
それさえも太ももをゆっくりとすり合わせていけば、みんな弾け、粉微塵になって跡形もなく消滅する。

「ん…ちょっとはしたないけど、なかなか気持ちいいじゃない」

太ももの間で建物がくしゃくしゃ潰れていく感触は何とも楽しく、癖になってしまいそう。
つい、もう一度味わおうと駅の先にあるマンション群にもにじり寄ると、
それらをまとめて太ももの間に囲ったところで一気に挟み込み、粉々にすり潰す。

「あはっ、快感♪」

ちょっと敏感な太ももがくすぐったいように刺激されて、思わずうっとりした表情で呟きながら、
残骸の一片も残さないようにじっくりと太ももをすり合わせて余韻をたっぷり楽しんでいく。
それからお尻や太もも、ニーソックスに付いた瓦礫や土砂を払い落しつつ立ち上げると、
とりあえずニーソックス越しに雑多な街並みをずんずん踏み締めてみる。
すると、足裏に伝わってくるのはブーツとはまた違った感触。より建物がぷちぷち潰れていくのがはっきり分かるというか。
ニーソックスの足裏部分が段々と土色に汚れてしまうのが難点だけど、これはこれで結構楽しいかも。

「さあて、またこの街をどんどん踏み潰しちゃうわよー」

たっぷりの笑顔で街のまだ無事な地区に向かってそう宣言すると、早速さらにふみふみしていったり。
数千の家屋やマンション、店舗などが建て込んでいた住宅地を踏み均すように歩いて
その大半を直接あるいは歩行の際の衝撃で間接的に粉砕していき、
野球場を含む運動公園も両足を乗せて何度か足踏みすればあっという間に消滅。
また、近くを走っていた高速道路もジャンクションの辺りをまるっと踏みつけて寸断してから、
中小百余りの工場が立ち並んでいた工業団地の上を、足裏をぐりぐり擦りつけるようにして歩いてみたり、
高層ビルの上に足を乗せて、足裏で建物の感触を確かめながらゆっくりと足裏を押しつけて周辺の建物ごと踏み潰していったり。
紅白の煙突が幾つも立っている大きな工場は敷地に石油タンクが幾つもあったりして
直接踏みつけるとニーソックスが結構汚れてしまいそうだったので、
爪先を周辺の住宅地に突き刺して掻き出した家屋混じりの大量の土砂で埋めていったり…

 * * * * *

そうこうしてニーソックスでもこの街の上をだいぶ歩き回ったところで、
少しさっぱりしようと瓦礫や土砂で薄汚れたそれを踏み逃れていた住宅地の上にぽいっと脱ぎ捨てていく。
すると、たかだかニーソックス一つの重みに耐えきれず、押し潰れていく百余りの家屋。

「ほんとどうしようもない脆さね」

その様子を見てくすくす笑いながらもう片足のニーソックスもするりと脱ぎ、
今度は学校の上に落として校舎や体育館を崩落させながら両足とも裸足になる。
そしてとりあえずはすぐ側の河口に入り、たくさん動いたことでちょっと汗に湿っていた足をちゃぷちゃぷ洗っていく。
元々大きな川の河口だけあって広さは申し分なかったものの、水深がほとんどないのが少し残念。
もっとも、小人にとってはこれでも大きな船が泊まれるくらい十分な深さなのかもしれないけど。
まあ、足を踏み下ろすだけでも川底がぐっと沈み込むから、幾分かマシかもしれない。
一応、『女王様』らしく素足を小人たちに舐めさせてあげる方法も頭の片隅にはあったけど、
そこまではあまりしたくないし、もう付近には小人も満足に残っていないし、
何よりさっきみたいな変態がいたら嫌なので、やめておいた。

「ふぅ、気持ちいい。…あら、こんなものがいたのね」

程よく冷たい水に足を浸しながら、ふと足元付近にぷかぷか浮かぶ作業船を見て、芽生える悪戯心。
そしてにやっと笑うと、爪先でちょいちょい突いて転覆したところを踏み潰して川底に沈めちゃう。
また、埠頭に停泊していた十数隻の小さな作業船の上に足をかざして、ぽたぽた滴り落ちる水滴で次々沈没させ、
数隻のタグボートも爪先で軽く蹴り上げて粉砕したり、足指の腹で掴み潰したり。
川岸に係留されていた多数のヨットもまとめて一踏みで川底に押しつけ、
とどめに旅客ターミナルを軽く蹴り崩してその瓦礫で遊覧船も撃沈していく。

「あはは、小人の船も私にとってはただの壊れやすいおもちゃね」

こうして足を洗いつつ小船を全滅させたところで残った建物も殲滅しようと一旦陸地に上がると、
まずは埠頭に幾つも立ち並ぶ倉庫群をゆっくりと素足を乗せてパキパキ踏み潰してみる。
その際、足の裏で直に建物が潰れるのがちょっとくすぐったく気持ちよかったので、
もっと踏みつけちゃおうと素足のまま建造中のタンカーごと造船所を両足で何度も踏み躙ったり、
ぺたぺた足跡をつけながらまだ破壊を免れていた住宅地の上を歩き回ったり、
僅かに残っていた高層ビルも足指の間に挟み込んでギュっとすり潰したり。


そうこうすれば街はいよいよ壊滅。後はもう一度河口に入って足裏にこびり付いた瓦礫や土砂などの汚れを丁寧に洗い落とし、
近くに脱ぎ捨てていたニーソックスと、片方が廃墟の中心でぽつんとそびえていたブーツを拾って履き直したところで辺りを見渡すと、
少し前までたくさんの建物が立ち並んでいた街の大半は足跡や瓦礫の山に取って代わってしまっていた。
内実はともかく、一見無事な建物も郊外にはまだ幾らか残ってはいるものの、
中心部が無残な姿を曝け出し、中心駅周辺は完全に消滅、港も足跡に取って代わり、
超高層ビルはおろか高層建築物さえ満足に残っていないこの街はもはや壊滅したと言ってよさそう。
どうせなら締めに魔法で完全に消滅させてあげた方がすっきりして良いかもしれないけど、
崩壊した街並みに取り残された小人もそれなりにいることだし、さすがにやりすぎかなと思ってやめておく。
まあ、こうして破壊の爪痕が痛々しいほど残っていた方が見せしめになっていいかもしれないし。

「ふふ、今日はとっても楽しかったわよ。ありがとね」

最後はにっこりと笑顔でお礼を言い、大きく伸びをして体をほぐしていく。
そして心身ともにすっきりしたところで転移呪文を唱え、かつて街だった場所を後にしていった。

 

 

こうして一つの街が数時間足らずで滅んでしまったのであった…


つづく

 

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