ギガサンタ~プレゼントは破壊っ♪~


1.ミニチュアの街

 気がついたら、そこはミニチュアの街だった。それも、精巧なミニチュアの街だった。
縮尺は千分の一かもっと小さいくらいで、色といい、形といい、どれも本物そっくりである。
また、リアルに作ってあるのだろうか、強度は大きさ相応といったところで、
手や足が建物に軽く触れただけでもそれらは容易く崩れてしまった。
米粒より一回り大きい程度の建物達だったとはいえ、あまりの脆さに少し驚いてしまう。
しかしながら、これらは誰かの物。過ぎてしまったことは仕方がないとしても、これ以上壊すのはまずい。
となると、うっかり動くこともできなそうで、起き上がるのも一苦労だ。
慎重に身体を擦り動かし、そっと直立することで何とか被害を抑える。
さて、ここはどこだろうか。とりあえず置かれた状況を考えてみた。
周囲はどこまでも続くミニチュアセット。街があり、山があり、川がある。
また、空には何ら遮るものがないので、どこかの屋内ではなさそうだ。
服装はサンタのコスプレ姿。赤い布地に白いふさふさが付いたミニスカサンタ服と帽子を身に着け、
黒いニーソックスと茶色のブーツを履いている。プレゼントを入れる袋は…持っていなかった。
もちろんこれだけではよく分からないので、次に記憶の糸を手繰ってみた。
今はクリスマスシーズン。学校もこの前終わったことだし、
せっかくの冬休みを生かしてお小遣いを稼ごうとしたことは覚えている。
(それで確か、サンタの格好でバイトをしてたら急に立ちくらみしたんだっけ。
そのまま気絶しちゃったのかな。でも、こんな場所に見覚えなんてないけど…)
改めて周りをよく見ても、広がっているのは驚くほど精巧なミニチュアの街。
さっきまであったはずの職場や近隣の建物などは見当たらない。
いや、そもそも『普通』の大きさの物がどこにもないのだ。
あるのは建物や道路、木々や山々などがミニチュアサイズになったものだけ。
それでいて精巧で、他に私と大きさを比較できるものがないものだから、
それらに囲まれていると、まるで世界が縮んだのかと勘違いしてしまいそうだ。
ともかく、ここは知らない場所ということは分かった。
そうとなると、どうして私はここにいるのだろうか。
ふと思いつく、単純かつ根本的な、一つの疑問。
気絶してたのならどこにも動いてないはず。夢遊病でもない限り。
だとすると、誰かが私をこの場所に抱え込んできたのだろうか。
しかし、いったい何のために?いたずらにしてはあまりに大掛かりな気がする。
それに、そもそもどこにも通り道らしきものが見当たらないような。
触れただけで崩れるような脆いミニチュアの街を壊さずに通ることなど不可能だろうから、
強引に道を切り開かなければどうしても通り道は必要となるはずなのに、
どの方向を見ても開けた場所などなく、無傷な街が延々と広がっている。
「あーもー、何が何だか…」
あまりに不可解なことばかりに、ため息が思わず出てしまう。
分かるのは、気がついたらミニチュアの街にいたことぐらいなもので、
ふと、ひょっとしてここは現実の世界ではないのだろうか、とさえ思われた。
(そういえば、空気は澄んでいるし、何だか身体は軽く感じられるし…)
しかし、思いつきにしては幾つも浮かんでくる違和感。
一つ一つは些細なものでも、次第に『現実』の二文字は薄れていく。
そして何よりも考えを確信に至らせたのは、真下に見える世界だった。
細々とした建物がびっしりと立ち並び、隙間を縫うように道路が網目状に走っている、ミニチュアの街。
目を凝らせば道路には街路樹があり、信号機があり…と、ここまでは何とか許容できるものの、
路上には色とりどりの車が…動いていたのだ。それも、交差点で止まったりしながら。
さらに、非常にゆっくりとだが、ゴマ粒のように小さな物体も動いていた。
一つだけでなく、何千、何万もの数で。虫には見えないことから、恐らくこれが人間なのだろう。
建物だけならまだしも、動く車や人となると、もはや精巧というレベルを越えている。
これらはサイズこそ違うものの、ミニチュアではなく本物なのだ。
(ミニチュアじゃ…ない…!?じゃあ、これは…この世界は……)
夢…?世界が丸々縮んでしまったような…夢?
そう考えると色々と辻褄が合うような気がしてきた。
実際にこんな精巧なミニチュアは作れないだろうし、
仮に作れたとしても車や人間を有機的に動かすことなど不可能だ。
もちろん、逆に自分が何千倍にも大きくなってしまった可能性もあるが、
どちらにしても現実の世界ではあり得ないことだし、これは夢に違いないはず。きっと。
(夢…夢かぁ。……なら、何やっても構わないのね)
夢の中なら、誰にも遠慮することなく好き勝手やってもいいのだ。
となると、せっかく相対的に世界が縮んだことだし、思いっきり暴れようか。
最近忙しかったし、せめて夢の中だけでもストレス発散をしようというわけだ。
そこで、ためしに足を少し動かすと、さっきと同じように建物が数棟倒壊してしまった。
小さな大破壊。建物だったものは押し退けられ、瓦礫の山へと早変わり。
建物が触れた感触こそほとんどなかったが、何だか気持ちがよくなってしまう。
圧倒的優越感というか、破壊の快感というか、まあそんなところで、
さっそくこの街全てを破壊し尽くしたい衝動に駆られる。
ただ、いきなり破壊するのもなんだし、せっかくサンタ服を着ているので、
まずは暴れる前にこんな破壊宣言をしてあげることにした。
「あんた達に破壊をプレゼントしてあげる♪」


2.破壊のプレゼント

 とりあえず、最初の一歩を踏み出す先は商店街らしき場所にしてみた。
細長い通りを細々とした建物がびっしりと両脇を埋め尽くしている場所。
クリスマス用に装飾されているらしく、淡い光が点滅している。
そこにブーツをゆっくりと、しかしためらいもなく下していく。
そして地面すれすれのところで、恐らく建物が触れたのだろう、
足裏にほんの少し何かが抵抗する様な感触が感じられたけど、すぐに潰えてしまった。
こうしてブーツは小気味よい音を立てながら地面に着き、
さらに、まるで湿地を踏んだようにズブズブと沈み込んでいく。
…この世界では自分は相当重いのだろうか。何だか複雑な気分。
ダイエットは頑張ってるし、体形には少し自信があるつもりだったのに。
ただ、どうせ夢だし、いちいち気にしたら楽しめないので気にしないことにした。
こうして、地面を踏みしめた後に足を上げてみれば、そこには靴跡だけがくっきりと残されていた。
さっきまでびっしりとしていた商店街は、一店残らず完全に消滅してしまっている。
もちろん、商店街だけでなくその周りの建物も結構な数が地面に埋没していた。
そこに居合わせた、取るに足らないような小さな人間達ごと。
「ふふ、足を下ろしただけで大破壊ね」
…楽しい。何の気兼ねもなく、街をいとも簡単に破壊できてしまった。
まるで映画に出てくるような大怪獣になった気分だ。大きさはそれ以上だけど。
(これだけ大きければ、怪獣だって踏み潰せるものね)
そんなことを考えつつも、私は次なる一歩を踏み出す。
今度の餌食は学校。敷地全体をブーツで覆うと、まずは踵の方から下していく。
その下には校舎と体育館があったけど、大した感触もなく踝は地面に下された。
それから、爪先の方も徐々に倒していき、防塵ネットを押し倒し、プールを押し潰し、
さらには敷地を越えて住宅街の小さな家屋を何十棟も踏み潰していく。
しかし、これでおしまいではない。まだ踏まれずに残っている場所がある。
大勢の小さな人間達がうごめいているはずの、グラウンドが。
一思いに踏み潰してもよかったけど、わざわざ生かしたのはこっちの方が楽しそうだから。
今頃、虫けらのような人間は爪先と踵の間のわずかなスペースで何を思っているのだろうか。
そんなことに思いを巡らすことができ、ゾクゾクしてしまう。
(せいぜい命乞いでもすることね。ま、助けてあげないけど)
ただ、あんまり時間を与えると逃げてしまう恐れがあるので、
少しだけ待った後、足にぐっと力を込めて足裏を完全に地面につけてあげた。
さらに、念入りに何度か敷地を踏みにじったりもしちゃった。
これで、たとえグラウンドから脱出していたとしてもお構いなしだ。
続いて、私は学校の周りから順々に住宅街を踏みしめていく。
何歩も何歩も。大小様々な、色とりどりの住宅をさも当然のように。
小指の幅よりも小さい家屋は一度に数百という単位で潰れていき、
アパートやマンションも仲良く圧縮されて靴跡の模様と化していく。
また、足を擦り動かすだけでも数多の建物がブーツに弾かれ、崩され、消えていった。
そうして歩いていると、途中、足元の他の建物に比べて頭一つ分だけ大きい建物と遭遇した。
高層マンションだろうか。平坦な住宅街の中では結構大きな建物だ。
とはいっても私の踝にも届かないような小さな建物だけど。
それでも、ただ踏み潰してしまうのは勿体ない気がしたので、
足を軽く浮かすと、爪先でちょんと小突いて壊してあげた。
もちろん、最後は砕け散った瓦礫ごと踏み潰したのはいうまでもない。
しばらくの間、住宅街に幾つもの足跡を残しながら破壊を楽しんでいくと、
やがて住宅街はぷつりと途切れ、代わりに溝のようなものが左右に延びていた。
川に差し掛かったのだ。幅は半足分ぐらいで、跨ぐとはいえないような距離だけど、
それでも小さな人間達にとっては大きいようで、付近だけでも立派な橋が何本か架かっている。
橋上には当然のごとく多くの車。避難しようとしている人間達もたくさんいるようだ。
…避難?それはつまり私から安全な場所で逃げようということで。
「私から逃げられるとでも思ってるの?笑わせてくれるじゃない」
まったくおかしな話だ。これだけ体格差があって、どうして逃げられるというのだろう。
小さな人間達が何分もかけてようやくたどり着く距離に、私は一歩で到達できてしまうのに。
実際、あまりの遅さに逃げているんだかどうか分からなくなってしまうほどで。
こちらに向かってくるのがいないことと、橋にひしめく数の多さから、逃げているみたいだけど。
しかしまあ、特に意識して手を出さなくとも勝手に巻き込まれていきそうだし、
どうせ逃げられはしないので、あえて気にすることもなく破壊活動を続けていく。
まずは橋の中の一本に一歩で歩み寄ると、いつものように踏み潰し。
橋を埋め尽くしている車や人などお構いなしに、端から端まで丸々と。
足を軽く乗せてほんの少し力を込めると、乾いた音と共に橋はブーツの下に消えていった。
次の橋は、両端を爪先で蹴り崩したら、真中だけあえて残して弄んでみた。
川の中に取り残されて、小さな人間達はさぞかし怖い思いをしていることだろう。
少し時間を与えると、恐怖に耐えられなくなったのか、次々に飛び降りちゃっている。
中には車ごとダイブする猛者(?)も。下は川だから、運がよければ助かるかもしれないけど。
とまあ、そんな滑稽な様子を楽しんだ後は、用済みの橋をブーツで薙ぎ払っておしまい。
また、橋の上にブーツを滑らせて車やら何やらを綺麗さっぱりお掃除した後、
爪先を立てて平べったい橋に乗せ、同じく滑らせるように削り崩していけば、
映画のシーンみたいに順々に橋が川に落ちていって、最後には橋脚ごとなくなってしまった。
こうして幾つもの橋を壊しながら川を渡れば、その先にはまたしても住宅街。
橋が架かっていた場所からは何本かの幹線道路が街の中を走っているけど、
そんなものに縛られることもなく、私は好きなように歩きまわっていく。
もっとも、道路はあまりに狭すぎるので、たまに路上を歩いてみても
靴の大半がはみ出しちゃって多くの住宅を踏みつけることになったけど。
ともかく、一度に数多の建物を踏み潰し、すり潰し、蹴り崩していく。
私にしかできない、圧倒的な大破壊。地形だって簡単に変えてしまえるほどの。
足を下ろせばそこは大きな窪地となり、丘も一踏みで谷に早変わり。
全てのものが私の足の下で等しく圧縮され、潰れてしまう。
駅も例外ではない。足元に発見してからぺしゃんこになるまでわずか数秒だった。
ホームにいた小さな人間達や、駅前駐車場の車列を巻き込みながら。
足を上げてみれば、駅はまさしく跡形もなくなっていた。
「あはは、軽く足を置いただけなのにね。この根性なしっ♪」
瓦礫すら残っていない駅の跡地を、私はさらに何度か踏みしめてあげる。
今度は整地をするみたく念入りに。周囲の住宅街も含めて、大地を綺麗に均していく。
次に生まれ変わる時はもうちょっと頑丈になってもらいたいなと思いつつ。
夢とはいえ、やけにリアルなので、ここに再び駅ができるどうかは分からないけど。
駅周辺を綺麗な更地にしたら、今度は線路の上をたどってみる。
正しくは線路とその周辺。線路だけでなく、踏切や沿線の住宅をも巻き込みながら。
わざわざこんな場所を歩くのは、次の駅に早く行くため…というのもあるけど、
途中、確実に電車に出会えることができるのだ。一期一会の出会いが。
実際、ほんの数歩で早くも一本の電車と出くわすことができた。
私が架線を切ってしまったからか、駅と駅の間で停止していたけど。
長さはブーツの半分ほど。幅はブーツの紐よりも短く、まるで細い針金といった印象を覚える。
それでも、きっとたくさんの小さな人間達が中に乗っているのだろうから、
普通に踏み潰したり蹴飛ばしたりするのはもったいない気がする。
そこで少し考えた後、ちょっとしたことを思いついて、ひとまず声を掛けてみた。
「ごめんねー、架線を切っちゃって。そのせいで動けないよね。
だから、おわびに私がしっかりと駅まで送ってあげる」
笑みを浮かべての謝罪。続いて、言動をさっそく実行に移すべく、
線路をえぐり取りながら電車の最後尾に爪先をちょんと添えると、
後ろから小突くようにして電車を押していき、勢いよく走らせていく。
少々乱暴な手段。それでも、初めはうまく線路の上を走るかにみえた。
けど、やはりそう上手くはいかず、電車はすぐに脱線してクネクネとなり、
なお勢いあまってその状態のまま次の駅に突入しちゃった。
そんなもんだから、衝撃で連結が切れてバラバラになった車両は
ホームに乗り上げていたり、駅舎に突き刺さっていたり、
中には住宅街に突っ込んでいたりと全く無秩序になってしまっている。
それでも、駅まで送るとのおわびは確かに果たしてあげた。
「はい、とうちゃくー。では、駅に着いたことだし踏み潰しちゃいまーす」
見るも無残な姿の電車に向かって、さらに追い打ちをかけることをおどけて言ってみる。
そして踏み潰し。駅にいようが、住宅街にいようが、一踏みで全ての車両を潰せてしまう。
何だかんだで、結局、踏み潰されることには変わりなかったかな。

 こんな風に二本の足だけで小さな小さな街を破壊しながら、
私は線路に導かれるがまま、次第に街の中心へと向かっていった…


3.プレゼントは私♪

 何駅か壊し、何本かの電車を平たくしていくと、次の駅は結構大きなものであった。
幾つものホームを有しているようであり、駅舎もちょっとは高さがあるようだ。
周りを見てみても、今までに比べてずっと大きな建物が立ち並んでいる。
もっとも、一番高いものでもせいぜい私の足首より上ぐらいだけど。
改めて街の矮小さと私の巨大さを認識し、ますます圧倒的な優越感に浸ってしまう。
ともかく、この駅を中心として街は広がっているみたいだ。
さっそく踏み潰してもいいけど、さっきからずっと立っていてちょっと疲れたので、
とりあえず駅を楽々跨ぎ越すと、ゆっくりと腰をおろして駅の上へと座り込んでいく。
「ふふ、これはお尻のプレゼントかな」
今頃、駅にいる小さな人間達は、空からお尻が降ってきてさぞかし驚いていることだろう。
変態な人は喜んでいるかもしれないけど。どちらにせよ、すぐにさよならだ。
(ま、硬いブーツよりは柔らかいお尻に潰されるんだから、感謝してね)
そんなことを思いつつ、さらに腰を低く低くしていけば、
やがてお尻に建物が直接触れ、プチプチと潰れていく感触が味わえた。
何だかくすぐったいような感触。それもお尻のあちこちで感じられる感触。
駅だけでなく、周りの建物もたくさん潰してしまっているようだ。
そして最後に背の低い建物や電車などを丸々押し潰した後、
次第にお尻は地面に触れていき、そしてそのまま深く深くめり込んでいく。
たとえ地下施設があっても、これで消滅してしまったことだろう。
こうして、体育座りのような姿勢で駅の上に座り込んだ私。
地面を埋め尽くすほどたくさんうごめいていた人間達や、
駅前に停まっていた数多くの車やバスなども、今やお尻の下。
ちょっとした征服感。まさに街を尻に敷くといった感じだ。
ただ、難点として、この姿勢だと何だかパンツを見せつけてるようで少し気恥かしい。
そういえば、特に考えもせずさっきまで普通に街を歩いていたけど、
ただでさえミニスカなのにこれだけ大きくなってしまったら、
下からは丸見えだったのだろうか。いや、きっと丸見え…だったはず。
(で、でも、どうせ夢だし…大丈夫…!)
何が大丈夫か分からないけど、どうせ今更気にしてもしょうがないし不可抗力なので、
この件は考えなかったことにして、忘れ去るために一度深呼吸したら、まずは一休み。
腕を伸ばしたり、頭を回したりして、歩き疲れた身体をほぐしていく。
また、ブーツをそこら辺に脱ぎ捨ててニーソックスだけ履いた状態にすると、
座ったまま脚を伸ばしたり左右に広げたりもした。
その際、ニーソ越しに結構な数のビルを壊していったけど、
足に伝わる感触はブーツを履いている時とはまた違ったもので、
ブーツの時よりも一層破壊を楽しめそうな感じであった。
(たとえば、こんなのとか…ね)
まずは、近くにあったホテルらしき建物を爪先で撫でてみたり。
ブーツの時と違って、微妙な力の加減をうまくできるので、
簡単には潰してしまうことなく建物を弄んでいく。
「なでなで♪」
ただ、やはりというか、建物は次第に構造が脆くなっていったようで、
最後は力を加えるまでもなく、ただ足が触れているだけであっけなく崩れてしまった。
「んもぅ、だらしないなぁ。女の子一人満足させられないの?」
瓦礫の山と化したホテルを見て、ちょっとつまらなそうに言う。
もっとも、口では文句を言いつつ、内心はある程度満足していたけど。
(どうせ代わりは幾らでもあるし。それにしても、これは結構いいかも)
ニーソでの弄びは思った以上に楽しく、病みつきになってしまいそうだ。
実際、次々と建物を撫でては崩し、撫でては潰しを繰り返してしまう。
また、撫でるだけでなく、足の指と腹で建物を挟んだりもした。
さすがに建築物を持ち上げることはできなかったけど、
それでも握り潰したり、押し潰したりして楽しんでいく。
さらに、ビル群を一気に足で薙ぎ払ったり、蹴飛ばしたりもした。
何十、何百もの建物が瓦礫を撒き散らしながら瞬時に倒壊するのはなかなか爽快で、
一度に数が一気に減ると分かっていても、ついつい何度もやってしまう。
こうして近くの建物をみんな足だけで弄び、壊していったら、
傍に残ったのはお尻のすぐ目と鼻の先の車両基地だけとなっていた。
電車が四本ほどと、逃げる場所と時期を失ったと思われる人間達がたくさんいる。
それにしても、至近でよくもまあこんな場所が残ったと少し感心してしまうけど、
だからといって生かすつもりはさらさらない。みんな等しく潰れてもらうのだ。
ただ、位置も位置なので、残ったご褒美も込めて、太ももで挟んであげることにした。
そのため、まずは脚を線路の両脇で折りたたみ、ついでゆっくりと股を閉じていく。
私にとっては何気ない動作。されど、小さな人間達にとっては破壊的な動き。
きっと、両脇から巨大な壁が迫りくるようにでも見えていることだろう。
決して逃れることのできない壁が。まもなく全てを圧縮してしまう壁が。
「それじゃあ、優しく挟んであげるね」
一応、潰してしまう前に慰めにならないような言葉をかけたら、
さらに股を内側に寄せていき、次第に線路を太ももで覆い尽くしていく。
そして、ほんのわずかな感触と共に、太ももはぴったりとくっついたのだった。

 駅周辺を破壊した私はその後、立つのが面倒なので四つん這いの姿勢で街を移動していった。
次のお目当ては、駅からは少し離れた商業街。といっても距離は二、三歩ほどだけど。
手のひらや、ニーソに包まれた膝や脛で何区画もまとめて小さなビル群を潰しながら、
まずはその中の少し大きめの建築物が集まっている場所に近づいていく。
そして、百貨店やら大型商業ビルやらを身体の下に収めると、
ゆっくりと腕を曲げながら身体を街の上へと下ろしていった。
「プレゼントは私、なんちゃってね♪」
そんなことを言いながら、ある程度身体を地面に近づけていくと、
胸、続いてお腹、下腹と順々に、地面から伸びる建造物に触れていく。
服越しに、少しずつ数を増やしながら、ぽつぽつと感じられる軽やかな感触。
しかし崩れ落ちてしまったのか、それらは次第に消失してしまい、
背の低い建物や地面に堆積した瓦礫による短く儚い抵抗の後、
ついに身体は商業街を押し潰して地面にぴたりとくっついた。
…だけに留まらず、身体はさらに相応の重みで大地を圧縮していく。
こうして胸や腹、腕や脚と、全身で大地のぬくもりを感じ取りながら寝そべると、
目線はかなり低くなり、期せずしてミニチュアのような街をよく見ることができる。
建物の一棟一棟がはっきりと見え、より破壊を身近に感じられそうだ。
また、道路に目を移せば、目と鼻の先に虫けらのような人間の集団を見つけられた。
数は百人以上。皆一様に私から逃げようとしているみたいだけど、その速度はあまりにも遅い。
そこで、ちょっと手助けしてあげることにした。…吐息で。
「ふぅーっ」
地面に軽く息を吹きかけてみると、息の通り道は瞬時に更地となり、
建物も消し去る暴風に巻き込まれて人間達は一人残らず吹き飛んでいった。
走るのよりも何倍も何十倍も速い速度で、何百人もが埃みたいに空を舞っていく。
「あはは、人間がまるでゴミみたい」
何だか奇妙な光景に、ついつい笑ってしまう。
建物や自動車も巻き込んでの空中浮遊ショーとでもいったところか。
一世一代の大演技。夢の中とはいえ、人は空を飛べるということを身をもって証明してくれた。
もっとも、小さな人間達がその後どうなったかは知らないけど。
続いて、私は身体を地面に擦りつけながら腹ばいでのっそりと街を移動しては、
進路上にあった小さな建物を胸で押し退けたり押し潰したり、
そこそこ大きな建物を胸で包み込んでは挟み潰したりする。
どんなに豪華で立派な建造物も、どんなに高く大きな建造物も、
私の自慢の…というわけではないけど、身長の割に大きなおっぱいにはひとたまりもない。
(でも、服越しだけど、女の子の胸の中で死ねるなんて幸せじゃない?)
むしろ本望だったりして。なんて思いつつもまた一棟、挟み潰す。
たまたま胸の間に来た建物を胸に挟んで少し力を込めれば、
瓦礫を撒き散らすこともなく、建物の全てが胸の中で圧縮されて消滅する。
この街で一番の高さがありそうな建物もまた、すぐに同じ運命をたどった。
全面ガラス張りの『超高層』ビル、という名のミニミニな建物。
まずは近くまで移動すると、両手で胸を抱えながら建物を包み込んでいく。
それから、初めは優しく揉んであげるけど、徐々に力を加えていき、最後はぎゅっと圧迫。
すると、一番の高さがありそうな建物はやっぱり簡単に潰れたのだった。
「せっかく大きな建物なんだから、もうちょっと頑丈に造ればいいのに。
それこそ、おっきな女の子に弄ばれてもいいようにね」
捨て台詞を言い放ち、あはは、と笑ってしまう。どうせ最後は壊してしまうけど。
でも、私に壊されるしか価値がないんだから、それぐらいはやってほしいような。
ともかく、そんなこんなで建物を次々に胸で挟み潰していったら、
今度は握り潰したり、弾き飛ばしたりと手の方で弄んでいく。
個々の建物はあまりに貧弱なので、一度に何棟も何十棟もまとめて。
手を閉じていけば、一区画にあった建物全てが傾き、崩れ落ち、手の中で一つとなり、
人差し指で弾けば、一直線上にあった建物が残骸を撒き散らしながら吹き飛んでいく。
それでも小さな建物が容易く壊れてしまうのには変わりないけど、
壊す際に多少なりとも抵抗は大きくなった気がした。

 こうして、今度は足だけでなく身体全体を使って、
私は街の中心も徹底的に破壊し尽くしていった…


4.覚めない夢

 この街で暴れてから果たしてどれだけ時間が経っただろうか。
そんなに時間が経ってない気もするが、だんだん壊すものも少なくなってきていた。
目ぼしいものはみんな壊してしまって、大きな建物はほとんど残っていない。
まだまだ小粒なものはたくさん残されているけど、ちまちまと破壊していくのは面倒そう。
となると、どうしようか。少し考えた後、一つの妙案が思いついた。
「寝っ転がれば、街を一気に壊せちゃうかな」
服は汚れてしまいそうだけど、それは今に越したことではないはず。
なので気にしないことにして、私は寝そべったままゆっくりと転がり始めていった。
街を綺麗さっぱり消滅させるために、また、誰一人逃さないためにゴロゴロと転がり、
もうすでに破壊された場所もまだの場所も等しく粉砕し、圧縮し、地面深くに圧し固めていく。
建物も、道路も、線路も、街を構成していた全てを身体の下に均していき、大地の模様に変えていく。
何度も何度も転がり、何も取りこぼしのないよう念入りに街を潰していく。
まるで夢から現実に還るかのように、徐々に勢いを増しながら。
でも、夢は覚めることなく、途中からは目が回って気持ち悪くなってしまった。
ただ、それが功を奏したのか、少し落ち着いてから辺りを見回すと、
もう街は街といえないほど建物が綺麗さっぱり消滅していた。
埃を払いながら起き上がってみても、先程街があった場所にはほとんど何も残っていない。
建物だけでなく、様々な人工物はもちろん、森も、丘も、川も、形を失っていた。
辺り一面に広がっているのは、草一本生えていない更地。
先程まで街と呼ばれていた場所は文字通り完全に消滅していた。
こうして破壊の痕跡を見ていると、改めて自身の力をしみじみと感じてしまう。
誰も私に逆らうことはできず、誰も私から逃れることもできない、圧倒的な力。
恐らく、いや、確実に世界も滅ぼせてしまう、私を楽しませるだけの力。
現実では非力な私も、夢の世界では天地創造だって簡単にできるのだ。
(それにしても、この夢はなかなか覚めないような…。
もうそろっと覚めてもいい頃なのに、まだなのかなぁ)
ま、楽しいからいいけど。覚めないならとことん遊ぶまでだ。
まだまだ街はたくさんある。まだまだ小さな人間達もたくさんいる。
「さあて、次はどこに破壊をプレゼントしてあげよっかな♪」

 決して覚めることのない夢を、サンタ娘は楽しんでいった…

 

おしまい

 

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