白い悪魔

~~あらすじ~~

 初夏のある日。八神 葵は学校帰りに神社のそばを歩いていると、ふと御殿から自分を呼ぶような声が聞こえてきた。
声に誘われるまま建物に上がると、そこに鎮座されていたのは七色に妖しく輝く鏡。
それはかつてこの一帯に恐ろしい災厄をもたらした禍津神の御神体であった。
当時は陰陽師たちの活躍と、禍津神に蓄積された怨念や憎悪といった闇の力が発散されることで辛くも鏡に封印し、
その後この地に禍津神の封印と怒りを鎮めることを目的にした神社が建てられたのだった。
だが、月日が経つにつれ惨劇もいつしか忘れられ、厳重なはずだった封印も少しずつ緩んでいく。
そして現代。もはや参詣する者もほとんどおらず、神主もいない無人の神社で
より多くの負の感情を吸収していくことで途方もなく膨れ上がった闇は
緩んだ結界から力を漏れ出し、自らの器になるべき人間を探し求めていた。
そして見つけたのが八神 葵。何の因果か、かつて自身を封印した一族の末裔で、
穢れのない純粋な心を持った少女だったが、それは一度闇に染まれば強大な力をもたらすことを意味していた。
取り憑かれたように、声に従って緩んだ封印を順々に解いていく葵。
鏡を雁字搦めに縛っていた最後にして最大の封印もついに破ってしまう。
その瞬間、鏡から膨大な光が彼女の身体の中へと入っていった…

 間もなくして、全てが崩壊し、失われ、静寂が訪れた街に一人佇む葵。
彼女は周囲の風景と全く調和してなかった。いや、調和するはずもなかった。
長い年月をかけて膨れ上がった闇の器となるために、葵は信じられないほど巨大になったのだ。
そしてその巨体で自分の住んでいた街を欲望のままに破壊し尽くしていった。
すでに街は完全に廃墟と化し、数万人が惨劇の犠牲となっていたが、
葵は悪びれた様子もなく、むしろ口元に笑みを浮かべ、楽しそうな表情をしている。
だが、街を一つ滅ぼしてもまだ飽き足りない葵はさらなる破壊と殺戮を求め、
灰燼に帰した街を踏み締め、蹴散らしながら隣接する都市へと向かっていった…

 

 百倍サイズとなった葵は、逃げ惑う小人たちを踏み潰しながら都市へと歩みを進めた。
そして市の境である小川を跨いで一旦立ち止まると、遙かな高みから街全体を見渡す。
葵は巨大化する前に何度かこの街に来てはいたが、その全容を見るのは初めてであった。
「うわぁ…大きな街。わたしはこれもみんな壊しちゃうんだ」
葵は呟きながらもつい興奮してしまう。そう、この街すべてが葵のおもちゃなのだ。
立ち並ぶ高層ビル、カタコト走る電車、車で溢れる大通り、建物がびっしり詰まった住宅街…。
どれもこれも楽しめそうだが、葵はもっとよく観察するために市街へと進んでいく。
この時、彼女が何気なく歩くだけで足元では大惨事が繰り広げられていた。
ニーソックスに包まれた足に、固いはずのアスファルトの地面はあっさり踏み砕かれ、
歩道橋は真ん中から蹴り飛ばされ、電線はブチブチと切断され、信号機は触れただけで弾き飛ばされる。
逃げ惑う群衆はさも当然のように踏み潰され、自動車もまとめてぺしゃんこに潰されてしまう。
恐ろしいまでの惨状。さらに葵のあどけなく、可愛らしい顔がよりいっそう人々の恐怖を煽っていた。
傍から見れば、白いワンピースのセーラー服に、純白のニーソックス姿の葵は
清楚さが感じられ、可愛らしい姿と相まってまるで天使のようであったが、
やっていることは残忍非情で、白い悪魔という言葉がぴったりであった。
そんな葵はあっという間に郊外の住宅街に侵攻すると、立ち止まってみる。
「んと、まずはどれから壊そうかな」
口元に指をあて、品定めをする葵。その表情はとても楽しそうだ。
考えること数秒、葵はたくさんある『おもちゃ』の中から学校を選んだ。
その学校は巨大少女から避難しようと集まった多くの群衆で溢れており、
グラウンドは勿論のこと、校舎や体育館の中も人でごった返していたが、
彼女は住宅街を踏み潰しながら、無情にも校庭へと足を踏み入れた。
それは圧倒的な質感を持っていた。巨大少女を目の前にして人々は呆然と見上げれば、
多くの生命を奪ってきた、25mプールのように巨大な足裏が天高くに現れたのだ。
そしてそれは校門を瞬時に粉砕し、深い陥没をつくり、周囲を大きく震わした。
さらに、甘くかぐわしい香りが辺りに漂い、目を閉じていようが、俯こうが、
もはや人々は否が応でも巨大少女の存在を意識せざるを得なくなる。
観念して姿を拝めれば、目前にはわずかに赤い染みが付く、純白のニーソックス。
小さな建物であれば一踏みで楽々と潰せる大きさがあり、空高く伸びている。
その先にある絶対領域は柔らかそうな桃色の太ももが眩しい。
そして、ひらひらと舞うスカートに包まれた桃色のパンツ…。
残念ながら彼女の上半身は位置的に見ることができなかったが、
下半身だけでもこの世の全てに勝る絶景があった。
群衆が自身を見惚けていることなどお構いなしに、葵はまず体育館に襲い掛かった。
腰に手を当てながら片足を乗せてみると、何も力を加えていないのに屋根は陥没し、
そのまま少し体重を乗せただけで、足は屋根を簡単に突き破って体育館の中へと侵入していく。
そして、ニーソックスに包まれた足は中にいた大勢の人々を踏み躙り、床ごと地面に同化させた。
中からは絶叫が聞こえてくるが、葵は構わずもう片方の足も踏み入れ、内側から外壁をなぎ払っていく、
大きく抉られた体育館はやがて軋んでいき、葵が軽く足踏みをしたことで致命傷を受け、
大勢の小人たちを巻き込みながら、平べったく崩れ去ってしまった。
だが、この程度で満足する彼女ではない。葵はさらに残骸の上に足を擦り動かすことで、
屋根や鉄骨などに押し潰されながらも辛うじて生き残っていた者の根を止め、
元の姿もわからないほどグチャグチャにすり潰していったのだった。
次に葵は校舎を壊そうと、建物の中央付近に移動した。そして。
「えいっ」
可愛らしい声を上げながら、建物を土台から屋上まで一気に蹴り上げる。
ズドオオオオオオン…ガラガラ……
轟音。四階建ての校舎はまるで豆腐か何かで出来ているように脆かった。
大した抵抗もなく、ニーソックスは四つの教室を完全に粉砕して瓦礫を撒き散らし、
黒板や机、椅子、さらには中で怯え震えていた人々をも吹き飛ばしていく。
まるで大きな爆発があったかのような光景。あらゆるものが宙を舞う。
そしてわずかな滞空の後、それらはグラウンドにいた人々の頭上に降りかかった。
無論、当たったら大事だ。何とか瓦礫の雨を避けようと右往左往する彼ら。
だが、葵にとっては瓦礫などニーソックスに乗っかる埃程度の認識でしかない。
全く気にすることもなく、真っ二つに分断された校舎をさらに破壊していく。
片方は念入りに踏み固めて圧縮し、もう片方も踵落としを浴びせた上に蹴りつけて崩壊させ、
あっという間に何十教室とあった建物を中にいた人々ごと瓦礫の山と変えてしまった。
グラウンドにいた群衆は巨大少女によって瞬時に壊される学校を見、
さらには地面に突き刺さっている瓦礫やら何やらを間近で目の当たりにして
信じ難い現実に多くは腰を抜かし、地面にへたり込んでしまっていた。
そんな小人たちを見て、葵は天使のような微笑みを浮かべる。
「怯えちゃって可愛い♪ でも、すぐに楽にしてあげるね。わたしって優しいでしょ」
そして、悪魔のように平然と、無慈悲に彼らを踏み潰していく。
一歩、二歩、三歩。グラウンドを隅から隅まで踏み残しがないよう丁寧に。
防塵ネットや部室棟も容易く潰し、もはやグラウンドは足跡だらけになる。
それはまさに地獄であった。巨大少女が群衆を次々に踏み潰していったのだ。
足が降ろされた所は深さ5m程の陥没となり、多くの圧死体が地面にめり込んでしまっている。
ニーソックスを見ても、白地には赤い斑点が点在し、足裏はややピンクがかっている。
恐ろしいほどの大量虐殺。多い時は数十人が一足で潰され、肉塊となってしまう。
逃げようが、泣き叫ぼうが、誰もが平等に巨大少女の足下へと消えていく。
確かに一瞬で楽になることはできたが、わずか一分足らずの間に
グラウンドにいた数百人の人々は完全に死に絶えたのだった。
「あはっ。小人を潰すのってほんと楽しいね」
葵は誰もいなくなったグラウンドを見て満足そうに笑った。

 次に葵はクシャ、クシャッと家屋を潰しながら住宅街を蹂躙する。
「ふんふふ~ん」
時折鼻歌を交えながら、リラックスして縦横無尽に進む葵。
足元で巻き起こる惨状などお構いなしに、むしろ小気味よい音を楽しみ、
わずかに感じられる、建物が足裏で潰れる感触も味わいながら歩いていく。
そんな巨大少女を前に、木造家屋はおろか、鉄筋コンクリート製の建物も非力であった。
一瞬にして巨大なニーソックスに押しつけられ、砕かれ、潰されていく。
直撃を受けた建物などは完全に圧縮され、瓦礫すらも残らないほどだ。
住人も、天井から降臨してくる足裏に包まれ、視界が真っ白になって最期を迎える。
それは地下室にいても同じ事であった。天井の厚みなど彼女にとって無いに等しいのだ。
簡単に突き破られ、住民は身を屈める暇もなく踏み潰されて絶命する。
そんな大破壊があちこちで発生していく。平和な街は完全に地獄と化していた。
住宅街を踏み荒らしていく葵。特に意識せずとも一度に二、三軒の家屋を踏み潰し、粉砕する。
ふと足元を見れば、二階建ての木造家屋が爪先に抉られて半壊していた。
それを蹴飛ばすと、バラバラに吹き飛んだ破片が無傷の新興住宅街に降り注ぐ。
さすがにそれだけでは新築住宅は損傷しても倒壊することはなかったが、
近くの物を次々に蹴飛ばしていくと、車や屋根などの直撃を受けて住宅が壊れていく。
また、葵から逃げようとしていた人々も巻き込まれ、瓦礫の下敷きとなった。
「あはは、わざわざ潰すまでもないね」
葵は笑いながらもさらに近くの建物を蹴散らし、飛ばしていく。
大勢の人と車で溢れる幹線道路にも数多の物が爆撃さながらに落下し、そこにあるものを押し潰す。
そして爆発。瞬く間に道路は混乱に陥るばかりか、道路そのものも落下物や炎上する車などで塞がれ、通行不能になる。
障害物を前に、何とか乗り越えようとする人と引き返そうとする人がごった返し、人々はほとんど動けなくなってしまう。
そこに、数百メートル向こうにいたはずの巨大少女が早くも現れてしまった。
「ふふ、小人がいっぱい」
動くこともままならない群衆の真上に、無慈悲に足を振り落とす葵。
固まっているだけあって、一度に数十人がグチャグチャと潰れていく。
瞬く間におびただしい血の海と化す幹線道路。鮮血に染まる足裏。
一台残らず車も踏み潰された時には、もはや道路に動くものは何も存在してなかった。

 続いて葵は近くに駅があるのを見つけると、まっすぐそこに向かっていく。
彼女の通り道では一度に二、三軒の家屋が巨大なニーソックスに踏み潰され、
雑居アパートなどは丸ごと蹴り飛ばされ、空中分解してしまう。
マンションも真ん中から踏み潰されて真っ二つに寸断される。
葵はまるで砂利道を歩くかのように住宅街を破壊して、あっという間に駅へとたどり着いた。
その駅は郊外に位置していたため規模は小さかったが、ここにも巨大少女から逃げてきていた人々が大勢いた。
当然、多すぎる客が電車に乗り切れるはずもなく、まだホームには多くの客が残されていたが、
巨大少女の接近を受けて、すし詰め状態となった七両編成の電車が緊急発進する。
少しずつ加速していく電車。乗客たちはこれでようやく脱出できると思い少し安心する。
しかしそれも束の間、急に車両が停止したかと思うと、ぐいっと空中に持ち上げられてしまった。
葵は線路を挟み込むように膝立ちをして電車の先頭車両を掴んでいた。
ホームは大勢いた小人ごとニーソックスに包まれた脛にすり潰されていたが、そんなことはお構いなしだ。
「ふふ、つかまえた。このおもちゃ、どうしてあげようかな」
葵は可愛らしい声を出しながら、ブラブラと空中に浮いた車内を見つめる。
中では大勢の小人がガタガタと震えており、恐る恐る彼女を見上げていた。
だが、葵はそんな彼らを見てますます悪戯心が芽生えてしまう。
「この小人たちを生かすも殺すもわたし次第。へへ、なんだか神様みたい」
まさにその通りであった。もうすでに葵は何万もの人々の命を弄んでおり、
さらにここでも千を下らない大勢の人々の命を奪おうとしていていたのだ。
まず、葵は垂れ下がっていた後方の二両を太ももで挟み込む。
始めは優しく挟むが、次第に締め付けるように力を加えて圧縮していく。
ただでさえすし詰め状態の車内でますます身動きが取れなくなってしまう小人たち。
だが、断末魔の叫びは一瞬にして消えた。葵が電車を一気に挟み潰したのだ。
グチャッ!
何かが潰れたような、鈍く嫌な音が辺りに響き渡る。
巨大少女の太ももによって電車がいとも簡単に潰れてしまったのだ。
本来なら女の子らしくプニプニと柔らかいはずの太ももによって
後部二両は原型が何だかわからないほど変形した薄い鉄板に変えられていた。
「えへへ…潰れちゃった」
ぴったりと閉じた自分の太ももを見て微笑む葵。
それから、おもむろに太ももの間から鉄の塊を引きずり出して放り投げると、
今度は残った車両の方を大きくつぶらな瞳で見つめる。
「次はあなた達の番だよ。どうやって潰しちゃおうかな?」
葵がそう言うと、どの車両からも悲鳴や叫び声がより一層聞こえてくる。
しかし小人たちの絶叫をまるで無視するかのように彼女はにっこり笑みを浮かべると、
事もあろうに先頭車両をクシャッと一握りに潰してしまった。
支えを失い、地面に勢いよく落下し、激突する後ろ四両。
巨大少女が膝立ちしているとはいえ電車は数十メートル降下したが
車内には奇跡的に生き残っている人が少なからずいた。
彼らは悶え苦しみながら助けを求め、横転した車内から天を仰ぎ見る。
だが、急に空が暗くなったかと思うと白く巨大な物体が降下し、車両を覆う。
それが巨大少女のニーソックスだとわかったとき、彼らは電車と運命を共にした…
念入りに落下した車両を隅々までグリグリとすり潰す葵。
彼女は誰一人生かすつもりもなく、欲望のままに殺戮を行うのだ。
こうして葵は七両編成の電車全てを薄い鉄板へと変えてしまった。
「ふふ、楽しかったよ。ありがとね」
葵は小人達の亡骸にお礼を言うと、駅も完全に踏み固めてから、地響きを立てて中心部へと向かっていった…


 青葉市の中心部は混乱に陥っていた。道路は巨大少女から逃げようとする車で埋め尽くされて大渋滞となっており、
人々は当てもなくとにかくどこかへ逃げようと右往左往し、また交通機関に殺到し、
しかし交通機関は前代未聞の事態に対応できずにそのほとんどが麻痺していた。
そこに、あらゆるものを震わせる振動とともに巨大なニーソックスが現れ、
落下地点にあった全てを原形を留めないほど破壊し、押し潰していく。
まだ遠く離れていると思われた巨大少女が凄まじい速さで接近し、目前に現れたのだ。
小さな建物などは一蹴りで木っ端微塵にされ、道路を埋め尽くす車列も一瞬にして踏み潰される。
時には十数台もの車が巨大少女のたった一踏みでペシャンコになってしまう。
それは人々も同じであった。老若男女問わず、巨大少女の快楽のために命を弄ばれていく。
空高く蹴り上げられ、何十、何百メートルも飛ばされた挙句に建物や地面に激突して絶命する者。
直接踏みつけられて地下深くまで押し固められ、もはや誰だかもわからなくなる者。
落ちてきた瓦礫やら何やらに巻き込まれたり潰されたりする者も少なくなかった。
さっきまではそこら中にいた人や車があっという間に消えていく。
一方、葵は破壊と殺戮が楽しくてしょうがなかった。
ちっぽけな小人が住むちっぽけな街で何でも自分の思う通りにできる。
どれだけ街で暴れようが、誰も自分を止めることなどできない。
どれだけ街で遊ぼうが、誰も自分に逆らうこともできない。
だが、それだけではない。
「あはっ。もっと早く逃げないとみんな潰しちゃうよ」
葵がそう言っている間にも何十人、何百人の人が圧死体になっていく。
そう、誰も自分からは逃れることさえできなかったのだ。
普通に歩くだけで時速数百キロという驚異的な速さの前には
人々が全速力で走ろうが、自動車がどれだけスピードを出そうが、あっという間に追いつかれるのだ。
そして巨大ニーソックスによって、バスであろうがタクシーであろうが皆一様に踏み潰されていく。
数分もしない内に中心部の道路は彼女の足跡で埋め尽くされ、あらゆるものが原形を留めていなかった…

 葵は通りにいた小人や車をあらかた潰し終わると、次にビル群を壊し始めた。
まずは十二階建てのデパートに脚を突き刺すと、そのまま掻き回してガラガラと崩してしまう。
「くすっ。この程度で壊れちゃうなんて、小人の建物は脆すぎだね」
嘲笑いながら瓦礫の山を踏み締め、平たくして僅かな生存者も一人残らず潰していく。
地下食料売り場もニーソックスに踏み躙られ、さらには天井の崩落によって完全に埋もれてしまった。
続いて彼女は隣接する五階建ての複合施設をズン、ズンと何度も爪先を突き立て刺し崩し、
慌てて建物から逃げ出してきた小人たちも爪先でグリグリと抉り潰す。
とどめに施設を蹴り上げて、瓦礫や粉塵を飛び散らせながら粉砕すると、
今度は通りに面する建物の数々を片っ端から残さず踏み潰していく。
大小様々なビルを時にはまとめて一踏みで粉砕し、次の瞬間には隣のビルも足の下敷きにする。
あるビルは思いっきり踏みつけてみれば、その建物はもちろん、近隣の建物も衝撃で倒壊した。
こうして葵は通りの片側をあっという間に踏み潰し終えると、反対側もサクサク砕いていく。
十階建てのホテルは押し倒すように屋上の辺りを蹴りつけて勢い良く倒壊させ、
八階建てのオフィスビルは踵落としを食らわせて瞬時に粉砕する。
次々と破壊されていくビル群。震度七に耐えられる構造も、巨大少女相手には何の気休めにもならなかった。
そして、建物が一棟壊されるたびにおよそ数十人が破壊に巻き込まれて犠牲になっていく。
先程は道路にいたものばかりが狙われていたため、建物の中に逃れたり建物から出られずにいた多くの人々だが、
窓からの様子と、建造物が崩れる際の重々しい音で今度は巨大少女が建物を狙っていることがわかると、
彼らの多くはこのまま留まっても命の保証がないと悟り、意を決して屋外へと駆け出す。
だが、それを待っていたかのように頭上から振り下ろされる巨大なニーソックス。
巨大少女は片足をビルに突き刺しながら、もう片足を自由自在に動かし、
周囲数十メートルの建物からわらわらと出てくる人々を無慈悲にすり潰していったのだ。
たとえ運よくそれを逃れても、彼女が少し歩くだけで彼らはすぐに追いつかれてグチャリと潰されてしまう。
結局、誰も無事に建物から遠くに脱出することなどできなかった。
そんな中、幾人もの勇敢な警官はこの惨状に居た堪れず、市民の避難誘導や逃走を止めて巨大少女に立ち向かった。
彼らは巨大なニーソックスの前に立つと、ホルスターから拳銃を抜いて弾の限り発砲する。
しかし、必死の銃撃もニーソックスにほつれ一つ作ることもできずに全て弾かれてしまった。
まして巨大少女に傷を負わせることなど以ての外で、攻撃を気付いてもらうことさえできなかった。
そして、何事もなかったかのように警官たちの目の前でまた建物が押し潰されていく。
彼女は一踏みにできるサイズの雑居ビルをゆっくりと時間をかけていたぶっているようで、
少しずつ圧縮されている建物の中からは逃げ遅れた者の断末魔の叫びが聞こえてくる。
崩れ落ちた壁や天井に挟まれ、身動きが取れなくなってしまっているのだろう。
しかし警官たちはあまりに無力だった。助けに行くことも、破壊を止めることもできない。
できることといったら、無力感に打ちひしがれながらただ最後の瞬間を見届けるだけ。
やがて、次第に絶叫も聞こえなくなり、ついにニーソックスの下へと消えた雑居ビル。
巨大少女が足を上げた時、そこには建物も人も原形を全く留めていなかった。
あまりの惨劇に茫然とする警官たち。だが、すぐに自分たちの番もやって来た。
次の獲物を探そうと辺りを見回した彼女はようやく彼らの存在に気づき、真上に足をかざしたのだ。
見上げれば、縦横二台ずつ並んだ大型バスをも一踏みにできるだけの広さを持った巨大な足裏。
本来なら純白なはずのニーソックスも、多くの命を奪い、建物を壊してきたことですっかりどす黒く汚れてしまっている。
それが、勢いよく迫り来る。逃げる間もなく、次の瞬間には彼らも染みの一つと化した。

 警官たちを一踏みでやっつけた葵は、その亡骸をグリグリと踏み躙るとさらに多くの建物を破壊していく。
二階建てのスーパーを蹴りつけ、陳列されていた商品やら隠れていた小人やら屋上駐車場に止めてあった車やらを飛ばしてみたり。
それから薙ぎ払う様に脚を左右に振り動かせば、多くのものをぶちまけながら建物は完全に倒壊した。
また、アーケードの屋根をバキバキと踏み抜き、軒を連ねる店舗を蹴散らしながら商店街を横断すると、
十五階建て高層マンションの前でしゃがみ、ニコッと笑うといきなり手刀を浴びせて建物を真っ二つにしてみたり。
スポンジケーキのように柔らかな建物に入刀するが如く、屋上から一階までストンと手を下ろすと、
二つに割れたマンションはややあってガラガラと粉塵を上げながら両脇に倒れていった。
それを見届けると、続いてすぐ近くの八階建てのマンションもグーで思いっきり叩き潰し、
反対の手でも四階建ての銀行を掴み取ると、グシャッと握り潰す。
部屋に引きこもっていたら、轟音とともに突然崩れ落ちた天井とに押し潰される者。
銀行の金庫に隠れていたら、分厚いコンクリートの壁や鋼鉄製の扉を突き破ってきた巨大な指に握り潰される者。
ここでも多くの人命が呆気なく彼らのいる建物と運命を共にしていく。
次々と建物を瓦礫の山に変えていく葵。市内で唯一の超高層ビルもついにその餌食となった。
向かいに建っていた二十階建ての高層ビルをお尻で突き崩しながら、彼女はまず建物の中を覗き込んで見る。
すると、展望室やその下のオフィスフロアにはまだ何人もの小人たちの姿を確認することができた。
彼らは恐怖に震えているのか、皆小さく縮こまっていたが、それを見て彼女は憐れむどころか口元を緩めると、
より怖がらせるためにビルのてっぺんを掴んでグラグラと揺さぶっていく。
「がおー怪獣だぞー」
楽しそうに言いながら、中で小人やら机やら何やらが転げまわるのを観察する葵。
壁や天井に叩きつけられて悶える小人たちの無様な様子を見て、ますます楽しんでいく。
その際、揺れの衝撃で建物のガラスパネルはみんな粉々に割れて飛散したが、
キラキラ散る破片は小人たちには命に関わるものでも、葵には切り傷一つ付かなかった。
それどころか、光を乱反射しながら舞うガラス片のまるで幻想的な光景にうっとりする。
「きれい…」
しばし見とれてからまた中を覗き込むと、小人たちはピクリとも動かなくなっていた。
指を突っ込んでちょいちょい突いてみても動く気配は微塵もない。いつの間にか死に絶えてしまったのだろうか。
ともかく、遊び相手のいなくなった建物などもはや用済みということで、彼女は半壊した超高層ビルに手を回し脚で挟み込むと、
抱きしめるようにビルを一気に両手両足で締めつけて木端微塵に粉砕する。
グワッシャアアアアアアアアン……
「んっ、気持ちいい」
巨大建造物を一思いに破壊し、悦に入る葵。少しの間余韻に浸ってから、またすぐに次の獲物に向かっていく。
両脇の建物をさも当然のように踏み潰しながら高層ビルを脚で挟み込むと、ゆっくりと足を内側に寄せ、
ニーソックスに包まれた太ももやふくらはぎで建物の外壁や内装をパキパキと砕いていき、
両足がぴったりと触れたところで脚を擦り動かして細かな瓦礫片も粉々にしたり。
また、低層のビル群を蹴散らしながら別な高層ビルにも歩み寄ると、
屋上を掴んでから勢いよく払い倒して隣接するホール施設に被さるよう崩落させたり。
陸上競技場も、観客席を余すとこなく踏み潰してから、記念として真ん中に足跡をつけたり。
そうこうして目についた建物はじっくり壊し、そうでない建物はさも当然に踏み潰したり蹴散らしたりしながら、
葵は市街を縦断する大通りの起点である拠点駅にも歩みを進めていく。
みんな逃げてしまったのかあまり小人もおらず、架線が切れているのか電車が動く気配もなかったが、
構わず駅舎に両足を踏み入れると、邪魔な連絡橋を蹴飛ばし放り投げてから、
まずはホームに停車していた二両編成の電車をニーソックスで押さえつける。
そして足を左右に動かして、車両をレールに沿って前後に走らせてみたり。
「ふふ、電車遊びってこういうことかな」
何度か反復させながら、しかし次第にニーソックスを押しつけていく葵。
車体がクシャリと潰れてもまだ電車は動いていたが、もう一押ししたらついに台車も潰れて足はぺたりと地面につく。
連結部を挟んで半分ずつが拉げた車両。このままだと不格好でかわいそうなので、残りも踏み潰してあげた。
続いて、六両編成の特急の先頭車両を小突いて横転させると、爪先で撫でるようにしながら後ろの車両も次々に転覆させていく。
そして全て横倒しになったところで、今度は逆方向に爪先をグッと押しつけるように擦り動かしていけば、
特急も数瞬の間に先頭から最後尾まで平べったい鉄板と化していった。
五両編成の電車も連結器を全てブチブチとちぎると、車両を横倒しにして積み重ねていき、
五段重ねになったところでニーソックスを乗せて押しつければ、
それらは紙か何かで出来ているかのようにクシャクシャと潰れていった。
こうして葵は構内にいた電車を全て潰し終えたら、最後は駅舎の上で大きく飛び跳ねてみる。
「えいっ」
ズガアアアアアアアアアアアンンン!!!
今までとはケタ違いの激震、爆音。直撃を受けた駅舎は一瞬にして全てが崩れ落ち、文字通り全壊する。
被害はそれだけに収まらず、一帯のビル群、マンション群も強烈な衝撃に見舞われて次々に倒壊したり潰れたりして、
巨大少女がただジャンプを一回しただけで駅周辺はあっという間に瓦礫の山と化してしまった。
そしてここでも多くの人々が建物の倒壊に巻き込まれて命を落としていく。その数は実に数千にも上った。
「あはは、こんなに壊れちゃった。わたしってすごくない?」
大量の瓦礫やガラス片、粉塵が舞う中、葵は破壊の中心で高らかに笑いながら自分の力に酔いしれていた…


 こうして街の中心部をも壊滅させた葵だが、その欲望はとどまるところを知らず、
さらに多くを破壊し殺戮するために、来た方向とは反対の郊外に向かっていく。
瓦礫の上をサクサク歩いていくと、少し進んだところに高速道路が延びていた。
先程のジャンプの影響か、所々で橋桁が落ちて寸断されてしまっている。
ちょうど真正面にも、両端が崩落して切り離された高架があった。
渋滞中だったのか、その上では上下合わせて百台以上の車が行き場を失って止まってしまっている。
そして、その周りにはたくさんの小人たちの姿も見受けられた。
近づくにつれ、彼らは慌てて高架から飛び降りて逃げようとしていたが、そうはさせない。
早速歩み寄って高速道路を脚の間に収めると、その一端に勢いよく座り込む。
「どすーん」
ズウウウウウウウウンン…
柔らかなお尻の下でグチャッと潰れる数十の小人、車両。高架も間髪いれずに押し潰れる。
女の子座りのように、脚を折り曲げながらぺたりと地面に座り込んだ葵は、
ぐっと上半身を伸ばして高架のもう一端に両手を置くとそれを引き寄せていき、
小人や車を根こそぎ掻き集めて、脚に挟まれた高架に山を築いていく。
たったこれだけの動作で、多くの小人たちは動けなくなってしまうが
お構いなしに、むしろじわじわいたぶるようにゆっくりと太ももを閉じていく。
両脇から地響きを立て迫りくる、肌色と白色で二分された巨大な物体。
長さは四十メートル、高さも十メートルほどと、高架を十分覆い尽くせる大きさがある。
群衆はこの巨大な処刑道具から何とかして逃れたかったが、ほとんどの者は動くこともできなかった。
先程、巨大少女が自動車やら案内標識やら中央分離帯やら高速道路上のあらゆる物を掻き寄せた時に人々も一緒に集められ、
その際に彼らは車両に挟まれたり押し潰されたりしたことで身動きが取れなくなってしまっていたのだ。
そうでなくても、数十メートルに渡って引きずられたり転がされたりしたことで傷つき、満足に歩くこともできない。
だが、無慈悲にも刻一刻と巨大な太ももがすり寄り、高架を削り取りながら挟み込んでいく。
巨大少女の温もりを感じながら、たくさんの積み重ねられた自動車ごと内側に寄せられる人々。
次第に、僅かな動ける隙間さえなくなり、泣き叫ぶこともできなくなる。
それでも太ももによるプレスは止まらず、やがてあらゆるものが圧縮されていく。
グチャ、バキという車や仲間たち、そして自分が潰れる音を聞きながら、彼らは絶命した。
太ももをぴったりと閉じた葵。擦り合わせてから開いてみたら、小人や車が堆積した山はおろか、高架もすっかり無くなっていた。
あるのは平べったい一枚の鉄板とわずかな瓦礫片だけ。それが何であったかは考えるまでもない。
「あはっ、こんなぺらぺらになっちゃった」
笑いながら、葵はその鉄板を引き裂き、千切ってバラバラにする。
それから座ったまま脚を伸ばして、高々と掲げてから高速道路沿いのマンションめがけて振り下ろしたり。
ドスン、ドスンと踵を叩きつければ、直撃を受けた建物を木端微塵に粉砕し、
ニーソックスに包まれたふくらはぎや太ももでも幾つもの建物を万遍なく押し潰す。
また、今度は脚を左右に広げて市街を地盤ごとまとめて押し退けたり。
脚の動きに合わせて崩れていき、両脇に堆積していく数十、数百の建物群。
こうして葵は脚の届く範囲をすっかり更地にしたら、よっと立ち上がってまた街を踏み潰し蹴散らす。
もはや建物の多くが破壊され、生存者もだいぶ少なくなってしまった都市。
完全に壊滅するのも時間の問題と思われたその時だった。ようやく軍隊が現れたのは。

 まずやってきたのは十機の戦闘機からなる編隊。
対艦ミサイルを搭載した機体は攻撃態勢に入りながら巨大少女に接近していく。
ミサイルの射程は数百キロあったが、確実を期すために至近攻撃を行おうとしていたのだ。
そんなパイロットたちの目に映るのは、まだあどけなさの残る可愛らしい少女。
だが、白のセーラー服やニーソックス、素肌はすっかり汚れており、また赤く染まっていた。
それが今までの破壊や殺戮によるものであるのは想像に難くない。
現に、彼女は楽しそうに足元の建物を踏み潰そうと…踏み潰していた。
可愛い顔して恐ろしい所業を平気でやってのけている。まさに白い悪魔とでもいうべきか。
そんな巨大少女だが、どこも傷ついておらず、衣服も破れている形跡などなかった。
小さな街一つと、大きな街の大半を破壊しているのにもかかわらずである。
少女らしい華奢な外見からは想像もつかない強靭な身体。
衣服も丈夫なことから、何か不思議な力で護られているのかもしれない。
だとしたら、彼女にはミサイル攻撃も通じない可能性がある。
だが、やるしかない。ここで我々がやらねば誰がやるというのだ。
意を決するパイロットたち。そして隊長の合図と同時に、彼らは一斉に攻撃を開始した。
相変わらず街を破壊していた葵だが、ふと見上げた先に飛行している物体を見つける。
数は十機ほど。小さくてよくわからないが、戦闘機なのだろうか。
少し様子を見ていると、それらは警告も無しにいきなりミサイルを撃ってきた。
今までの行いからすれば当然と言えば当然だが、ちょっと怪獣になったような気分。
大量殺戮に破壊と、怪獣以上に怪獣らしいことをしていたかもしれないけど。
ともかく、むざむざと攻撃を食らうつもりはないので街を軽く駆け回ってミサイルを回避する。
「ふふ、どこ狙ってるの?」
パイロットたちを小馬鹿にしながら、足元では無事な建物もそうでない建物も
関係なく踏み潰し、蹴飛ばし、周囲の建物も走る際の衝撃で粉砕していく。
至近に来た何発かは避けきれずに手で叩き落したり、身体に命中して爆発したが、意外に全然痛くもないし熱くもなかった。
所詮は小人の軍隊の攻撃といったところか。何だか避けるのが馬鹿らしくなってくる。
とりあえず攻撃が通じないことを見せつけるために、立ち止まってわざと攻撃を受けてから反撃に出ることにした。
「…今度はわたしの番だね」
数発のミサイルを真正面で受け止めた葵はニヤリと笑みを浮かべて宣言すると、
早速、手近な五階建ての雑居ビルを持ち上げ、一直線に近くの機体へと駆け寄る。
そして建物を勢いよく投擲。すると、戦闘機は回避できずに正面から激突して爆散した。
「まずは一機っ」
葵はこれを皮切りに、他の機体にも車を鷲掴みして投げつけたり、住宅を掴み取って投げつけたりして次々に撃墜していく。
また架線をブチブチ切断しながら送電鉄塔を引っこ抜くと、それを振り回して戦闘機を叩き落したり、かっ飛ばしたり。
最後の一機もクシャクシャに丸めた鉄塔を投げつけて撃墜したところで、突然セーラー服が爆発した。
何が起きたのかと思って辺りをよく見ると、少し先の道路に戦車隊がいる。
今のは攻撃だったのだろうか。音や光にちょっと驚いたが、それだけだった。
ためしに突っ立っていると彼らは一斉に砲撃を始めたようだったが、
何十、何百発と弾が身体のあちこちに命中しようと傷一つ付かなかった。
あるのは、ただ何かが触れて弾けるような感触だけ。
「こんなか弱い攻撃で、わたしを倒せると思ってたのかな」
嘲り笑う葵。絶え間ない攻撃で衣服はすす汚れていたが、軽く叩いたら簡単に黒ずみがなくなる。
すると、ようやく攻撃が通じないことがわかったのか、戦車たちは戦闘を中止して後退し始めたが、それを許す彼女ではない。
「あはっ、逃げられると思ってるの?」
邪悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと、しかし着々と歩み寄っていく。
あまりの迫力に彼らは再び攻撃を開始したが、その動きを止めることなどできなかった。
そして、十数歩進んだところで戦車隊に追いついた葵は、まずは一番手前にいた戦車を摘まみ取る。
「さあて、どうしてあげようかな」
反対の指で戦車をツンツンと小突きながら、楽しそうに言う葵。
その間にも砲身や機銃を拉げ、キャタピラも剥ぎ落して戦車を無力化する。
それから、ちょっと指先に力を込めたら戦車はプチリと潰れてしまった。
「ふん、あっけない」
葵は鼻で笑い、指の間で平べったくなった残骸をクルクル丸めてピンと弾き飛ばす。
続いて数輌を摘まみ取って手のひらに乗っけると、ゆっくりと手を閉じていく。
戦車たちは砲撃をしたりキャタピラ動かしたりと無駄な抵抗をしていたが、握るにつれて沈黙してしまう。
最後はグッと握り締めたら、大した感触もなくクシャッと簡単に潰れてしまった。
「束になってもこの程度なんて。小人の戦車は脆すぎだね」
嘲りながら、今度は逃げようとしていた一輌を爪先で抑えると、少しずつ力を加えていく。
「どこまで耐えられるかな」
ミシミシと軋んでいく戦車。その搭乗員はパニックに陥っていた。
重々しい何かが上から降ってきたような衝撃と同時に車輌が急停止し、直後に変形しだしたのだ。
ペリスコープ越しでは外の様子はよくわからないが、どうやら巨大少女のニーソックスに踏みつけられたらしい。
しかし、まだ潰されてはいないことから、頑丈な装甲のおかげで助かったのだろうか。
いや、戦車を何輌もまとめて握り潰せる彼女がそんなに非力なはずがない。
だいたい、あれだけ大きければ体重だって数万トンはあるはずだ。
そんな重たいものに踏まれたら、戦車などひとたまりもないだろう。
となると、猫がネズミをいたぶるように我々をじわじわと嬲り殺そうとでもいうのか。
ともかく、必死でエンジンを全開して前進や後退を試みるも、微動だにしない。
ならばと脱出口から逃げようとするが、そうこうしている間に砲塔が潰れ、車体も圧縮され、
ついには車体に挟み込まれて身動きとれなくなってしまう。
そして次の瞬間、彼らはバキバキ砕かれながら戦車ごと潰れ果てた。
「あーもう弱すぎ。手加減してあげたのにこの程度なんて。
こんなか弱い虫はどんどんやっつけちゃお」
戦車を爪先でプチリと潰した葵はそう言うと、他の戦車も次々に潰していく。
爪先を突き刺して潰したり、足の指と腹の間で挟み潰したり、ズンとまとめて踏み潰したり。
締めくくりにドスンと勢いよく座り込めば、残っていた戦車たちもお尻で潰して戦車隊は全滅。
その際の震動で、わずかに残っていた建物も倒壊し、街はほとんど全てが崩壊した。


廃墟と化した都市。もはやほとんどの建物が消滅し、市民が死に絶えたなか、
葵の可愛らしい笑い声だけが高らかに響き渡っていた…


おしまい

 

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