★Secret Desire★ 第1話 -下- - 2014/02/12 - 原案: Iceman, 文: June Jukes


 いつの間にかNPC、つまり街の人々は消え去って、世界はアスカさんとオレだけになっていた。
だが、もし第三者が見ていたら、このシュールな光景をどう思っただろうか?
巨大なアスカさんが、手のひらの上の小さなオレに向かって消え入りそうな声で釈明をしていたのだ。

 アスカさんの話は、普段の威勢の良さからは考えられないほど歯切れが悪く、回りくどくなっていた。
しばしの沈黙の後、オレは少し呆れたような口調で総括した。
「するとなんですか、デザイアの中で『大魔王アスカゾーラ』になりきって大暴れするのが好き、ということですか?」
「えっと……それはちょっと違ってて……」
「何が違うんですか?」
「……いやでも、うーん……やっぱりその通りです。ハイ」

なんと、これがオレの同居人兼恋人兼「姉」である小嶋明日香さん(24)の秘密の趣味だったのだ!

「アスカさんの仰った通りでした。
 なんというかまあ、はっきり言わせて頂けば、完全にオレの想像を超えてましたね……」
「びっくりさせちゃって、ホント、ホントにゴメンね!
 でも、裕也クンとずっと一緒に暮らしていくなら、これはいつか言わなきゃいけないと思ったから……
 それで、いつもやってる通りのことを見せてあげたんだけど……」
「ええっ!? 『いつも』やってたんですか!? こんなこと!」
「いや、その……」

またしても間の悪い沈黙。
しかし、今度はアスカさんの方がそれを破った。

「で、……どう、だった?」
「と言いますと?」
「その……全部というか……巨大な私が街とか、破壊してるの」
緊張した巨大な顔が、小さなオレを見つめている。
さっきまで無敵だったアスカさんとのパワーバランスが、今や完全に逆転しているのだ。

 その様子を見て、オレはちょっとだけアスカさんを困らせたくなった。
ニヤニヤしたくなるのを隠して、わざと冷淡な調子で切り出した。
「はっきり言えば、ドン引きですね」
「ええっ、そんなぁ……」
「でも」
「…でも?」

 ちょっと間を置いた。
アスカさんは泣きそうな顔で、だが期待を込めて、オレの次の一言を待っていた。

「でも、その……アスカさん、カッコ良かったです」
「……!」
「カッコ良いというか美しいというか、巨大なアスカさんに……ちょっと、萌えました」
「ホント!?」
「この状況で嘘や冗談は言いませんよ。
 あと……エロかったですよ、その、『アスカゾーラ様』は」
「じゃあ、じゃあ、こんな私でも裕也クンはオッケーしてくれるの?」

 オレはアスカさんの巨大な瞳をまっすぐ見つめ、大きく頷きながら力強く答えた。

「……ええ。そりゃもちろん。だって、アスカさんを拒絶できるわけないじゃないですか」
「わーい! やったー!」
このときアスカさんが見せた心の底から安心したような表情は、今でも忘れられない。
「何というか、無敵の巨人になって『物を壊す』なんて、最高のストレス解消というか、気持ち良さそうだなって思いました」
「そう! メッチャ楽しいんだよ! ……ならば、うふふ♪」

 アスカさんは再び指でオレをつまんで元のビルの屋上に戻し、グオオッと風を巻き起こしながら真っ直ぐ立ち上がり、オレの前に聳えた。
ニヤニヤしながら、こちらを見下ろしている。
「あ、あの、アスカさん? 何か良からぬこと考えてません?」
「ふふーん、べーつに?♪」

 意味深な笑顔で否定したが、何か企んでいることはあまりにも明白だった。
オレの本能が、危険が迫りつつあることを察知していた。
「こら、逃げちゃだ?め♪ じっとしてなさい。狙いが定まらないじゃないの!」
「狙いって……やっぱり変なことするつもりじゃないッスか!」
「大丈夫よ痛くないから♪ ちょっと裕也クンにも巨大化してもらうだけだから♪」
「え……!!」
「裕也クン裕也クン、おーきくなぁれ、っと!」

 アスカさんの指先からまばゆい光がほとばしり、オレを直撃した。
「うおッ!?」
オレの身体がグワァーッと膨張していく!
服が身体を締め付けたが、すぐにビリビリと裂けてしまった!
ジェットコースターに乗ったのと少しだけ似ているけど、形容できない未体験の感覚がオレを襲う。
全身の血が沸き上がり、力が漲っていく。
急に眩暈がしてガクッとへたり込んだ瞬間、既にかなり巨大化していたオレの尻が、何かの機械を押しつぶした。
屋上に置かれていた業務用エアコンの室外機だったろうか?
しかし、それを確かめる間もなく周りの景色が大きく歪みながら縮んでいき……オレは意識を失った。


                                                            *


「裕也クン? 裕也クン? 大丈夫……?」
「え……? ううっ……」

 気がつくと、心配そうなアスカさんの顔が真っ先に目に入った。
オレは、アスカさんに膝枕されていた。
何とも言えない心地よさで、いつまでもこうしていたい……
(はっ……! オレ、巨大化して……!)
がばッと起き上がると、オレはもうアスカさんと同じ位の巨人になっていた。
下がザラザラすると思ったら、自分がいたビルを尻で完全に押しつぶしてしまっていた。
着ていた服は巨大化したときに破れてしまったが、今はまたボクサーパンツのようなものを穿かされていた。
アスカさんが用意したものなのだろう。
ブラックとパープルのカラーリングはカッコ良いし、アスカさんともお揃いだから嬉しいけど……
超薄手、ローライズ、ピチピチ、テカテカというそれは、申し訳程度に股間を隠していても明らかに性器をアピールするためのものであった。
股間の膨らみはミシミシという音が聞こえてきそうなほどに、いやらしく張り詰めていた。
この中に、人間から見れば巨大な陰茎と陰嚢がずっしりと格納されているのだった。
股間ばかりに気を取られていたが、オレの腕や脚の素肌にはミステリアスな紋様が刻まれていた。

「ふふふ、裕也クンも巨大な魔王サマになっちゃいました♪」

自分の身体を見回しているオレに、アスカさんが悪戯っぽく囁いてきた。
そう、これが大魔王に変身させられたオレの姿であった。


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 しかし、大魔王たる者がいつまでも女の膝枕というのは少々格好が付かない。
オレは立ち上がろうとしたが、その瞬間、自分の視界があまりに高いことに驚いて足がすくんでしまった。
何と言うか、自分の身体なのに自分の身体ではないような感覚だった。
アスカさんに手を差し伸べられてようやく立ち上がる姿は、膝枕よりよほど無様だった。
バツの悪そうなオレを見て、アスカさんはフォローを入れてくれた。

「私も最初はこんなだったから大丈夫。きっとすぐ慣れるから♪
 それよりもどうかしら? 巨人になった感想は?」
「え……、どうって……」
アスカさんの手をしっかり握ったまま、オレは周囲を見渡した。
オレたちの住んでいる見慣れた街は、既にアスカさんによってほとんど壊滅させられていた。
その中に、オレはいま第2の巨人として聳え立ったのだ。
想像したこともない光景だった。

「裕也クン、私たちがどれくらい大きくなってるか、分かる?」
「え? いや、ちょっと想像も……」
「今の裕也クンはね、身長172メートル。私も身長160メートル。
 うふ♪ ちょうど100倍に巨大化したんだよ♪」
「100倍……」
「凄いでしょ? 巨大ロボとか巨大ヒーローとか巨大怪獣とかより、ずっとずっとおっきいんだよ♪」

 無敵さの象徴であるそれらを遥かに凌ぐ大きさ。
そして、ミニチュアセットの中に立つのともタワーの展望台から眺めるのとも違う、ちっぽけな街を見下ろす感覚。
これが「巨人になった感じ」なのだろうか?
「なんだか、不思議な感じッスね……」
「ふふ、そうよね。でも、ただ立ってるだけじゃつまらないよ♪」
アスカさんはそう言うとオレの手を離し、ズシンズシンと地響きを立てながら離れていってしまった。
たったの数歩で、500メートル以上の距離ができてしまった。

「ここまで歩いてみて!」
「ええっ!」

 恐る恐る、オレは巨人としての第一歩を踏み出した。
怖いからなるべく足元を見たくないのだが、瓦礫が散乱した地上はどうしても足元を確かめねばならなかった。
だが、巨大な足が収まりそうな空間はどこにも見つからなかった。

「もー、何してるの? 裕也クンは巨人なんだから『ズシンッ』って踏みつぶしちゃえ!」

 アスカさんの言葉がオレを焦らせる。
少し躊躇したのち、仕方なく乗り捨てられたクルマに足を乗せてみた。
踏みつぶしてしまうとは思っていたが、それにしてもそれは、あまりにもあっけなくつぶれてしまった!
クシャリと……まるでアルミホイルでできているかのようだった。
自動車を踏みつぶしたオレの足音は、アスカさんと同じ地響きになっていた。
いや、アスカさんより一回り大きく、パワーならそれ以上のオレの方が、破壊力では上回るのだろう。

 オレの足は、大通りの片側3車線を完全に占領していた。
路面には、先に通ったアスカさんのブーツの巨大な足跡が刻みつけられていた。
自動車も中央分離帯も、全くお構いなしに踏みつぶされていた。
足跡をたどった先にいるアスカさんを見ると、高層ビルの屋上に手を付いて片足を上げ、ピンヒールで串刺しになったクルマを抜きとっている最中だった。
取ったクルマは指先で丸めるように揉みつぶして、ポイと投げ捨てる。
この巨大女魔王は、何気ない所作で人間から見れば物凄いことをやってのけているのだった。


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 オレはふらつきながらも一歩ずつ進んでいたが、最後の最後でよろけてしまって、
アスカさんの胸に飛び込むような形でのゴールインになってしまった。
「きゃっ♪」
「ご、ごごごめんなさい!」
「うふふ、いいのよ♪ うん、レッスン1は合格ね!」
「え、レッスン1……って?」
「続いてレッスン2!」

アスカさんは得意のスルースキルでオレの質問をすっ飛ばし、ノリノリの女性インストラクターのようになっていた。
コース名は「巨大魔王入門」とでも言うべきか……
そんなアスカさんがパチンッと指を鳴らすと、再び足元にたくさんの人々が現れた!
彼らは2人に増えた大巨人に悲鳴を上げながらバラバラと逃げ始めた。

 しかし、この高さでほぼ真上から見下ろすと、人々はほとんど頭しか見えなかった。
小さな黒や茶色の丸いものが、ゆっくりと離れていく。
どうやら懸命に走っているらしいことは察せられたが、それはじれったいほど遅々としていた。

「さ、やってみて!」
「やってみてって……何を、ですか?」
「決まってるじゃなーい。私たちは無敵の大魔王で、しかもこーんなに巨大なのよ?
 虫ケラみたいな人間どもはこうやって……」

 アスカさんは軽く足を伸ばし……
ズシィィィン……!
これだけでまた、数十人が踏みつぶされてしまった。

「……ふふっ、簡単に踏みつぶしてしまえるのよ。
 ほらほらー、のんびりしてると人間どもが逃げてしまいますわよー?」
「ひぃぃ……分かりました、分かりましたよ」

 オレは逃走する集団の最後尾に狙いを付けた。
まだ少し覚束ない足取りのオレでも、たったの一歩で簡単に追いつけてしまうのだった。
踏み下ろした足指のすぐ側では、人々の動きが止まっていた。
恐怖のためか、それとも巨人が引き起こした地震のためか、とにかく動けなくなっていたのだ。
あーあ、ここで止まったらヤバいのに……
オレは構わず、いよいよ彼らを踏みつぶすために足を振り上げた。
しかし、100分の1サイズとはいえ、十分に人間だと判別できる相手を踏みつぶすのは、やはり躊躇してしまう。
相手がデータ上の存在に過ぎないNPCだと分かっていても、自分と同じ姿形の人間だとどうしても決意が鈍ってしまうのだった。

 しかし、オレを見上げて怯えたり平伏したりしている彼らの姿を見ると、別の感情が頭をもたげてきた。
(オレに向かって、命乞い……? こんなに泣き叫んで……そうか、コイツらはもうオレを「人間」だなんて思っちゃいない……オレは大魔王なんだ!)
次第に、オレの精神が邪悪な思考に染まっていく。
今のオレは偉大なる魔族の長。
人間どもは絶滅させるべき敵ではないか。
何を躊躇うことがあろうか?

 そのとき、オレの中で何かが吹っ切れた。
命乞いをする哀れな下等生物たちを女魔王「アスカゾーラ」と同じ冷酷で嗜虐的な視線で見下ろしながら、今度は躊躇なく踏みつぶした。
素足の裏で、いくつもの卑小な人間どもがつぶれる感触があった。
やってみれば、実にあっけなかった。
足を上げてみても、やはり醜い圧死体は無かった。
それが分かってしまうと、数十匹の人間を踏みつぶしたというのに、オレの心にはジワリと高揚感が込み上げてきた。
体だけでなく心までも魔王になりきることができた瞬間だった。

 アスカさんはご満悦だった。
「うふふ、無慈悲な巨大魔王サマの誕生……素晴らしいわ!
 でも、まだまだ人間どもはたくさん残ってるわ。
 どんどん踏みつぶして、絶滅させましょ!」

 迷いが消えたオレは、この巨体の扱いにもすっかり慣れてきた。
のろのろと逃げる人間どもに圧倒的な歩幅で追いつき、足を振り上げて、踏み下ろす。
難しいことなど何もない。
アスカゾーラも蹂躙劇に加わって、街は4本の巨大な足が間断なく襲いかかる凄惨な修羅場と化した。


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「ふふふ、じゃあ最後のレッスンね!
 大魔王サマ、あのビルを破壊してください。 人間どもの巣窟ですわ!」

 アスカさんが指差した先は、この街で一番高い複合ビルだった。
下が商業施設で上がオフィスやホテルになっている40階建てのツインタワーは、今のオレたちとほぼ同じ高さがある。
街がほぼ破壊し尽くされた中で無傷で残っていた、いや「残してあった」メインディッシュだった。
オレはもう道路など関係なく、中小ビルやその瓦礫をザクザクと踏みつぶしながら、アスカさんと一緒にターゲットに向かって進む。
よく知っている街の距離感が100分の1になり、自転車や徒歩で数分だった道のりがたったの数秒、数歩に変わっていた。
この圧倒的な変化からも、オレは巨人になった実感を掴んでいた。

 タワービルに相対すると、オレは両手を腰に当て、魔王らしく悠然と獲物を上から下まで眺め回してやった。
ガラス張りの最上階には、アスカさんと一度だけ来たことのある展望レストランがある。
あそこからの街を一望する夜景は実に素晴らしかった。
しかし今、あのときよりも一段高い視点から街を見渡すオレの目に映っていたのは、変わり果てた街の姿だった。
美しく活気があった街は徹底的に破壊し尽くされ、灰燼に帰していたのだった。

 両手を鷲掴みの形にして、黒く尖った魔王のツメでビルに襲いかかった。
重機よりも遥かに巨大で強力なものになったオレの指は軽々と外壁を突き破り、ビルの奥深くまでを手の中で握りつぶして破壊した。
人差し指を横に滑らせて、人間だったときの想い出を断ち切るかのようにレストランも破壊した。
テーブルや椅子が木屑となって遥か下方へ舞い散るように落下していく。
さらに乱暴に腕を突っ込んでビルの中を掻き回し、そのまま貫通させてやる。
巨大な拳で殴りつけて数フロアを一気に粉砕する。
時折、オレの指や腕が人間を跳ね飛ばしたり押しつぶしたりする感触もあったが、もはやそれは快感でしかなかった。

 しかし、まだまだオレは魔王として経験不足であった。
手の届きやすい中高層階ばかりを破壊したために、支え切れなくなった上部が先に崩れ落ちてしまったのだ。
崩落が止まって中途半端に残ったビルの姿は、どうみても魔王の破壊劇としては美しさに欠けていた。
アスカさんのように大胆に破壊するのが正しかったのに、オレはチマチマし過ぎていたのだ。

 失敗に少し苛立って低層階に爪先を蹴り込むと、残ったビルの全体がグラリと傾いた。
それでもしぶとく倒れなかったので膝蹴りを加えると、ようやくビル全体が砕け散りながら倒壊してくれた。
とてつもない轟音とともに物凄い土煙が巻き起こった。
しかし、それはミストのような感じで全く埃っぽさはなかった。
これもアスカさんの周到な準備の賜なのだった。

「ちょっと苦戦したみたいだけど、最初にしては良い方よ。
 じゃ、最後はふたりでこっちを破壊しない?」

 残ったツインタワーの片方にも死刑宣告が下った。
アスカさんはビルの反対側に回り込み、ビルを挟んでオレと向かい合った。
2人の巨人に包囲された、この街で最後のまともな建造物。
アスカさんは大きく両腕を広げ、全身でビルにもたれかかるようにしてオレの胸に飛び込んできた!

「裕也クン! 来て!」

 オレもアスカさんを抱き止めようとしつつ、ビルに向かってなだれ込む。
ふたりの巨体で、タワービルを一気に抱きつぶしてやるのだ!
破壊の最前線となっていたアスカさんの山のような巨乳が、オレの硬い胸板にぶつかった。
ふたりはそのまま腰を押し付け合い、脚も絡ませて、全身でビルを破壊した。
アスカさんとオレが抱き合うのと同時に、ビルは膨大な瓦礫を降り注がせながら完全に崩壊した。

「ふふふ、いっぱい壊しちゃった♪」

 アスカさんはそう言いながら、オレのことをギュッと抱きしめる。
オレもアスカさんをしっかりと抱きしめた。
オレたちの間に挟まっていた瓦礫を、さらに細かく擂りつぶしながら……


                                                            *


 さっきまで恐ろしい大巨人だったアスカさんが、今はオレの腕の中にいる。
山のようだったおっぱいが、オレの胸に当たっている。
塔のようだった脚が、オレの脚に絡みついている。
不思議な感じだった。

 ふたりは燃え盛る火の海の中に立ち、アスカさんは炎に照らされて輝いて見えた。
しかし、紅蓮の炎にも全く熱さは感じられず、ほの暖かなミストのようであった。

(アスカさん、なんて綺麗なんだ……)

 オレはアスカさんと唇を重ねた。
最初は軽いキスだったが、興奮したふたりはどんどん大胆になっていった。
ちゅっちゅという音が次第次第に大きくなっていき、死の街に不気味に響き渡っていく。
さらに、アスカさんは舌を差し入れてきた。
人間から見れば、今のオレたちは舌でさえも巨大な怪物。
巨大な口内を二体の怪物が暴れ回り、膨大な量の唾液を交換しあっていた。

 オレのペニスは、ローライズのボクサーパンツからはみ出しそうなほど勃起してしまっていた。
アスカさんはディープキスをしていた唇を離すと、悪戯っぽく耳元に囁いてきた。

「ふふふ、裕也クンのココ……熱くなってるよ♪」

 滑らかなグローブに包まれたアスカさんの指が、オレの股間に優しく触れながら撫で上げる。
野獣の本性を剥き出しにしたオレの股間の怪物は、ビキビキと蠢いて悦びを表現した。
アスカさんはしなやかに指を往復させて巨大な怪物を更にいきり立たせてから、ボクサーパンツに手を掛けてゆっくりと引き下ろした。

 ぼるんっっっ!!

 15メートルもの巨龍が、その姿を現した。
既に最大硬度に達していたモンスターは、天に向かってそそり立ちながら涎を垂らしていた。

「うふふっ、裕也クンのおちんちん怪獣、こんなに大きくなっちゃって……
 でも、このアスカゾーラ様から見ればやっぱりカワイイかな♪」

 指先で、赤黒く怒張した亀頭をツンツンと刺激する。

「くはッ……ちょ、やめてくださいよ……」

 アスカさんは、いつの間にか手に観光バスのようなものを掴んでいた。
一旦オレの目の前にそれを見せてから、ペニスと並べて大きさを比べるようにして、また耳元で囁いた。

「……分かる? 今の裕也クンのおちんちん、バスよりもおっきいんだよ?」

 そう言いながら、二本の指でつまんだバスをオレのペニスの上で走らせた。
まるで、子供がミニカーを動かすように。
カリの段差を乗り越えて、亀頭を刺激する。
尿道口に前輪が嵌り込みそうになる。
陰毛の叢に後部を突っ込ませる。
裏筋を這っていく間、バスのタイヤから伝わってくる微妙な感触がくすぐったくてたまらない。
しかし、乱暴なアスカ運転手に扱われたバスはすぐに車軸が折れて、走れなくなってしまった。

「あらあら? 弱っちいわねぇ。
 えい、ちびちび車は怪獣おちんちんでスクラップにしてやる?」

アスカさんはオレの前にひざまづくと、バスを横にしてそそり立つ剛直の根元に挟み込んだ。
バスはオレの陰毛の中に半分埋もれるように包まれてしまった。
鋼鉄よりも硬いオレの巨大ペニスは、15トンもの重量を支えても微動だにしなかった。
アスカさんは顔を近づけて楽しそうにその様子を覗き込んでいたが、
バスを支えながら指先でペニスの先端を少し押し下げ、カウントダウンを始めた。

「うふふ、3・2・1・ゼロ♪」

アスカさんはパッと指を離した。
ビンッと跳ね上がったオレのペニスは、一瞬でバスの真ん中をグシャッとひしゃげさせた!
その後も、揺れるたびにメキメキとつぶしていく。
バスは千切れこそしなかったものの、への字型に大きく折れ曲がってペニスに引っかかっていた。
オレは、勃起圧のみでバスを押しつぶしてしまったのだ。

「裕也クンも分かってくれたかな?
 圧倒的な力で、思い通りに世界を支配する快感を……」
この世界は、アスカさんの思い通りに動いている。
そして、オレもすっかり巨人であることの虜にされようとしていた。


                                                            *


「じゃあ、頑張ってくれた裕也クンに、ごほうびしてあげる♪」
アスカさんはすべすべのグローブに包まれた巨大な指をペニスに絡ませ、ゆっくりとしごき始めた。
最初の数往復で、つぶれたバスが滑り落ちていった。

「アスカさん……うああっ、あっ! 気持ち良すぎますぅっ!」
アスカさんは上目遣いでオレをチラッと見ると、高飛車な「アスカゾーラモード」でオレを挑発した。
「あらあら、もうイキたくなってしまわれたのですか?
 だめですわ、魔王様でしたらこのぐらいガマンして頂きませんと」

 ペニスを擦り上げるアスカさんの手の動きはどんどん速くなっていった。
しかし、オレは魔王の威厳にかけて(?)、襲い掛かってくる快感の波に耐えようとしていた。
「ねぇ、今おちんちんから精液が出たら、どうなっちゃうと思う?」
アスカさんはそう言いながら、空いている方の手のひらをオレに見せてきた。
小さ過ぎて良く見えないが、今度はどうも数十人の人間が乗っているようだった。

「このコたちね、みんな女子高生だよ。一クラスぶんの。」
「……!!」
「このまま裕也クンが我慢できずに、しゃせー、しちゃったら……」

 そう言いながら、アスカさんはペニスをしごくスピードを一気にアップさせた。
同時に女子高生たちを乗せた手をリフトアップさせ、ズゴゴゴゴ……と凄まじい勢いで巨大なペニスが擦り上げられていく光景を彼女たちの眼前に突きつける。
巨龍の口は完全に彼女たちに向けられていた。
女巨人の指が男巨人のペニスを一往復するごとに、彼女たちが乗せられている手のひらもグラグラと揺れ動いた。
地上数十メートルの高さ。
落ちれば命は無い。
彼女たちはアスカさんの手のひらの真ん中で肩を寄せ合うしかないのであった。

 このとき既に、オレの心は完全に大魔王モードになっていた。
女子高生たちにペニスを見られていても、全く恥ずかしさは感じなかった。
むしろ、その巨大さを見せつけてやりたい気分だった。
彼女たちを哀れむ気持ちは欠片もなく、むしろ射精におびえる時間をできるだけ伸ばしてやりたかった。
だからペニスに力を込め、射精を我慢する。
(まだ……まだだ……もっと恐れおののくのだ……)
しかし、ついにペニスの痺れるような感覚を抑えきれなくなり、オレは押し寄せる快感に身を任せるようにして、射精した!

 ブプ……ドブァァァッ!!
 ドブッ……ドブッ……ドビュル、ドビュルルル!!

 アスカさんの黒と紫のグローブが、激しくほとばしる白濁液で汚されていく。
射精の直撃を受けた女子高生たちが吹っ飛び、悲鳴を上げながらアスカさんの手のひらの上を転がった。
逃げ場の無い手のひらの上で、彼女たちは次々と大魔王の精液に蹂躙されていった。

 しかし、いつも以上の射精の快感の中で、オレは異変に気付いた。
(と……止まらない!?)
とっくに普段の射精量を超えているのに、一向に止まる気配がないのだ!
精液を噴出するたびにオレの股間の筋肉はますます収縮力を高め、次なる一撃をより激しく射出するのだった。
(い、いくらでも出るぞ!)
オレは面白くなって、射精で吹っ飛ばされて手のひらから落ちそうになっている女子高生を狙って、執拗にブッ掛け続けた。
這い上がろうとするのに2〜3回撃ち込めば、ついに彼女は長い悲鳴を上げながら糸を引く精液と一緒に墜ちていく。
そんな殺人射精が20回、30回、いや、もっとだろうか?
オレはアスカさんの手のひらを精液でいっぱいにし、半分ぐらいの女子高生を墜落させたところで、ようやく果てた。


                                                            *


「ふふふ、魔王サマ、たくさん出しましたね……」
「ハァハァ……アスカさん、これ……何かしたでしょ?」
アスカさんは答えなかったけど、今のオレは答えを知っている。
エロゲの主人公のような大量射精ができるように、アスカさんがこっそりデザイアの設定を変えていたのだ。
墜落を免れた女子高生たちは、腰や肩まで精液に浸かりながら必死にもがいていた。

「あーあ、魔王サマがガマンできずにイッちゃったから、
 人間の女の子が、みんなせーえきまみれになっちゃいましたよ?」
「ア、アスカさんが気持ち良くしたから……」

アスカさんはそれには答えず、じっと女子高生たちを見つめていたが……

「ふふふ、見ていてください、そろそろ効いてくる頃ですわ」
「え? ……効いてくるって?」
「ご覧ください。大魔王サマの精液の素晴らしい力を!」

立ち上がったアスカさんが、手のひらの精液をオレに見せた。

「……!!」

なんと、ただでさえ小さかった女子高生たちが、心なしかもっと小さく……いや、明らかに縮み始めていた!
見る見るうちに彼女たちはどんどん縮んで……ついには、ほとんど見えなくなってしまった!

「精液に込められた魔力が、人間どもをさらに縮小してしまったのですわ」

 いまや、精液の「湖面」から辛うじて出ているゴミのような点の一つ一つが、女子高生の頭なのだ。
周囲に比較物の無い彼女たちから見れば、自分が縮小されたというよりも、むしろ逆に巨人たちがさらに巨大化したように感じられるのかも知れない。
大量とはいえ一応は背が立つほどだった精液は、みるみるうちに底無し沼になり、池になり、ついには湖のように広がってしまった。
重い粘液の湖水の中には、頭の膨らんだ白いウナギのような精子が無数に蠢いて……彼女たちに群がっていたのだ!

 精液湖の岸辺からは、さっきよりも遥かに巨大になったアスカさんのグローブに包まれた指が、五本の黒い巨塔となってそそり立つ。
上空には、そんな超巨大な指よりも更に二回りも太くて長く、この白い湖水と何十億もの怪物精子の全てを吐き出したオレのペニスが、威容を誇っていた。
しかし、それらだってオレたちの身体のほんの一部でしかないのだった。
せせら笑って聳え立つオレとアスカさんの全身は、縮小女子高生たちから見れば、もはや霞んで見えるほどの巨大さであろう。
精子たちに犯され、絶望しながら湖に沈んでいく彼女たち。
だが、オレは全く可哀想だとは考えなかった。
むしろ下等生物に相応しい末路を与えてやったことに興奮し、オレは再びペニスの鎌首をもたげさせたのだった。

「見えなくなっちゃったね。
 じゃあ、このコたちとはもうサヨナラしましょ。
 ふふ、裕也クンのパワーが込められたせーえき、おいしそう……」

 アスカさんはそういうと、手のひらを傾けて大量の精液を飲み始めた。
オレに音を聞かせるかのように、わざとゴクリゴクリと喉を鳴らしながら……
女子高生だった黒い点々も、濁流と一緒に次々とアスカさんの口内に消えていった。
「……!!」
こうして、アスカさんは極小サイズの女子高生たちごと、手のひらいっぱいの精液を飲み干してしまった。
グローブに付着した精液まで綺麗に舐めとりながら、まだ不足だと言わんばかりにオレを上目遣いに見上げてくる顔は、淫乱な女魔王そのものだった。

「裕也クンの怪獣おちんちん、またこんなに……」

アスカさんは、再び禍々しく復活したオレの巨龍にキスをして、先っぽから徐々に咥え込んでいった。
オレのペニスとアスカさんの舌という、2体の怪物が激しい格闘を繰り広げていった。
実はこのとき、アスカさんの口内には精液と一緒に飲み込まれず、取り残された極小女子高生が数人残っていたのだ。
しかし、彼女たちは途方もなく巨大なオレのペニスに突きつぶされたり、アスカさんの舌に押しつぶされたりして、次々と消えていった。
100倍に巨大化したオレたちと100分の1に縮小された彼女たちとのサイズ差は、実に1万倍。
オレのペニスもアスカさんの舌も、彼女たちから見れば1キロメートル超という、もはや想像すらできない超巨大サイズになっていたのだ。

 指を遥かに凌駕する快感を与えるアスカさんの舌には、長時間抵抗し続けることは不可能であった。
オレはあっと言う間に登り詰めてしまい、2度目の大量射精を始めた。
「くああっ…!!」
 今度はアスカさんの口の中に、精液をぶちまける。
どぷっ…どぷっ…どびゅるるるる!!

 アスカさんは、この精液もごくごくと飲み干していく。
口の端から零れた一滴も指で拭い取り、残さず舐めとることも忘れずに……
そして、口内で唾液に翻弄されながらも残っていた最後の極小女子高生たちにも、精液の縮小力が効き始めていた。
微生物以下の存在に堕ちていく彼女たちが最期に見たのは、巨大な怪物へと変貌していく精子だった。
精子の尻尾で跳ね飛ばされ、もはや海のようになった精液に押し流され、アスカさんの喉の奥へ今度こそ一匹残らず送られていったのだ。


                                                            *


 アスカさんは文字通り満腹といった感じで、うっとりした目でひざまづいたままオレの顔を見上げた。

「嬉しいな♪ 裕也クンがここまでノリノリになってくれて。
 ね? これからも、ずーっと巨大化えっち、してくれるんだよね?」
「はぁ……はぁ……オレ、何だかもうすっかりハマっちゃいました。
 これ、ホント、凄いですよ。アスカさんが病み付きになったの、よく分かります」
「わーい、やったー!
 じゃ、まだ一つだけ内緒にしてた事があるんだけど、それも教えちゃうね」
「え……?」

アスカさんが立ち上がった。
「最初からコレを見せたら、さすがに刺激が強すぎるかなって思って、やめてたんだ。
 でも、もう今の裕也クンならもう大丈夫だと思うから……」
「な、なんですか、アスカさん?」
アスカさんが満足そうにお腹をさする。
「うふふふ、これだけあれば。……ああっ、来そう! 裕也クンの精液の魔力!」
忘れていた!
アスカさんはオレの精液を大量に飲んでしまっていたのだ!
「わわっ、そうだった! ヤバい、アスカさんが小さくなっちゃう!」
「違うわ……今の裕也クンと私は魔族だから、陰と陰の力で『効果は逆』なの。
 あっ……ダメ! 今は説明している時間がない!
 ふふ、でも見ればすぐに分かるわ! アスカゾーラ様の真の力をねッ!」

グオオオオオオオオオッッ!!!

 アスカさんの身体がドンッと膨らみ、見る見るうちに、またどんどん巨大化し始めた!
オレの精液の力が人間の場合とは逆方向に働いて、しかもあんなに大量だったから、暴走しているのだった!
アスカさんはオレを置きざりにして、何処までも超巨大になっていった!


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 再巨大化を完了したアスカさんは、最初にオレが見た姿より遥かに巨大に見えていた。
オレだって100倍の巨人なのだから、つまり今のアスカさんは100倍の、さらに数百倍の超大巨人なのだ。
大気圏を突き抜けて聳え立つ姿は、オレですら、アスカさんのブーツが壁のようにそそり立っているのを見上げるほどだった。
もはや魔王などという存在は遥かに超越した、美しき魔性の超巨大女神であった。

 破壊の女神になったアスカさんは、遥かな遥かな高みから衝撃波そのものの声を降り注がせる。
オレですら耳を塞ぐほどの音量が、見渡す限りの街を崩壊させていく。

「ふははははは、滅びよ! 人間ども!」

超・超・超巨大なブーツを持ち上げ、大空を黒い靴底で覆い尽くす。
まだ生き残っている人間がいれば、地平線の果てから果てまでを押しつぶす、黒い空が落ちてくる「最後の日」を目撃することになるだろう。
アスカさんは容赦なく、数千万の人々が住むこの首都圏をまるごと、彼方の山々から海の向こうまで一気に踏みつぶした。
オレもその例外ではなく……


                                                            *


「裕也! ……裕也ったら!」
「……ん? わわっ!?」
「もう何してるの? ねぇ、始めるよ?」
オレは現実に引き戻された。
いや、真の現実ではなく仮想現実の世界に、だが。
どうやら長い長いロード時間が終わったようだ。

「うふふふ、楽しみ楽しみー。裕也と3時間かけて、ゆっくりたっぷり世界を滅ぼしちゃうんだ〜♪」
 それに今日って、世界の終わりを迎えるにはすっごくナイスタイミングの日なのよね♪」
「え、今日って金曜……あ、9月13日! 13日の金曜日だった!」
「そういうこと♪ じゃ、こないだ言った通りのストーリーでね!」
「OK!」

 オレはひとり、暗闇に包まれた世界に立っていた。
もはや馴染みになった大魔王のコスチュームに包まれた、自分のカラダを見る。
普段よりも逞しく筋肉の発達した肉体。
全身にみなぎる魔力が感じられ、強くなった自分が分かる。

 ここは、魔界中心部にあるアスカさんとオレだけの居城。
この玉座の間から、空間をねじ曲げて人間界への入口を開くのだ。
何度も滅ぼしてきた世界だが、今日は新しい趣向を加え、改めて人間どもの世界を破壊し尽くしてやる。
魔符を呟き、空中に強引にツメを立てるようにすると、空間に裂け目が生まれて明るい光が射し込んできた。
オレは強引にそれを押し広げ、世界を終わらせるための第一歩を踏み出す。



【第一話  -下- 終】

<つづく>

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